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岩瀬大輔・ライフネット生命保険社長(40)の人生観を大きく変えた、米ハーバードビジネススクール(HBS)への経営学修士(MBA)留学。後半は、岩瀬氏が、HBSでの学びを胸に、ライフネット生命の設立に向けて動き出す話。MBA留学は果たして、岩瀬氏にどんな変化をもたらしたのか。

>> 岩瀬大輔氏(上) 教わるのではなく感じ取る~ハーバードの大人の学び

授業を通じ、リーダーシップの意識を植え付けられた。

最初のオリエンテーションや新入生へのメッセージで、学校側はしつこく「これは、あなたの人生を変える体験になるでしょう」と言っていました。当時の私はちょっとすれていて、「コンサルもファンドも経験しているし、MBA出身者とも一緒に仕事をしてきた。いまさら、人生を変えるほどの経験なんて、ビジネススクールでできるのだろうか」と冷めた目で見ていました。ところが、2年間過ごしたら、確かに、私の世界観や人生観は明らかに大きく変わりました。

どう変わったのか。まず、リーダーシップの意識が芽生えました。HBSは、「世界を変えるリーダーを教育する」を、創立以来のミッションに掲げています。これも最初は、「何を大げさな」と思っていました。しかし、どの授業でも教授が生徒に対し、「君たちは社会を変革する責務がある」みたいなことを繰り返し言うわけです。それまで自分のことで精いっぱいで、自分のことしか考えられなかった私には、とても新鮮な響きでした。

自分の目線が高くなったことも、大きな変化でした。HBSの授業では、実際にケースで取り上げた企業の経営者が最後に教室に入ってきて、話をしたり議論したりすることが、よくあります。確かに、すごいオーラを発する経営者もいます。一方で、大きな事を成し遂げた割には、なんだ自分たちとあまり変わらないなと思わせる経営者も、正直、何人もいました。

数多くの経営者を見て気付いたのは、実は、一流といわれる経営者も自分たちとそれほど違うわけではなく、違うのは、志の高さや、やればできるという前向きな思考だということです。だったら自分も、何か大きなことをやろうと思えば、大きなことができるのではないか。そう思えるようになったことも、HBSでの大きな収穫です。

卒業後間もなく、出口治明・現会長らとライフネット生命保険を設立。副社長に就任した。

HBSを卒業した2006年の米国は、金融バブルの絶頂期。私も複数の投資ファンドから、肩書きや給与面で好条件のオファーをもらっていました。しかし、卒業半年前にある日本人投資家と知り合ったのをきっかけに、ベンチャー設立の話が浮上。生保出身の出口とも知り合い、どこもやっていなかったネット生保を創業することになりました。

実はこの投資家の方が、密かに私のブログを読んでくださっていて、私のことを非常に高く評価してくれていたのです。HBSでブログを書いていなかったら、この展開はなかったのではないかと思います。

生保ベンチャーの立ち上げを決断した理由はいろいろありますが、HBSで学びとして得た、大きなことをやってみたい、社会に貢献したい、世の中を変えたいという思いがあったのは確かです。生保業界に関して言えば、わかりにくいといわれていた保険の契約や中身を透明で誰にでもわかるものにし、少しでも多くのお客様の役に立つことが、世の中を変えることであり、私が社会に貢献できることだと思いました。こうした考えや思いは、会社のミッション(使命)として、当社の「ライフネットの生命保険マニフェスト」の中にも盛り込んであります。

さらにいえば、HBSで社会起業やNPO(非営利組織)といったものに関心を持ったことも、生保をやろうと決めた理由の一つかもしれません。民間保険には国の社会保障制度を補完する役目もあるので、保険会社の経営は国のあり方や国の課題を考えることにもつながります。そういった意味でも、生保事業にやりがいを感じました。

新規参入が増え、競争が激しくなる中、2013年、社長に就任した。

ライフネット生命は、戦後初の独立系生保、あるいはネット生保の先駆的存在として設立時から注目を浴び、また実際に、日本の保険市場に大きなインパクトや変革ももたらしたと自負しています。

ただ、これまでは順調に成長してきましたが、ここにきて、事業を取り巻く環境の変化のスピードに十分について行けず、成長が鈍化しているのも事実です。現状を打開するため、昨年、KDDIと資本・業務提携し、スマートフォン経由での生命保険商品の提供に一段と力を入れ始めました。さらなる成長のためにも、今は特に、若い人たちの間で一番人気のある生命保険会社になろうという目標を掲げ、社員みんなで頑張っています。

ライフネット生命は、ゼロから立ち上げ、共にずっと歩んできたので、自分の分身のような存在です。この会社を素晴らしい会社にすることが、ひいては自分が世の中を変える、世の中にインパクトを与えることにつながるのではないかとの思いで、日々、経営に取り組んでいます。

インタビュー/構成 猪瀬聖(ライター)

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