後田(以下U):「一定期間は元本割れが続く貯蓄商品であっても、満期まで待てば預金より有利だろうとおっしゃっていましたよね」
Dさん(以下D):「はい」
U:「確かに、満期に払い戻しされるお金の額を見るとそう感じます。ただ、進学資金なら17~18年後、老後資金なら60歳以降などと、将来のある時期にターゲットを合わせて、都合良くお金を増やせる方法があるものでしょうか。ちなみに、証券会社の運用部門の人にこの質問をしたら『そんな方法があれば誰も苦労しない』と即答でした(笑)」
D:「じゃあ、学資保険や個人年金保険に入るのはダメなんですか?」
U:「いずれもかなり先のイベントに対してお金を準備するための商品なので、いいのかダメなのか加入前からわかっているほうが不思議だと思います。もし、預金金利がずっと今のままであれば、どちらの保険も『入っておいて正解だった』ということになるでしょう」
D:「そうですね……」
U:「逆にインフレになって金利が上がれば後悔しそうです」
D:「でも、今の状況をみると当面、金利は上がらなさそうですよね」
U:「私も今はそんな気がしています。ただ、現時点で金利が上がらないだろうという見方が強かったとしても、10年後20年後ともなると誰にもわからないはずです」
D:「まあね。結局、どうしたらいいんですか?」
U:「どうしたらいいのか考えていたら、面白いことに気がつきました」
D:「何ですか?」
U:「例えば30歳の人が個人年金保険と学資保険に加入するとします。すると、個人年金保険のほうが学資保険より元本割れ期間が長い、言い換えるとお金の増え方が遅いんですよ。なぜだと思いますか?」
D:「よくわからないです。年金プランと学資保険を比べたりしませんから」
U:「そうですよね。でも、保険会社が個人年金保険の契約で集めたお金についてだけ、わざわざお金が増えにくい方法で運用しているとは考えにくいでしょう」
D:「確かに」
U:「学資保険と個人年金保険の違いは代理店手数料などの販売手数料なのではないでしょうか。個人年金保険のほうが手数料が高いため、当初の元本割れ期間が長くなってしまうのではないかと」
D:「本当ですか?」
U:「学資保険だと加入から17年後ぐらいには、お客様が払った保険料の総額を払戻金が上回っている必要があります。でも個人年金保険の場合、30年後が重要になるわけですから、それより短い期間のマイナスは見過ごされやすいのではないか。つまり、元本割れ期間が長いのは、契約初期の手数料などに消えたマイナスの挽回に時間がかかっているだけではないかという見立てです」
D:「本当にそうなのかなぁ」
U:「さすがに、保険会社の人に尋ねても『その通りです』とは認めてくれませんよ(笑)。個人的には学資保険の17年後だって、十分に長期間だと思いますから。ただ、老後資金といったテーマに縛られて保険商品を選ぶと、結果的にお金が増えにくい方法を選ぶことになるかもしれない、ということを頭に入れておいてもいいでしょう」
D:「う~ん……」
U:「そこで提案したいのが、『確かなこと』と『不確かなこと』に分けて貯蓄性を評価することです。将来の金利やお金の価値などは不確かなことです。長期にわたるだけに、満期まで契約を続けられる可能性も不確かですよね」
D:「ええ」
U:「一方、確かなことは契約の際に発生する販売手数料などが貯蓄性に直接影響する点です。つまり、短期で解約した場合の払戻率が低い商品ほど不利だとみることができます。手数料などが高いと予想できるからです。そう考えると、貯蓄性という点において、私にとっては学資保険のほうが個人年金保険よりまだマシな保険です」
D:「では外貨建ての保険はどうですか? 最近、代理店の人に薦められているんです」
U:「それに関しては、学資保険と個人年金保険の比較よりさらに面白い事実があります。次回、お話しますね」
