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成果が上がるチームの作り方

第4回 メンバーのモチベーションをあげる条件 井上オフィス代表 井上 健一郎

2012/5/28

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生産性の高いチームを作るために、ベースとして大切なことは、チームを活性化することだということを前回までにお話ししましたが、そのためにはまずコミュニケーションを良くすることについて解説しました。今回は、活性化のためのもうひとつの重要なポイントである「メンバーのモチベーションアップ」ということについて話を進めます。

モチベーション=「やる気」の阻害要因を知る

みなさんは、やらされ感でなく、本当の意味で一所懸命に働くことができていますか?

私は、いろいろな場所でこの質問をしてみましたが、その結果「はい」と答えた人たちにある共通性があることが分かりました。それは、ほとんどの人が「仕事が面白い」と感じているということです。ここから、仕事を面白いと感じられるかどうかということが、「やる気」を決めるひとつの大きな要素だということが分かります。

しかし、残念なことに「仕事が面白い」と感じている人でも一所懸命働こうという意欲を失っている人がいることも分かりました。そういう人たちは、反対に「やる気」を失う要因を抱えていたのです。

以前、雑誌「日経ビジネス」の特集「こんな会社で働きたい」(2005年11月7日号)に次のようなアンケート結果が掲載されていました。20代から30代の男女有職者に実施したアンケートで「やる気を阻害する要因」を聞いたものです。

やる気を阻害する要因

この結果を見て感じるのは、「上司の存在」がいかに大きいかということです。上司がどんな人か、部下とどのように接しているかということが、部下の「やる気」にかなりの影響を与えるということが分かります。

そして、その上司の部下への接し方の結果、現状の自分があまり認められていないと感じる、さらには自分の将来が開けていないと感じるために「やる気」が低下していると推察できます。

一方で上司の方にも言い分があるでしょう。認められていないと感じられても、「仕事の成果が低いんだから、評価が低いのはしょうがないだろう」と思っているかもしれませんし、将来が開けていないと言われても、「実際、今任せている仕事しかできないんだから、しょうがないだろう」と言いたいところだと思います。まず部下本人が「やる気」を示してくれないと、良い評価もできないし、期待は持てないというところが本音に違いありません。

メンバー全員の個性を大切にする

「やる気」を示すから認められるのか、認められるから「やる気」が起きるのか、それこそ鶏と卵の話になってしまいますが、リーダーがまず意識しなければいけないことは、メンバーひとりひとりが「自分の存在感」を感じられるようにしてあげることです。

それは、決して評価制度の中で全員を「S、A、B、C、D評価」のA評価以上にするというようなことではありません。たとえBやC評価でも存在価値がゼロということはないわけですから、まずその存在価値を示すことが大事だということなのです。

営業成績が目標どおりに上げられなかったのでC評価にせざるを得ない場合でも、必ず目標に向かって一生懸命取り組んだことがあったはずです。そこをまず認めてあげることが大事だということです。このあたりは、「コミュニケーションの基本原則」にあった「自分のことを分かってくれる人に、心を開く」ということと共通するところです。

「やる気」を阻害する最大の要因は、「存在を否定」されたと感じさせることです。

そう感じさせないために、リーダーが覚えておかなければいけないことは、全員個性が違うという至極当たり前のことです。当たり前のことなのですが、実際には意識されていないことが多いのです。成果主義という評価制度により、成果結果というひとつの尺度で全員を比較することが常態化していると、なおさらメンバーひとりひとりの個性を大切にする意識が薄くなる危険性があることをリーダーは認識していなければいけません。

メンバーそれぞれの個性、「強み」を生かしてあげることが「やる気」を引き出し、高い成果を生み出すために大切なのです。

まず、メンバーの強みを見つけ、それを認めてあげることから始めなくてはいけません。そうでなければ、「やる気」は阻害されるのです。

「やる気」のためのポジティビティを知る

まず、メンバーの存在価値を認めてあげることが、「やる気」のためにリーダーが行う第一歩、そして次にメンバーの「強み、弱み」を理解してあげて、できるだけ強みを生かすように指導・育成してあげることが大事だと述べました。

実は、その前にリーダーのみなさんに覚えておいてほしいことがありますので、それについて触れます。それは、ポジティビティに関することです。ポジティブな心理がなければ「やる気」は起きませんから、ポジティビティについて知っておくことは大変重要です。

ポジティビティについて研究しているのがポジティブ心理学です。ノースカロライナ大学のバーバラ・フレドリクソン教授は著書「ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則」で、ポジティビティの種類を「喜び」「感謝」「興味」「希望」などの10種類で表しています。

10種類ある中でリーダーがメンバーのために意識してあげたいポジティビティは主に次の3つです。

・興味(Interest)

・希望(Hope)

・誇り(Pride)

前述した「メンバーの存在を認める」ということも、「誇り(Pride)」につながることですし、強みを生かして育成することは「興味(Interest)」や「希望(Hope)」につながるものなのです。

バーバラ・フレドリクソン教授は著書でポジティビティを増やすため方法について述べています。その中で私がリーダーに望むという観点で言えば、

・強みを生かす

・将来を夢見る

・絆を作る

という方法に取り組んでほしいと考えています。

チームに大事なのは絆を作ること

特に、チームで成果を挙げる上で大事なのが、絆を作るということです。

絆を作るために大事な行為が次の3つです。

・相手を尊重する

・相手を支援する

・相手を信頼する

チームビルディングには欠かせないものですから、強く意識してほしいところです。

以上のようにして、メンバーが「自分の存在意義」を感じ、「将来への展望」を見ることができれば、仕事への興味関心は深まり、「仕事が面白い」と言えるようになるのです。そのための、リーダーとメンバーの間の絆、信頼関係作りの大切さを是非理解してください。

そして、メンバーひとりひとりの個性「強み、弱み」を把握することが極めて重要であることも理解してほしいです。「強み、弱み」の把握方法については、次回触れていきます。

◇   ◇   ◇

井上健一郎(いのうえ・けんいちろう)
井上オフィス代表。人材開発・組織構築コンサルタント。中小企業診断士。日本経営教育研究所顧問。概念化能力開発研究所上席研究員。
慶応義塾大学卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントで制作、営業、プロモーションを経験。責任者としても数多くのプロダクツを手がける。その経験を生かし、現在、企業の組織構築を人材の側面から支援している。特に、「人材アセスメント」による人材の能力分析と、その結果を活用した組織構築、人材能力開発には定評がある。また、人材育成型の評価制度「LADDERS」を開発。評価制度の導入と運用の支援を行っており、導入実績企業は5年で100社に及ぶ。最近では、リーダーの育成に関する企業からの要請が増え、教育・研修という面で幅広く活躍している。著書に『部下を育てる「ものの言い方」』(集英社)がある。
ホームページ http://www.i-noueoffice.com/

[この記事はBizCOLLEGEのコンテンツを転載、2012年5月28日の日経Bizアカデミーに掲載したものです]

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