お母さんはみんなのアイドル 絵本作家、のぶみさん
著名人が両親から学んだことや思い出などを語る「それでも親子」。今回は絵本作家の、のぶみさんだ。
――親御さんはキリスト教の牧師さんだったとか。
「自宅が教会で2階に家族4人で暮らしていました。両親は貧しい人に食事をあげたり、苦しんでいる人の話を聞いたり、よその人を助けるのにとても忙しかった。どこかに連れて行ってもらったとか遊んでもらったという記憶がない。もっと自分を見てほしいといつも思っていました」
――いじめに苦しんだ。
「勉強は得意じゃなかったし、協調性もなかったし、小学生の時いじめられたんです。小学校に上がった頃、自分の部屋ができ、こもりがちになりました。自殺未遂を起こしたけど両親は何も気づいてくれなくて、また傷つきました。今の子どもたちは『ママのスマホになりたい』って言うんです。いつも手放さないから。お母さんたちは、もっともっと子どものことを見てあげてほしいですね」
――非行に走った時期もあったそうですね。
「親の関心を引きたくて、姉とそろってぐれました。気づいたら100人の不良集団のリーダーに。警察につかまり、父親が迎えに来ました。1発ほほをたたかれて、あとは何も言わずラーメンを食べにいった。叱られるよりも重く響きました。そのうちに周囲が本当に悪いことをするようになってきて怖くなった。愛情が欲しかっただけで、悪いことをしたいと思ったことはなかったんです」
――絵本が人生の転機に?
「好きな女の子が絵本好きと聞いて、気を引きたい一心で絵本を書いて見せたんです。画用紙の切れ端にへたくそな絵。それでも、すごく褒めてくれた。うれしくて、うれしくて絵本を書きました。初めて賞をもらって絵本作家になろうと決めたんです。ただデビューまで7年、鬱になり、パニックになり、髪が抜けてつえがないと歩けないような時期もありました」
――それでも夢をあきらめなかった。
「ほかにやれることが何もなかったんです。絵は大してうまくないけど、絵本しかなかった。苦しい時ほど神様にテストされてるんだって考えてます。余裕があるときは人は優しくなれる。苦しいときだからこそ、どう振る舞えるかが大切だと。300冊目でやっとデビュー。何より初めての絵本から褒め続けてくれた女の子、今の奥さんが原動力だったかも。女の人は男を変える力があるんですよ」
――母親とのつながりを題材にした作品が多いですね。
「お母さんは皆のアイドルですからね。最近、講演会などで私の父親がファンの皆さんに勝手に自分で書いたサインや絵をプレゼントしちゃうんです。父なりに息子の仕事を喜んでるんだと涙が出ます。子どもの頃よくガンダムの絵を描いてくれた。回り道をしてきたけど、すべてに意味があったと今は思えます」
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