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保険の新常識

外貨建て保険 わかりづらいデメリット 保険コンサルタント 後田亨

2016/5/25

この連載では一般のお客様との対話を通して「実は間違っている保険の常識」を考えます。今回は「外貨建て保険で貯蓄するメリット」を疑ってみます。相談に来られた独身女性Mさん(36)との会話です。

後田(以下U):「外貨建ての保険を検討中とのことですね」

Mさん(以下M):「『マイナス金利が話題になっているけど外貨は金利が高い』と代理店の人に勧められています。年3%の積み立て利率が最低保証されているのがいいと思っています」

U:「この低金利時代にすごいかも、と?」

M:「まあ、そうですね(笑)。ずばり、これは買いですか」

U:「ずばり、検討に値しないと思います」

M:「そうなんですか?」

U:「突っ込みどころ満載の商品だと思いますよ」

M:「え、本当ですか?」

U:「Mさんが提示された提案書を見てください。契約後1年で解約した場合の返戻率はいくらですか?」

M:「38%です」

U:「契約当初は代理店手数料などに回るお金の割合が多いからでしょうね。返戻率が100%を超えるのはいつからですか?」

M:「14年後です」

U:「マイナス金利うんぬんとおっしゃっていましたが、この保険はこの先13年間マイナスですよ。終身保険では一生涯の死亡保障に要する費用も発生します。つまり3%の積み立て利率といっても、積立に回るお金自体が少ないので積立金がなかなか増えない仕組みなんですよ」

M:「でも60歳になれば120%超の返戻率だから、やはり預金よりいいかと思います」

U:「たしかに、現状を見ると預貯金で120%超は見込めないですよね。とはいえ、為替リスクもあります。代理店の人は為替リスクについてどんな説明をしましたか?」

M:「『為替リスクはある。でも、日本の国力が下がっているから長期的には円安傾向になるのではないか。仮に円高になった場合は、海外旅行を楽しむといった選択肢もある』と言われました」

U:「そういう見解を述べる人もいますよね。でも不思議じゃないですか?」

M:「何がですか?」

U:「『外貨を持つメリット』が語られているだけだからです。為替手数料が割高なことから専門家の評価が低い『外貨預金』でも、円安になれば(円換算した)残高は増えます。数年で20%くらい増えることもあるでしょう。もちろん、円高の時は安く海外旅行ができます。外貨で運用したいなら、他に手段はいくつもあるわけです。それなのになぜ20年以上、いつ解約してもマイナスになる保険を利用する必要があるのか」

M:「そう言われると、困っちゃいますね(苦笑)」

U:「面白い事実があります。加入後1年で解約した場合の返戻率には、代理店に支払われる手数料の多寡が大きく影響します。だから30代の人が、ある保険会社の学資保険・個人年金保険・終身保険・外貨建て終身保険に加入するケースで比較すると、今、並べた順に返戻率が低くなっているんです」

M:「そうなんですか……」

U:「2点、気づきがあると思います。一つは、『子どもの進学時』よりも『老後』のほうが満期が遠いですよね。つまり、『満期が遠くなると手数料が高くなる』ということ。もう一つは、死亡保障や外貨が絡んで『仕組みがわかりづらくなると、さらに手数料が高くなる』ということです」

M:「それは事実なんですか?」

U:「全社の全商品を確認したわけではないです。ただ、保険会社からすると満期が遠いほうが契約直後に多くの手数料を取りやすく、仕組みがシンプルなものより複雑なもののほうが手数料を高くしやすい、というのはわかる気がしませんか。お客側から見ると、商品が長期にわたり、さらに複雑になると、契約初期に発生する費用に対して鈍感になりがちなんでしょうね」

M:「なんだか、がっかりです」

U:「そうですよね。ただ、大切なことだと思うんです。今後も外貨建て保険を提示されることがあったら、『手数料はいくらかかりますか? 他の金融商品と比較して低コストだといえますか?』と代理店の人などに尋ねてみてください。ちなみに、銀行の窓口で外貨建て保険を案内している知人は『信じられないくらい手数料が高い』と言っています。私だったら利用しないです」

後田 亨(うしろだ・とおる) 大手生命保険会社や乗り合い代理店を経て2012年に独立。現在はバトン「保険相談室」代表理事として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。著書に「生命保険の『罠』」(講談社+α新書)や「がん保険を疑え!」(ダイヤモンド社)、「保険会社が知られたくない生保の話」「保険外交員も実は知らない生保の話」(日本経済新聞出版社)など。公式サイトはhttp://www.seihosoudan.com/とhttp://www.yokohama-baton.com/

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