これまで株式投資の話をしてきましたが、そもそも投資ってどのようなものでしょうか。
これはあくまでも私の解釈ですが、エネルギーを投入して未来からお返しをいただくことが投資であると考えています。
京セラの創業者の稲盛和夫さんは素晴らしい人生を送るための人生方程式を説いています。
それは「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」というものです。
私はこれを応用して投資の方程式は
「投資の結果=考え方×熱意×能力×時間×資金×回数×運×愛」
ではないかと考えています。
投資とは多くの人がお金でお金を稼ぐことだと考えているようですが、一般的な投資ではお金の占める部分はそれほど大きいわけではありません。
投資にはいろいろあって、教育や設備への投資も立派な投資です。むしろ長期的には教育や設備への投資は株式投資以上に世の中に大きなインパクトを与えるでしょう。
特に教育投資はもっとも重要な投資のひとつです。
みなさんが今あるのも、親や学校、地域社会、会社の先輩などが熱心に指導をしてくれたからではないでしょうか。
教育にはお金だけでなく、たっぷり時間と手間がかかります。周りや本人の熱意はとても重要です。間違ったメソッドだとかえって害がありますし、何度も繰り返し行う必要があります。またその教える行為そのものには愛情も必要でしょう。愛なき教育というのはとてもむなしいものです。
設備投資もまったく同じです。パンの工場はお金だけあればできるものではありません。土地を買って機械を買えばそれでパンができるのではなく、そこには必ず人が必要です。製品開発する人、工場長、原料を仕入れる人、販売する人、工場で働く人。莫大なマンパワーとノウハウが必要です。さらに顧客の信頼も一朝一夕には獲得できません。お金があればそれだけでできるわけではないのです。
一方でそれらが十分にあり、競争力のあるおいしいパンを作るノウハウや人材があれば、投資家や銀行からお金を調達することができるかもしれません。
投資はお金でお金を得ること、と考えている人はすべてがお金さえあればうまくいくと無意識に思っている可能性があります。投資は汚いと考えている人はその人の考え方が実はお金中心主義である可能性が高いのではないでしょうか。
私は16年間明治大学で講師として授業を行っています。テーマは投資教育で、16年間で800名近い学生が社会に巣立って行きました。
先日もセミナーで福岡に出張したときに、3年前に教えた学生が銀行マンになって参加していました。懇親会のときに彼から声をかけられて、「当時学んだことが今すごく生きている。あのときに授業を受けられて本当によかった」と感謝の言葉をかけてくれました。
私は授業でもちろん対価はいただいていますが、それ以上に卒業生からの感謝の言葉が大きなお返しです。これほど教師冥利に尽きることはありません。
「投資とはエネルギーを投入して未来からのお返しをいただくこと」のいわんとするところを少しは分かっていただけたでしょうか。
すべての世の中の活動は誰かが過去取ったリスクによって成り立っています。今働いている会社があるのも、今使っているモノやサービスがあるのも、誰かがリスクを取ってそのような会社や商品を作りだしたことからスタートしています。
誰かが過去、エネルギーを投入した結果が今ある社会です。ということは、未来の社会は私たちがエネルギーを投入していかないと切り開いていくことができません。
それを自分に投入したら自己投資、後輩や子供に投入したら教育投資、工場や店に投入したら設備投資、それを会社を応援する資金に使ったら株式投資になるというだけのことです。その結果、もうけたり損をしたりしますが、そのような損得勘定以上に投資には社会を切り開く力があり、お金を得るということは結果の一つにすぎないということを強調したいです。そしてその投資の本質を深く理解している人ほど、深くもうけることができる(単なる金銭的なお返しだけでなく)と思います。