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「鉄腕アトム」、海外で年齢層別にリメークするワケ

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

手塚プロダクション(東京・新宿)が「鉄腕アトム」を海外で年齢層別にリメークする新たな戦略を打ち出した。具体的には(1)4~6歳向けテレビアニメ「リトルアストロボーイ」、(2)7~12歳向けCGテレビアニメ「アストロボーイ・リブート」、(3)11歳以上向けの実写映画(タイトル未定)――の3作品をリメークする予定。いずれも海外のアニメ・映画制作会社と組んで全世界を対象に放映・配給するという。

幼児・小学生・大人向け、アニメ・CG・実写映画……

なぜ「鉄腕アトム」を海外で年齢層別に同時にリメークする必要があるのだろうか?

背景を探ってみると、日本のアニメ産業や国際市場の構造変化や様々な課題が見えてくる。今回は日本にとって「クールジャパン」戦略を支える屋台骨でもあるアニメ・漫画のコンテンツビジネスの最新事情を紹介しよう。

「鉄腕アトム」「ブラック・ジャック」「ジャングル大帝」「マグマ大使」「リボンの騎士」「三つ目がとおる」「火の鳥」「どろろ」「海のトリトン」「ブッダ」……。日本のディズニーともいわれる手塚治虫さんは1989年2月に60歳で亡くなるまで700以上の漫画作品を生み出してきた。「なかでも最も知名度が高く、多くの収益を上げてきたのが鉄腕アトム」と手塚プロダクション著作権事業局長の清水義裕さんは説明する。関連商品の売り上げなども含めると、手塚プロの年商の半分以上を占めるという。

手塚作品700点以上、リメーク繰り返す「鉄腕アトム」

もともと「鉄腕アトム」の視聴者は子どもが中心なので、たとえ大ヒットしても子どもが成長するのに伴いやがて作品を"卒業"してしまう。しかも、次の世代の子どもの目には「昔の古臭い作品」として映る。そのため、「鉄腕アトム」は1963年にテレビアニメ(日本初の国産アニメ・白黒)として放映して以来、1980年(テレビアニメ・カラー)、2003年(テレビアニメ)、2009年(CG映画)、2014年(テレビアニメ)とリメークを繰り返してきた。

作品を復活させ、常に新しい作品として収益を継続的に生み出そうという狙いからだ。

今回のリメークは「鉄腕アトム」の視聴者をさらに年齢層別に切り分け、形態もアニメ、CG、実写映画と多様化させようという新たな試み。「対象や形態を分ければ市場の変化に応じて原作を同時にリメークできる」と清水さんは話す。

大人向けアニメを輸出しにくい、アニメ界も"ガラパゴス現象"

グラフを見てほしい。近年、日本内外のアニメを取り巻く市場環境は大きく変化している。

日本動画協会によると、日本のアニメ制作会社の年間輸出額は2005年の313億円をピークに大きく減少。最近は回復の兆しもうかがえるものの、最新の2014年は195億円でピーク時の6割程度の水準にとどまっている。

なぜ日本のアニメの輸出が伸び悩んでいるのだろうか?

実は日本アニメの海外展開には大きなジレンマがある。

少子高齢化が進む国内市場の変化に対応し、日本のアニメ業界はテレビの深夜の時間帯に放映する成人向けに作品をシフトさせることで市場規模を保ってきた。「だが、成人向け作品は子どもが多い新興国には輸出しにくい」(清水さん)。成人向けアニメを輸出できるのは、文化が成熟し、少子高齢化を迎えた先進国の一部にすぎず、急成長する新興国市場はなかなか攻略できないのだ。

つまり、アニメ業界でも、日本国内で人気がある商品が海外市場で通用しにくいという"ガラパゴス現象"が起きているというわけ。

子どもが多い新興国、少子高齢化が進む先進国……

新興国は子ども向け、先進国は成人向けの市場が伸びている――。

先細りが避けられない日本国内市場の将来をにらみ、こうした多様化しつつある海外市場の実態にきめ細かく対応するためには、最強コンテンツの「鉄腕アトム」を複数の年齢層、形態に切り分けて同時にリメークする必要がある。手塚プロはこう判断した。

