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甘さ抑えたロマンチック 大人になじむ格上感を演出

宮田理江のファッションラボ

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NIKKEI STYLE

英国王室のキャサリン妃はグローバルなファッションリーダーとしても知られています。そのキャサリン妃が好んでまとうブランドが英国の「ALEXANDER McQUEEN」(アレキサンダー・マックイーン)。世界が祝福した2010年のロイヤルウエディングで着た純白のドレスもそうでした。

情感の豊かな装いで多用されるディテールに「フリル」があります。細かいフリルをあしらったミニ丈ドレスは愛らしさを印象づけます。真っ白のフリルは甘く見えすぎることがありますが、素肌の色に近いヌーディーなピンクは上品な雰囲気を漂わせています。両肩を見せていますが、首の周りにたっぷりフリルを寄せて、気高さを目に残しました。シルクシフォンの上質な風合いが優しげなムードを醸し出しています。色数を抑え、フリルを小ぶりにしたおかげで、大人の女性が取り入れやすい着姿に仕上がりました。

布を優美に波打たせるドレープ。ひだが織り成すエレガントな風情はレディーの装いになじみます。しなやかに流れ落ちるワンピースのシルエットはドレープやラッフル(フリルより大きいひだ飾り)であでやかさをさらに増しました。花柄も刺しゅうであしらうと、プリントより格段に品格と深みが加わります。小さなブーケ(花束)のような絵柄は大人っぽいフラワーモチーフ。織物に見えるこちらのワンピースは、実はレザーをやわらかくなめした素材で仕立ててあります。職人技を注ぎ込んだ、凝ったつくりが格上感を漂わせています。

全身をロマンチック風で染め上げず、別ムードを引き合わせると全体を落ち着かせやすくなります。何段にも連なったティアード(段々)ラッフルを配したスカートは、ほんのり透ける薄いレースがはかなげで繊細。一方、ジャケットはきりっとしたツートーン(2色使い)。斜めの打ち合わせもシャープでりりしい。印象の異なるジャケットとスカートが響き合って、着姿にドラマが生まれました。ロマンチック濃度を抑え気味にすれば、スーツのジャケットと組み合わせるアレンジも成り立ちます。

花モチーフと刺しゅうはロマンチックを象徴する表現といえるでしょう。その両方を組み合わせ、きらめく糸で縫い上げた花柄刺しゅうは手仕事技の極み。でも、それだけで終わらせないで、あえてダメージ加工を施したジーンズを合わせて、踏み込んだテイストミックスに昇華させています。パンツ裾は大きく折り返すだけにとどめ、無雑作感を呼び込みました。ウエッジサンダルもデニム生地に花柄を刺しゅう。よく見るとジーンズのニードルワークも凝っていて、クラフトマンシップを感じさせます。

「ALEXANDER McQUEEN」は服に加え、スカーフ、小物、バッグなどでもラインアップが充実していて、大人っぽいロマンチックを試すのにぴったりのブランドです。一方で毒気たっぷりのスカル(どくろ)柄を早くから打ち出してきたことでも有名です。不気味な雰囲気や妖しいムードを、ロマンチックな装いに落とし込む着こなしは16-17年秋冬シーズンに「ダークロマンチック」として世界的なムーブメントに育つ気配があります。

時に幼く見えがちなロマンチックをレディーライクに落ち着かせるには、色味を静かに抑えつつ、別テイストとのミックスや、メンズ風味とのマッチング、自然体スタイルとの掛け合わせが役に立ちます。オフィスでは白シャツをボウタイ・ブラウスに差し替えたり、スーツスカートをラッフル付きに変えたりするだけでもエッセンスを生かせるはず。甘さやフェミニン感を弱める「中和」のコーディネートを心がければ、程々の女っぽさに収まるから、いつもより少し大胆にミックスを試してみてはいかがでしょう。

画像協力:

ALEXANDER McQUEEN

http://www.alexandermcqueen.com/jp

宮田理江(みやた・りえ)
 ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウェイリポートやトレンド情報、リアルトレンドを落とし込んだ着こなし解説などを発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした消費者目線での解説が好評。自らのTV通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。著書に『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(学研パブリッシング)がある。
公式サイト:http://riemiyata.com/

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