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海外REIT投信、危うい人気の一極集中 QUICK資産運用研究所 北澤千秋

2016/5/11

 海外の不動産投資信託(REIT)で運用するファンドが人気だ。高い利回りと分配金の大きさで個人投資家を引き付け、設定から解約・償還を引いた資金流出入は3月まで16カ月連続の流入超だった(グラフ)。超低金利で運用先に困った個人マネーの有力な受け皿となっているが、価格変動リスクの大きな投信だけに、過度な資金の集中を心配する声がある。高い分配金を払い続けた結果、人気ファンドの基準価格は下落基調で、どこまで高い分配金を出し続けるかも焦点になっている。

■価格変動の大きさは株式並み

 「今の投信市場を支えているのは海外REIT型ファンド」。多くの業界関係者は口をそろえる。昨年は好調だったバランス型やファンドラップは残高の増加ペースが鈍り、足元では海外REITファンドがひとり気を吐いている。

 今年3月末時点の残高は8兆8000億円と、追加型株式投信全体(ETFを除く)の約15%を占め、ファンドの純資産残高ランキングでも上位10本中5本が海外REIT型だ。

 人気の理由は運用対象である海外REITの高い利回りと、ファンド自体の高水準の分配金にある。米国REITの平均配当利回りは直近で4%強あり、先進国債券の利回りや株式の配当利回りを大きく上回っている。少しでも高い利回りで安定的なリターンが欲しいと考える投資家には、魅力的に映る水準だ。

 できるだけ多くの分配金を手に入れたいという投資家ニーズも取り込んでいる。昨年来の度重なる世界的な市場の動揺で、株式や新興国通貨などに投資する毎月分配型投信では、分配金の引き下げが相次いだ。

 一方、海外REIT型は新規に流入する資金などを原資に、高い分配金の支払いを継続。分配金利回り(過去1年の分配金合計額を直近の基準価格で割った数値)が20%を超えるファンドもざらで、投資家の関心が集中している。

 ただ、分配金目当ての投資は危うさをはらんでいる。ひとつは海外REITの価格変動率の大きさだ。値動きのブレ幅の大きさを計る統計数値(標準偏差)を見ると、米国REITは米国株と同程度の水準で、米ハイイールド債より高い。

 REITは定期的に入る不動産の賃料収入が配当原資となるため、値動きも安定していると思いがちだが、実はその価格は株式並みに変動する。多くは為替相場の変動の影響も受ける。

 利回りの相対的な高さが魅力の海外REITは、市場金利が上昇すると価格は下落することが多い。米連邦準備理事会(FRB)が想定外の利上げに踏み切った場合など、相場は思わぬ波乱に見舞われる懸念がある。分配金に目を奪われている個人が、どれほど海外REITのリスクの大きさを自覚しているかは疑問だ。

■基準価格がゼロになる?

 海外REITファンドのもう一つの懸念材料は、各ファンドが今後も高い分配金を払い続けられるかという点だ。

 一見すると、多くのファンドは心配がなさそうにみえる。例えば、米国REITで運用しているある人気ファンドは、直近の運用報告書によると分配可能原資(1万口当たり)が4550円で、会計上は5年以上これまでと同じ分配金を毎月払い続けられる。

 問題なのはその中身だ。米REIT相場の不振で期間中の運用益は4円にすぎず、残りは純資産の一部が分配金の原資になっている。基準価格はすでに3000円台で、仮にこのまま運用収益が上がらず、それでも純資産を取り崩して今と同じ分配金を支払い続けると、基準価格は4年ちょっとでゼロになってしまう計算だ。

 高分配の海外REIT型投信の実情は、大半が上記の人気ファンドと似たり寄ったり。純資産の食いつぶしによる分配金の支払いで基準価格は下げ続けており、過去1年のリターン(基準価格の騰落に投資家が手にした分配金を加味した収益率)は軒並みマイナスになっている()。投資家からすれば、基準価格の下げと引き換えに、高い分配金を得ているにすぎない。分配金利回りが2割前後と高いのも、分母となる基準価格が下げ続けた結果だ。

 果たして運用会社は基準価格が2000円台、1000円台に下落しても高い分配金を出し続けるのか。海外REIT相場の急騰でもない限り、いずれ分配金は減額される可能性がある。

■ブラジル投信の二の舞いか

 「ブラジル投信の二の舞いにならないか」。独立系投信コンサルタントの吉井崇裕氏は海外REIT型投信にそんな懸念を持っている。

 ブラジルの債券や通貨で運用する投信は一時期、高額の分配金で人気を集めたが、ここ数年はレアルの急落などで運用成績が悪化。多くのファンドが分配金を減らし、資金の流出が加速。それがさらにレアルの下落をもたらすという悪循環に陥った。結果的に、日本の個人マネーが流動性の低い新興国の市場をかく乱した形になった。

 海外REITファンドについても「分配金の引き下げが個人マネーが逃げ出すきっかけになりかねない」と吉井氏は予想する。米国REITの時価総額は9300億ドルで、米国の主要500社(S&P500)の株式時価総額合計の20分の1程度。市場規模はさほど大きくないだけに、いったん資金流出が加速すると、それが米REIT市場を揺るがす恐れがある。

 JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳グローバル・マーケット・ストラテジストは「今、日本の個人投資家の資産構成は海外REITに偏りすぎている。もっと他の資産に分散した方がいい」とアドバイスする。資金の移し先は、利回りが米REITとほとんど変わらず、リスクは3分の2程度の米高配当株投信(為替ヘッジ付き)などが候補になるという。

 投資する資産の集中を避けて、できるだけ背負うリスクを抑えるのが資産運用の原則。海外REIT型投信の保有者は、分配金の引き下げが現実になる前に、きちんと資産分散ができているかを点検しておいた方がいい。

「投信調査隊」は隔週水曜日に掲載します。次回は5月25日(水)です。

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