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社内公募で未踏分野へ、変革するソニーのものづくり

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日経トレンディネット

日本の大手家電メーカーの厳しい状況がニュースでも相次いで報道されている昨今。経営再建をはかるべく、これまで拡大してきた事業を縮小または売却し、コアとなる事業に専念する「原点回帰」の動きが出ている。もちろん、それはソニーも例外ではない。2014年のパソコン事業「VAIO」の売却などはそのひとつといえるだろう。

その一方で、ソニーは既存事業の枠を超えた新しい製品を生み出すことにも力を入れている。2014年4月にスタートした新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program(SAP)」がそれだ。既存の事業部の枠に収まらない新しいアイデアや企画を掘り起こし、製品化、さらには事業化を目指して育成する。担当人数は少ないながら、同社の平井一夫社長兼CEO直轄で進められている。

既に5つの製品が誕生

2016年4月に3年目へ突入したSAPからは、既に5つの製品が誕生している。

1つめは、「電子タグ」と呼ばれるさまざまな機能を持ったブロックを使うことで、専門知識がなくても簡単に電子工作やプログラミングが楽しめる「MESH」。2つめは、電子ペーパーで多彩な柄を好きなときに選べる腕時計「FES Watch」。3つめは、電子ペーパーを採用することで自由なボタンのカスタマイズに対応した学習リモコン「HUIS REMOTE CONTROLLER」。4つめは、腕時計のバンド部分に電子マネーや通知機能、活動量計を組み込んだ、今までにないスマートウォッチ「wena wrist」。そして最後は、5種類の香りを手軽に持ち運べるスティック型のアロマディフューザー「AROMASTIC」。

どれも個性的でバリエーションも豊かだが、重要なポイントとなるのは、どの製品もソニーが持つ"既存の事業にはほぼ当てはまらない"という点にある。未踏分野の製品群を生み出し始めたソニーの新しいモノづくりは、どのように進められているのか。

既存の事業部ではアイデアが拾えない

SAPの生みの親であり、現在は新規事業創出部の担当部長としてSAPを統括する小田島伸至氏によれば、SAPの立ち上げにあたっては「ソニーの中には既存の事業部では拾えないアイデアがたくさん転がっているのに、それを眠らせたままにしておいていいのか」という問題意識があったという。強い意欲やアイデアを持つ社員がいても、既存の事業部の枠に収まらなければ表には出てきにくい。社員としても、誰に相談すればいいのか、そもそも実現可能かも分からない。

受け皿となる組織が必要ではないか――。この考えを平井社長や十時裕樹業務執行役員SVP(当時、現ソニーモバイルコミュニケーションズ社長兼CEO)に伝えたところ、「やってみろと言われた」という。当初の担当は小田島氏1人。だが、社内で募集を始めてみると次々にアイデアが寄せられ、その数は2年間で550件に至った。

SAPの特徴の一つが、社内スタートアップの形を取っていることだ。製品化されるまでの過程は、まず3カ月に1回のオーディションでアイデアを募集する。そこから何段階かのスクリーニングを経て、最終的に残ったアイデアに事業検証として3カ月分の期間と資金、組織を与える。3カ月後に成果物と今後の展望などをプレゼンさせ、それが期待できるものであれば次のステップに進める。あとはこのサイクルを続け、徐々に検証期間は長く、資金も大きくして、アイデアを具体化していく。アイデアの形が定まったら、クラウドファンディングで一般消費者から支援を募る。目標金額に達したものが、実際に製品化される流れだ。製品化されても、課された収益を上げられなければ、そこで事業はストップとなることもある。

個別の事業の規模は、従来よりもはるかに小さい。SAP発の製品の一つ「wena wrist」の開発にかかわるコアメンバーは10人。製造や販売、マーケティングにかかる組織や費用を抑えることで、小さなリスクで新規事業を生み出すためだ。wena wristの開発者である新規事業創出部wena事業室の對馬哲平氏は、「従来の製品が1000人がかりで1000億円を稼ぐプロジェクトだとしたら、SAPの製品は10人がかりで10億を稼ぐプロジェクト」と話す。

これまでない製品なのに「ソニーらしい」

SAPの特徴としてもう一つ挙げられるのが、前述のようにクラウドファンディングを活用していることだ。スタート当初は外部のクラウドファンディングサイトを利用していたが、2015年7月1日に自社が運営する専用サイト「First Flight」をオープン。First Flightは、クラウドファンディングに加えて、eコマースの機能もあわせ持っている。

First Flightの基本的な仕組みは既存のクラウドファンディングとほぼ変わりないが、SAPにとっては「資金を集めるためというよりも、マーケティングとして利用している側面が強い」(小田島氏)。これは、SAPの製品がこれまでにない製品であることから、ソニーの中だけで閉じるのではなく、いろいろな人の意見を取り入れたいと考えているからだ。製品化が決まった5つのアイデアでも、「クラウドファンディングスタート時の完成度は80点程度。支援者の声を集めながら、最終的に120点の製品に仕上げて届けるという思いがある」(小田島氏)。

サイトを通じて支援者の声がダイレクトに届くと「本当に欲しいと思っている人がこんなにもいるんだ」ということが分かり、「担当者として開発に身が入る」とも小田島氏は言う。支援者からすると、開発者の姿やその成長など、製品のバックグラウンドにあるストーリーが見えることに魅力を感じる人も多いようだ。また、SAPから生まれた製品はソニーの既存事業にはないものばかりなのに、支援者のコメントには「ソニーらしい製品」という言葉がいくつも並ぶのは興味深いところ。開発者たちの挑戦する姿勢がかつてソニーがまとっていたブランドイメージと重なり、"ソニーらしい"と感じるのかもしれない。

新規事業が次世代事業を生む可能性

SAPでの売り上げがソニーの損益に与える影響は今のところほとんどない。個別の製品に収益目標が設けられていても、SAPの事業自体に数値目標もないという。それでもソニーがこの事業に取り組むのは、SAPをめぐるこうした動きがソニー全体に及ぶと見ているからだ。SAPによって埋もれていたアイデアを拾い上げ、プロジェクトとして"見える化"したことにより、「ソニー社内にいるさまざまな人が、その技術や発想をもって自ら集まってくるという現象が起きた」と小田島氏は言う。

例えば、既に製品化されているFES Watchの担当者にとって、腕時計は今ある技術で形にした通過点であり、最終的には「ファッションとデジタルの融合」を目指している。そんななかで、「それなら、こんな技術使えるよ」「うちの販路でこんなことやらないか」「うちのデザインを使ってこんなことをやろうよ」という声が、担当者の元に集まるようになったそうだ。SAPに応募したアイデアだけではなく、ソニー全体の知恵や技術の掘り起こしになっている。また、前述の支援者からの反応のようにSAPの存在自体が、「挑戦」というソニーのブランドイメージにつながる効果もある。

「ゴールはアイデアの製品化ではなく事業化」(小田島氏)。それには、各製品が目標の収益を上げ、継続的に製品を出したりラインアップを拡大していけるようになることが重要だ。その道のりはまだ長く険しいが、「社内の知恵や技術とうまく連携しながら、より良い製品を長い目で作っていければいいと考えている」(小田島氏)。

(スプール 近藤寿成)

[日経トレンディネット 2016年4月22日付の記事を再構成]

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