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不動産リポート

老朽マンション、建て替えまでの長く険しい道のり 不動産コンサルタント 長嶋修

2016/5/18

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 マンションの老朽化問題は、今後の日本にとって深刻な課題だ。どんな建物でもいつかは寿命を迎え、建て替えを検討する時がやってくる。

 ところが現実には、いざマンションの建て替えをしようと思っても様々な障壁があり、思いのほか事例は少ない。これまでに実施されたマンションの建て替えは2014年4月1日時点で、実施準備中のものまで含め230例にすぎない。

 建て替えを実現するためには解体費や建設費などの資金が必要になるが、所有者全員が足並みをそろえて費用を捻出するというのは容易ではない。実際、建て替え事例の多くはいわゆる「等価交換方式」によるものだ。

 等価交換方式とは、マンション所有者が土地を出資し、その土地にマンションデベロッパーが建物を建設し、建物完成後に居住者と不動産事業者それぞれの出資比率に応じた割合で土地建物を取得するといった手法。

 この手法は、建て替え後は現行より建物が大きくなるのが前提で、その余剰分を販売することで建て替え資金を捻出する。つまりこれまでに建て替えが実現したマンションは、容積率が大幅に余っていたために、以前より大きな建物を建てることができ、その分を売却することによって資金を作り出すことができたわけだ。

 この等価交換方式は、不動産事業者側がリスクをとって建て替え・販売ができるという判断があって初めて成立する手法でもある。それゆえ、例えば立地的に難があるなどの理由で事業化されない案件もおのずと多くなる。

 さらには、世の中には多くの「既存不適格マンション」が存在する。既存不適格マンションとは簡単にいえば「建設当時は適法であったものの、後の法改正で不適格となったもの」を指す。

 具体的には「建設時の法制度では容積率200%までOKだったものが、現在は100%になっている」などの状態を指す。建て替え後に建物が小さくなってしまうのでは建て替えは到底不可能である。

 14年12月に施行された「改正マンション建て替え円滑化法」により、耐震性不足の認定を受けたマンションについては、所有者等の80%以上の賛成でマンションやその敷地の売却が行えるようになった。

 また、耐震性不足の認定を受けたマンションの建て替えにより新たに建築されるマンションに係る容積率の緩和特例も設けられた。しかしこれでもまだ建て替えが円滑に進むかといえば、現実には施策としては不十分だろう。

 築年数が経過するほど所有者の高齢化、空室化、賃貸化が進行することも建て替えを難しくさせる大きな要因のひとつ。全国の分譲マンションストック数は15年末時点で623万戸。うち、現行の耐震基準を満たさない旧耐震基準マンション(1981年6月以前の建築確認ストック数)は106万戸ある。

 従って、これから中古マンションの購入を検討するなら、とりもなおさずマンション管理組合の運営状況の確認が必須だ。耐震診断や改修の実績はどうか。建物の修繕計画はどのようになっているか。修繕に必要な積立金はストックされているかなど、事前に確認すべきことは多い。

 さらには本格的に人口や世帯数が減少していく中でも所有・居住のニーズがあるかどうか、容積率が余剰しているかどうかなど、その立地に建て替えの可能性があるのかどうかも把握しておきたい。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立し、初代理事長に就任。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。

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