マネー研究所

REIT投資の勘所

海外投資に乗り出したイオンリートの説明不足

日経マネー

2016/6/3

 異次元金融緩和で息を吹き返したREIT(不動産投資信託)。旺盛な物件取得や新規上場など関連の話題も多い。これからの投資のチャンスはどこにあるのか、不動産証券化コンサルティングを手掛けるアイビー総研代表の関大介氏が解説する。24回目は、国内のREITが海外物件の取得を進める動きと課題について見ていこう。

 2016年4月28日、日銀が金融緩和の強化を見送ったことで日本株は大幅下落となったが、REIT価格はしっかりと推移している。為替の影響を強く受ける株式とは異なり、REITはマイナス金利拡大の恩恵が先送りになったことが、むしろ好感された格好だ。

 ただ、為替の影響を受けないというREITの特徴は、今後、少しずつ変わって行くことになるかもしれない。イオンリート投資法人(ARI)は16年4月25日、マレーシアで商業施設を取得するため、約2億4000万RM(マレーシアリンギ、約67億円)を特別目的会社(SPC)へ投資すると発表した。

注:投資口価格などは2016年5月11日時点

 ARIは既に同国に商業施設を1件保有している。取得額は2000万RM(取得時の為替レートで約6億5800万円)で、ARIの保有物件全体の取得額約2500億円からすれば、その割合は微々たるものだ。今般取得した2件目の海外物件を合わせても、ポートフォリオに占める海外不動産比率は3%弱で、為替の影響はわずかと言っていいだろう。ただ、67億円という取得額は決して小さくない。今回のARIの海外物件取得は、国内REITによる本格的な海外進出の嚆矢(こうし)となるかもしれない。

■為替リスクの見返りは?

 ARIが取得した不動産の税引き前収益は1300万RM。分配金に寄与する税引き後収益は900万RM程度とみられる。取得額に対する利回りは約4.2%で、取得時点の保有物件全体の利回りである3.9%は上回っている。ARIでは、3年ごとに現地の消費者物価指数(CPI)に合わせて賃料を調整する契約になっており、将来、収益上昇が期待できること、為替リスクに関しては為替予約によるヘッジを検討していることなどを発表時に示している。ただ、投資家からすれば、為替リスクのない国内不動産に対して0.3%程度のアドバンテージしか期待できない海外不動産を取得する理由としては少し説明不足だ。

 例えば国際通貨基金(IMF)は、マレーシアのCPIについて2016年4月時点の116.34から21年には134.72まで上昇するという見通しを示している。IMFの予測が正しければ、当該物件は十分に収益アップが期待できる物件と見なせる。

 東京証券取引所は4月26日に「投資家・市場関係者にとって望ましいREITの情報発信事項について」という文書を発表した。取りまとめに際して筆者も有識者の一人として参加したが、議論の席でも運用側の見通しをより明確に示すべきだという意見が目立った。

 ARIも本格的な海外不動産投資に当たり、為替動向やCPIの変動など複数のシナリオを想定し、為替リスクを負うことに対するメリットを、投資家に対してより具体的に示す必要があるだろう。

関大介(せき・だいすけ)
 不動産証券化コンサルティングおよび情報提供を手掛けるアイビー総研代表。REIT情報に特化した「JAPAN-REIT.COM」(http://www.japan-reit.com/)を運営する。

[日経マネー2016年7月号の記事を再構成]

日経マネー 2016年7月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


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