就活で女性活躍企業の選び方 実績数値6分類で分析
勤続年数の男女差カギ 女性比率・管理職比率も
――女性活躍推進ムードが高まっている。女子学生に追い風が吹いているようです。
「人口減少を背景に、人材の確保に企業は苦慮しているようだ。これまでも女性活躍推進ムードが高まったことはあるが、企業は今まで以上に真剣になっている。新卒女性を採用する意欲は高まっている」
「ただ注意が必要なのは女性活躍の進み具合や取り組み姿勢は企業ごとの差が大きいこと。慎重に選ばないと入社してみたものの、思うように働けない恐れがある」
――女性活躍について企業は様々な実績値を公表しています。どこをどう見ればいいのでしょうか。
「採用者に占める女性比率と、男女の平均勤続年数の差、女性管理職比率の3つを見てほしい。採用者比率20%、勤続年数の差70%(男性を100とした場合の女性の比率)、女性管理職比率20%を目安として、上回っているか否かで企業の現状を6つのタイプに分類できる(別表)。このタイプ分けは自社の現状と課題をつかめるように、国の委託を受けて企業向けに作ったものだが、学生が就職先を知る手掛かりにもなる」
「3項目とも目安を超える企業はまだ少数派。どのタイプに入るかを知り、就職希望先の現状と課題をおおよそ把握してほしい。まずは女性を採用していることが大事だが、タイプ4のように狭き門でも、入社した女性が長く働ける企業はある。ただし、採用比率が低いということは、女性の配置部署が限定されている可能性が高いことに注意。気をつけて見てほしいのはタイプ3。採用比率と管理職比率が高いが、勤続年数の男女差がなぜ大きいかを想像したい。例えば採用が8割以上女性なので管理職比率が2割は超える企業があった場合、実は女性が就業継続も活躍も難しい働き方や職場風土が残っている可能性がある」
――日本企業は全般的に女性活躍が遅れています。厳しく見るとどこも及第点が取れないのでは。
「タイプをつかんだ後に、2つのチェックポイントがある。1つは同業他社との比較だ。もともと女性社員比率が高い化粧品会社と低い運輸会社を同じ土俵で比べたら当然数値に差はあるし、就職においては、働き方だけでなく自分がどんな仕事をしたいかが重要だろう。どの業種にも女性活躍に前向きな企業はある。同業種内で進んでいる企業を見極めてほしい」
「2つ目は女性活躍推進法が企業に策定を義務付けた行動計画を確かめること。公表義務があるので各社のホームページなどで閲覧できる。今後の具体的な取り組みをみると、会社が向かおうとしている方向と、中長期的に女性活躍が進むかどうかが分かる」
――女性管理職比率30%や採用比率50%など高い目標数値を設定している企業が望ましいのでしょうか。
「目標数値が高くても実効性を伴わなければダメ。高い目標を掲げながら、具体策を明記していない会社が案外多い。これまで女性が活躍できなかった課題をきちんと分析できているのか疑わしい」
「女性登用が話題に上るとき、女性社員の意識が問題視されがちだ。でも本質的な問題は女性を育成できない職場環境が原因である企業が多い。チャンスを与えて育てようとしないから女性がやる気を失ってしまう。そこを改善しないといつまでも克服できない。女性向け施策ばかりを列記した行動計画はこの観点でいうと失格。管理職研修など男性を含めた意識改革に取り組む企業は評価できる」
「情報を集めるときは男性の働き方にも目を向けてほしい。長時間労働の見直しや在宅勤務など柔軟な働き方の導入を計画に盛り込んでいるかどうか。男性が働きやすい職場環境は、子どもを産んで育てながらも女性が活躍できる職場である可能性が高い」
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データベース、厚労省が作成
厚生労働省は女性の活躍推進企業データベース(http://www.positive-ryouritsu.jp/positivedb/)を今春つくった。女性採用比率や女性管理職比率、男女の平均勤続年数の差など18項目を確かめられる。最低1項目以上の公開を義務付けているが、公開項目数は企業によって異なる。情報公開に熱心であるか否かも、企業の姿勢を知る手掛かりだ。約5千社が登録済み。
(編集委員 石塚由紀夫)
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