長期投資の王道「コツコツ積み立て」の死角QUICK資産運用研究所 高瀬浩

「コツコツ投資」と呼ばれる投資信託の積み立て投資が若い世代にじわり浸透しつつある。毎月の給与の一部などを元手にして、少額投資を継続し投資額を積み上げていく利便性の高い投資手法だが、市場の変調によって大幅損を被るという思わぬ死角もある。その特性を押さえたうえで、長期投資に活用したい。

一括投資に比べ下振れリスク縮小

ドルコスト平均法や時間分散という別名を持つ積み立て投資は、確定拠出年金(DC)制度での基本的な投資手法でもある。投信は金額指定で売買できるので積み立て投資を行いやすい。

積み立て投資では、投資タイミングの判断抜きに機械的に毎月決まった日に一定額の投信を買い付け、安値では多くの口数、高値では少ない口数を購入する。この結果、累計投資金額を保有口数合計で割った平均購入単価は、投信の基準価格に比べて緩やかに変動する。

積み立て投資のリターンは投信の保有時価を累計投資金額で割って求めるが、これは現在の基準価格を平均購入単価で割った値と一致する。基準価格が平均購入単価を上抜くと含み益となるが、逆に割り込むと含み損の状態に陥る。

積み立て投資のリスクとリターンの特性を理解するために、まとまった資金を一度に投じる一括投資と比較してみよう。投資期間は少額投資非課税制度(NISA)の非課税期間に合わせ5年とし、投資対象は日本株市場を代表する指数の日経平均株価とした。

今年4月までの過去40年間で、日経平均(月末終値)について5年間の積み立て投資を行った場合と一括投資した場合のリターンを計測。各月末までの5年リターンをグラフで比較した(グラフA)。

一見して分かるように、積み立て投資のリターンはプラス側(利益)、マイナス側(損失)ともに一括投資に比べ縮小傾向にある。特にプラス・リターンについては1990年以前のバブル期や2013年以降のアベノミクス相場で急伸した一括投資に対し、積み立て投資の負けが目立つ。上げ相場では積み立て投資のリターンは一括投資には勝てない。

このように積み立て投資の大きな特性は一括投資に比べ、傾向的にリターンとリスク(リターンの上下の振れ幅)の双方が縮小するという点だ。また、平均購入単価が緩やかに変動するので、一括投資のように「いつ投資したか」という投資タイミングに損益が左右されにくい特性も併せ持つ。

金融危機時には大損も

ただし、リスク縮小といっても元本割れリスクが消えるわけではなく、大幅な下落も記録している。08年9月の金融危機(リーマン・ショック)を挟む5年間だ。

グラフでこの間の日経平均と平均購入単価の動きを詳しく見てみよう。04年2月末から09年2月末の5年間に、日経平均の積み立て投資を行った場合の日経平均と平均購入単価の値動きの推移を比較(グラフB1)。日経平均がつるべ落としの急落をしても、平均購入単価は高止まったままなので、積み立て投資リターンはマイナス42%となり、一括リターンのマイナス31%を超える大幅な含み損を抱えた。

「100年に1度」と形容された、めったに起こりそうにない最悪の事態とはいえ、ダメージは大きい。こんな市場の急変に出くわすと、このまま積み立て投資を継続するか、資産売却はせず新たな積立資金の拠出は休止、それとも損切りするか、資産運用計画の岐路に立たされる。

この時、株式市場の回復を期待して積み立て投資を継続した時や、資産売却しなかった場合は救われた。このまま積み立て投資を5年延長し、14年2月末まで継続した計10年の積み立てリターンは29%とプラスに転じている。同じ期間の10年一括リターンは34%だ。

一方、同じ金融危機を挟み、含み損から一気に含み益に転じたケースもある(グラフB2、投資期間は08年2月末~13年2月末)。日経平均の急落で平均購入単価が低位で推移し含み損が長い間続いた後、13年に入り日経平均が平均購入単価を一気に上抜き、積み立てリターンは18%に。積み立て投資の醍醐味ともいえ、この時の一括リターンはマイナス15%だった。

有利・不利を判定する公式

積み立て投資のリターンが一括投資を上回ったか下回ったか、有利・不利を簡単に見分ける公式がある。

グラフB1のように、「現在の平均購入単価が積み立て開始時の基準価格を上回っていると不利」。反対にグラフB2のように、「現在の平均購入単価が積み立て開始時を下回っていると有利」という公式だ。この有利・不利の判定条件は一括投資リターンの大きさやプラスかマイナスかは一切関係しない。

もっとも、有利になるか不利になるかは積み立て開始前には予見できない。結局、値下がり時に買い集めて平均購入単価を低く抑え、将来の値上がりを期待するしかない。基準価格がアルファベットの「U」「V」や「W」のような値動きをとった場合が積み立て投資を有利にする理想形となる。

それでは日経平均ではなく、実際のファンドの5年積み立てリターンをランキングし、現時点(投資期間は11年4月末から16年4月末)での高成績ファンドを確認しておこう。

全ファンド(残高10億円以上)を対象にしたランキング上位10本だ(表C)。8位の中国株ファンド以外はすべて日本株、それも大半が中小型株で運用するファンドだ。

上位10本のリターンは5年でほぼ2倍以上と高成績。一括投資リターンには大きく及ばないが、配当込み日経平均の5年積み立てリターン(38.7%)を優に上回った。10年積み立てリターンの場合は一括投資を大幅超過し、いずれも100%を超えている。

分配金のない投信の選択が適当

ただ、表中には分配金を多く出した投信もある。分配金は再投資するにしてもいったん課税される。NISAだと分配金も非課税だが、再投資するたびに新たな投資枠を消化する。複利効果を犠牲にしてでも分配金の現金受け取りを優先するということでなければ、なるべく分配していない投信の選択が適当だ。

表Cには運用者が独自の銘柄選別をするアクティブ運用型の投信が並んだが、高成績が今後も継続される保証はない。国内中小型株投信が好調を維持できるかどうかも不確定だ。好調資産と不振資産は突如として入れ替わるため、積み立て投資でも様々な資産に国際分散投資するのが有効だ。

自分にぴったりな投信の組み合わせにたどりつくには試行錯誤の必要もある。ファンド選びに悩むようなら、低コストで購入時に無手数料(ノーロード)のインデックスファンドを自分なりに組み合わせる、内外の株式、債券や不動産投資信託(REIT)などのインデックス運用を合成した既製のバランス型投信を選ぶ、のも一法だ。

まずは少額で積み立て投資の実践体験を始め、運用成績が不満だったら買い替えてもよいし、金額配分の変更はいつでも可能だ。ネット証券を中心に投信積み立ての人気ランキングをサイトで公開している販売会社もあり、投信選択の参考情報になるかもしれない。

近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし