商業主義が映し出した矛盾「灼熱五輪」

2016/5/12

20年東京五輪は「灼熱(しゃくねつ)の大会」となるだろう。開催期間である7月下旬から8月上旬の東京は例年、最高気温が30度を超えるのが当たり前。35度以上の猛暑日も珍しくない。どう考えてもスポーツには適さない時期になぜと、誰もが疑問に思っている。

64年東京大会の開会式は10月10日。気温約20度、湿度37%。「世界中の秋晴れを、全部東京に持ってきたような素晴らしい秋日和であります」の実況で知られる、絶好の条件の下で開幕した。この季節を今回選ばなかった理由は、国際オリンピック委員会(IOC)が夏季五輪を7、8月に開催するよう求めているから。背景には欧州や日本とは別格の放映権料を支払う米テレビ局NBCの思惑があるとされる。

米国で秋はプロスポーツの花盛り。テレビ局にとっては真夏の五輪こそ貴重な稼げるスポーツコンテンツとなる。NBCは14年のソチから32年までの夏冬合わせて計10大会の五輪の放映権をすでに獲得、その総額は約120億ドル(約1兆3000億円)に上る。

商業化にかじを切ってから、五輪には莫大な資金が流れ込むようになった。五輪アスリートも多くが事実上のプロとなり、様々な経済的恩恵を受けている。同時に、大会の商業的価値を高めることが何よりも優先する。競技開始時間まで米国のゴールデンタイムに合わせるケースも珍しくない。

アスリート・ファースト(選手第一)と叫ぶ一方で、アスリートに酷暑に耐えての競技を強いる。真夏の五輪は商業主義が抱える矛盾を分かりやすく教えてくれる。

(編集委員 北川和徳)

[日経朝刊2016年5月12日付]

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