「ドラえもん」「ONE PIECE(ワンピース)」「NARUTO―ナルト―」「ポケットモンスター」「美少女戦士セーラームーン」など海外でも人気が高い日本の漫画・アニメ作品は多い。だが、ほとんどが日本向け作品の吹き替え版。2012年には「巨人の星」の設定をインド市場向けに野球からクリケットに変えてリメークした例はあるが、海外向けにリメークしたアニメ作品はあまり多くない。原作者からリメークの許諾を得るのが難しいためだ。

原作の手直しは柔軟に対応、「手塚氏の精神を損なわないなら」

だが手塚プロは「すでに原作者の手塚治虫先生が亡くなっているし、限られたコンテンツを有効活用するためにも、原作者の精神を損なわない範囲ならば、原作の手直しは柔軟に認める」(清水さん)という方針。

原作に対する手塚プロの柔軟姿勢から、これまで、「鉄腕アトム」の「地上最大のロボット」をヒントに浦沢直樹さんが独自の視点から「PLUTO」として描いたり、鉄腕アトムが生まれる前の始まりの秘話をゆうきまさみ、カサハラテツロー両氏が「アトム ザ・ビギニング」として描いたりしてきた。それが文化創造の新たなエネルギーになってきた。

今後は海外のアニメ・映画制作会社と組むことで「鉄腕アトム」の海外向けリメークを一気に拡大し、経営の力点を日本国内市場から、成長が見込める海外市場への輸出に移す。海外市場に浸透しやすいように脚本や構成、キャラクター設定など原作も大幅に手直しするという。

今回リメークする3作品はどんな内容なのだろうか?

幼児向けは環境問題などがテーマ

「リトルアストロボーイ」は4~6歳向けテレビアニメで手塚プロとフランスのアニメ制作会社のプラネットニモ(パリ)との共同制作。離島にある研究所を舞台に6歳相当の主人公の幼児ロボット「リトルアストロボーイ」が環境問題や動物同士の争いなどを巡って活躍するというストーリー。

2014年にナイジェリア向けにリメークした「ロボットアトム」をさらに海外市場になじみやすいように手直しした。保護者役で研究所所長でもある「お茶の水博士」やその孫娘「スズ」、子猫型ロボット「アストロキティ」、動物学が専門の「ブラント博士」、植物学が専門の「セレナ博士」らも登場する。

11分×52話で制作費は6億円程度。2018年4月にも全世界でテレビ放映する予定だという。欧米のほか中国、韓国、東南アジアなどからも出資を募る。

小学生向けは勧善懲悪もの

「アストロボーイ・リブート」は7~12歳向けCGテレビアニメ。フランスのアニメ制作会社のカリバラ(パリ)が脚本、作画、キャラクターデザインなどを担当。手塚プロは全体を監修するほか、モナコのシブヤプロダクションズとともに資金集めや放映権交渉なども進める。

高層ビルが林立する未来都市が舞台で、女性博士とその娘の家に居候する主人公の少年ロボットが悪者と戦うという筋書き。「リトルアストロボーイ」は子どもへの情操教育面に力点を置くが、「アストロボーイ・リブート」はアクションやストーリーのダイナミックな展開を前面に打ち出す。

手塚プロはCG技術のノウハウを持つカリバラにリメーク権を供与し、主にアジア地域での作品の放映権や関連商品の販売などを担当する。30分×26話で制作費は11億円程度。2018年以降にフランスをはじめ先進国を皮切りに世界各地で順次テレビ放映する予定。

実写はハリウッド映画、公開は3年後以降に

実写映画(タイトル未定)は11歳以上向け。手塚プロはオーストラリアの制作スタジオ、アニマル・ロジック(シドニー)や米大手映画会社ワーナー・ブラザースにリメーク権を供与する。映画「カリフォルニア・ダウン」に携わった脚本家に脚本を依頼しており、公開は3年後以降になる見通し。現在、脚本やキャスティング、資金集めなどを詰めている。

3作品を通じてライセンス料や放映権、関連商品の売り上げなどが収益として期待できる。

「時代の変化に敏感に対応しなければ、うちのような版権管理会社はいつまでも生き残れない。新たな文化創造につなげつつ、限られた貴重なコンテンツを有効活用し続けるのが手塚治虫先生の遺志でもある」(清水さん)。

新たな「クールジャパン」戦略として関心を集めそうだ。

なぜ「田中さん」は西日本に多いのか (日経プレミアシリーズ)

著者:小林 明
出版:日本経済新聞出版社
価格:918円(税込み)

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