アーティスト・岡崎体育、ツボ突く音楽と映像

「アイデアいっぱいでおもしろい」と話題沸騰のアーティストがいる。5月18日にメジャーデビューする岡崎体育だ。1989年生まれの26歳、男性ソロプロジェクトである。

アルバム収録曲「MUSIC VIDEO」の動画は4月19日に公開され、再生回数は5月10日に200万回を突破し、現在も増え続けている。

この映像は役に立つ

この楽曲は今流行のミュージックビデオはどんな演出をしているかを事細かに解説し、それをていねいに映像化している。例えば、「カメラ目線で歩きながら歌っていると、メンバーが横から出て来て、突然カメラを手で隠すと次のカットで場所を移動している」とか、「女の子の演出」は(1)泣かす(2)踊らす(3)音楽聴かす(4)窓にもたれさせる(5)倒れさせるのが5大演出とか。ミュージックビデオを見慣れている人の笑いのツボを突いてくる。同時に、素人演出家にはすぐに使えるテクニックでもある。

地元にこだわる

自らを「盆地テクノ」の伝道師と名乗っているが、それは奈良や京都で活動していることから。地元のスーパーマーケットで働きながら、2012年から活動を開始し、関西で徐々にファンを増やしてきた。「MUSIC VIDEO」の撮影も、本人、監督、マネジャーの3人で進めた。この手作り感が応援したいと思わせる。

素人でもウキウキさせる

作詞作曲から演奏まで1人でこなしている。ジャンルはテクノなのにどの楽曲も歌詞は聴き取りやすく、ギャグや皮肉がちりばめられている。CMなどから持ってくるサンプリングにはセンスの良さを感じさせ、メロディーは耳に残る。

体形はぽっちゃり、表情も愛嬌（あいきょう）にあふれる。軽快なダンスを披露するが、その唯一無二感はうまいのかそうでもないのか見る者を戸惑わせる。その親しみやすさがまたいい。

楽曲の分析力、それをひねって楽しませる演出力、そして多くの人に届けると願うこだわり。これを併せ持つのが岡崎体育。音楽業界にもファンが急増中、デビューが楽しみだ。

（日経BPヒット総研　上席研究員）