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生保見直し、利率3%以上の「お宝」は契約維持

2016/5/15

生命保険は出産、子どもの独立、定年などライフステージの変化に合わせて見直すのが大切といわれる。不要な保障を減らせば保険料を節約でき、家計にプラスになりやすいからだ。日銀のマイナス金利政策の影響で貯蓄性保険の魅力が低下するなか、どんな点を踏まえて見直すといいだろうか。

東京・世田谷に住む男性会社員のAさん(46)は今、ほっとしている。昨年秋に5歳上の兄から終身保険を解約して年金保険に入るつもりだと相談を受けた際、加入を急がないようにと助言した。兄の終身保険は20年ほど前に契約し、予定利率が3.75%と高かったからだ。

加入を考えた年金保険は65歳から75歳まで毎月3万円、総額360万円を受け取れる。Aさんの兄は公的年金だけでは老後資金が足りないとの不安から着目したが、予定利率は昨秋時点で1%台だったとみられる。日銀が今年2月からマイナス金利政策を実施し、一部の生命保険会社は予定利率を引き下げ始めている。「3%台後半の予定利率は貴重」とAさんは話す。

■バブル期は5%も

予定利率とは生保各社が契約者に対して約束する利回りのこと。足元では1%(金融庁の標準利率ベース)だが、バブル期は5%以上の例が珍しくなかった。こうした時期に契約した商品は一般的に「お宝保険」と呼ばれる。「3~4%台でも高いので、基本的に契約の維持を考えよう」とファイナンシャルプランナー(FP)の横川由理氏は助言する。

大手生保によると、利回りの高い例が比較的残っているのが定期死亡特約付きの終身保険という。ただし定期特約は契約してから例えば10年ごとに更新を迎え、保険料は上がっていくのが一般的だ。FPの横川氏は「30歳で加入した男性が50歳以降も継続する場合、大まかに言って、特約部分の毎月の保険料が30歳時点に比べ4倍になる例もある」と指摘する。

そのため、従来の利回りを維持しながら保険料負担を軽くすることが重要になる。50歳男性が30歳のとき65歳払い込み満了で契約し、終身で1000万円、定期特約で2000万円の死亡保障をしている場合を考えてみよう。

まず手を付ける余地があるのが定期特約部分の解約。大手生保の試算によると、特約を解約すれば毎月の保険料は約2万5000円から約1万8000円に下がる。ただし減らせるのは7000円程度にとどまる。定期特約の保険料は掛け捨てだが、解約返戻金のある終身の保険料は高めに設定しているからだ。

■部分解約で負担減

これより保険料負担が軽くなる可能性があるのが終身保険の部分解約だ。定期特約は維持する一方、終身の保険金を減らす。例えば1000万円の保険金を500万円にすると、毎月の保険料は合計で約1万6000円になる場合がある。解約返戻金の一部を受け取れるので、老後資金や教育資金に充てたりするのもいいだろう。

保険料負担をさらに軽くするには「終身保険を払い済みに変更するのが選択肢になる」(FPの柳沢美由紀氏)。いま契約している保険料の払い込みをやめ、解約返戻金で加入できる分の保障額に減らす方法だ。例えば50歳時点で払い済みにして保障額を500万円、変更後の保険料負担をゼロとする(図B)。特約部分はなくなるが、予定利率は維持できる。

当面の保障が500万円では不安だという人は、新たに別の生保の定期保険などに入るのが一案になる。最近はネット生保で保険料が割安な定期保険がある。加入のハードルは高くなるが、非喫煙者やBMI(体格指数)の値が基準を満たす人向けに保険料を安くする商品もある。

大手銀行の定期預金金利の大半が0.01%なのに比べると生保の予定利率でも高くみえる。しかし「貯蓄型保険に新たに加入するのは避けた方がいい」と柳沢氏は話す。こうした商品は契約時点の予定利率をずっと適用し、市場金利が将来上昇に転じても、いまの低い水準で資金が固定されるためだ。「保険は万が一に備えるための商品という位置付けをより強く意識することが大切」(柳沢氏)だ。

それでも必要以上に保障を付けていないかを見直すことは欠かせない。家族がいるなら自分が死亡したとき得られる遺族年金や死亡退職金などの収入見込み額を算出。残された家族の生計費、子どもがいる場合は教育費などを合計して支出見込み額を出し、差し引きして赤字なら、それが必要保障額だ(図C)。

必要額は主に死亡保障で備えるのが選択肢だが、定年を迎えて夫婦だけの生活になるケースでは、医療保険や介護保険中心にするのが一案だ。ただ高額療養費など公的な制度もあるので、自己負担は一定額にとどまる。貯蓄も踏まえて必要な保障額を慎重に見極めよう。(川鍋直彦)

標準利率見直し 低下の可能性大
生命保険会社の予定利率の水準については、保険金支払いを確実なものにするため金融庁が「標準利率」として目安を示している。算出する際は基本的に新発10年物国債の利回りをもとにする。一時払いの年金、養老、終身という長期で貯蓄性の高い保険は20年物国債の利回りも踏まえて決めている。
貯蓄性の高い保険の標準利率は毎年1、4、7、10月の年4回、ほかの保険は10月にかけての年1回見直す。今年4月の見直しでは据え置いたが、マイナス金利政策を受けて国債の利回りは軒並み低下しており、次回は下がる可能性が大きい。生保各社の予定利率引き下げも一段と広がるとみられている。

[日本経済新聞朝刊2016年5月11日付]

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