羽田アクセス、3路線追加で東京の競争力向上首都圏鉄路、交通審答申から(1)

羽田空港と都心のアクセスが東京の国際競争力の課題となっている
羽田空港と都心のアクセスが東京の国際競争力の課題となっている

2030年ごろの首都圏の鉄道網のあり方を示す交通政策審議会(国土交通相の諮問機関)の答申がまとまった。2000年以来16年ぶりの答申は、東京を中心とする都市圏の国際競争力強化や成長性などの観点から、新線や延伸など24事業を盛り込んだ。オリンピック・パラリンピック東京大会を控え、首都圏の人の流れを変える可能性がある注目路線をピックアップし、経済効果や課題を検証する。

森ビル系のシンクタンク、森記念財団が毎年公表する世界の都市総合力ランキングで、東京はロンドン、ニューヨーク、パリに続く4位が定位置。トップ3に後れをとる理由の一つが、都心と空港を結ぶアクセスの不便さだ。

交通政策審議会(国土交通相の諮問機関)の答申は、その弱みの解消につながる3事業を掲げ、東京の国際競争力向上を目指す。ただ、各構想は競合もするため、どれを優先するかの判断が難しい。

東京駅から羽田空港までは現在、鉄道を利用すると30分程度かかる。東日本旅客鉄道(JR東日本)が計画する羽田空港アクセス線は、それを18分程度に短縮できるとの触れ込みだ。貨物用の線路を使い、羽田空港から東京駅、新宿、臨海部の3方向へ直通で行けるようにする。

工事費が概算で3200億円に達する大プロジェクトの3ルート全体の完成は、早くても2020年代半ばの見込み。20年五輪には間に合いそうもないが、りんかい線の東京テレポート駅につながる臨海部ルートについては五輪前の暫定開業を探る。

羽田空港と都心のアクセスが東京の国際競争力の課題となっている

今回の答申は羽田関連でさらに2つの路線を併記した。一つは東京急行電鉄蒲田駅と京急蒲田駅を結んで羽田空港に乗り入れる新空港線(蒲蒲線)。もう一つは都心の大深度地下に設ける新東京駅を経由して、京急本線泉岳寺駅と京成押上線押上駅を直結させ、羽田・成田両空港を鉄路でつなげる都心直結線だ。

蒲蒲線は東急線と相互直通運転する東京メトロ副都心線などを通じ、渋谷や池袋、埼玉方面から羽田空港に行きやすくなる効果が期待される。答申への記載に地元・大田区の松原忠義区長は「30年来の悲願がかなった」と目を輝かせる。経済効果の試算を公表するなどのPRも奏功した。

ただ、東京都は交通審の答申に先だって昨年7月に公表した「広域交通ネットワーク計画」で、蒲蒲線についてJRの羽田アクセス線との競合で「収支採算性の確保に課題がある」と指摘。整備の優先度を一段低い扱いとした。東急と京急の線路の幅が異なるという、技術的な課題も残る。

都心直結線もこれまで浮かんでは消えた構想。やはり都の分析ではJRの羽田アクセス線との比較で採算確保が壁になる。都心の大深度地下にトンネルや駅を設ける難工事も待ち受ける。事業主体も不透明だ。

交通審の答申は記載した事業に「優劣はない」とのスタンス。それでも、いざ事業化するとなれば、国・自治体・鉄道会社とも冷静な判断が求められる。近年の鉄道新線の多くが甘い需要見通しの結果、赤字を垂れ流している状況も考えれば、3路線すべての早期実現は難しそうだ。

[日本経済新聞朝刊2016年5月3日付]

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