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マーケットは虚々実々、疑いの目を(藤野英人) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者

2016/5/3

「株価は常にファンダメンタルズを予測して動く。マーケットは多くの失敗や早とちりもする」

日銀の政策決定会合が4月27~28日に行われました。そこで金融政策の「現状維持」が発表されたことにより株価が急落しました。なぜ株価が下がったのでしょうか?

株価は常に先回りをします。そして株価は原則はファンダメンタルズによって動きます。ファンダメンタルズとは国や企業の経済状態をあらわす指標のことです。国だと経済成長率、物価上昇率、財政収支などのことをいい、企業だと売上高や利益などの業績、資産や負債などの財産の状態がそれに当たります。

株価というのはその実態の先行き、だいたい1カ月から半年くらい先のファンダメンタルズの状況を予測して動きます。マーケットがとても面白いのは多くの失敗や早とちりをしながら、でも長期的に見るとおおむね正確にファンダメンタルズをなぞっていることです。

以前もこのコラムで取り上げた、投資の賢人といわれたベンジャミン・グレアムが指摘した通り、市場のたとえであるミスター・マーケットはお調子者で、気分にムラがあり、熱狂したり絶望したりしますが、最終的にはファンダメンタルズに沿った動きになります。よってマーケットが提示する株価を予測するには、ファンダメンタルズの予測ができたらよいということになるわけです。

日銀の金融政策決定会合は金融政策の運営に関する事項を審議・決定する場で、マーケットに大きな影響を与える「イベント」のひとつです。イベントとはマーケットを動かすきっかけのことをいいます。イベントはマーケットを上昇させることも下落させることもあり、内容は様々です。

私たちの記憶に新しいマイナス金利も1月の政策決定会合で決定されました。その結果で株価が大きく変動するわけなので当然、会合の内容を事前に知ることができたら大もうけができます。しかし、現実には難しく、多くの専門家が会合の結果を事前に予測しようとします。事実、会合の前には多くのエコノミストやメディアの予測記事やリポートであふれかえります。

今回は、多くのリポートや事前の観測記事が「追加の質的・量的金融緩和」を予想しました。マーケットは予想で動くので、追加緩和の発表という観測が強まり、円安・株高が加速しました。

しかし、実際には大方の予測を裏切り、追加緩和はなく「現状維持」という結果でした。予測で円安・株高になったけど実際が違ったとなれば逆の動きが起きることは当然です。よって、株式が大幅に売られたのは、このような予測と現実に大きなギャップが生じたからです。

では仮にですが、予測通りに「追加緩和」になった場合マーケットはどのように反応したでしょうか。

「予想通りだった」ということは今回のような株価の大きな暴落はなかったでしょう。しかし、株価はすでに上昇しているので、市場参加者が期待しているほど金融緩和が行われなかった場合、「現状維持」ほど大きくないとはいえ予想と現実のギャップが発生しているので、株価が下がった可能性が高いと思われます。株価が上がるとすれば、市場の期待している以上の金融緩和が発表されたときだけでしょう。

すなわち、不確定な情報で「金融緩和が行われる」という期待感だけで株価が上昇した場合は、上昇の余地は限られるのです。

どうでしょうか。虚々実々の世界ですね。私が観測する限り、多くの投資家は株価が上がると喜びます。だから期待というのはよい方向の期待をしがちな傾向があります。よって追加緩和期待で株価が上がる、という場合は過去の事例からみても疑いを持って見たほうがよいでしょう。今回は勝手に市場参加者が追加金融緩和を予測し、勝手に外してずっこけているケースともいえますが、このようなことはしばしば起きます。

日銀の政策決定会合は大きなイベントであり、上にも下にも株価の変動要因になるということを理解できれば、新聞やニュースを見ることがもっと楽しくなるでしょう。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏と楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏が交代で執筆します。
藤野 英人(ふじの・ひでと) レオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)。1966年生まれ。早稲田大学法学部卒。90年野村投資顧問(現野村アセットマネジメント)に入社。96年ジャーディンフレミング投資顧問(現JPモルガン・アセット・マネジメント)に入社。「JF中小型オープン」は1年間の上昇率219%を記録。驚異的なパフォーマンスを上げ、「カリスマファンドマネジャー」と呼ばれた。2000年ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントに入社。03年レオス・キャピタルワークス創業。CIOに就任。09年取締役、15年10月社長就任。明治大学非常勤講師なども務める。著書に「投資家が『お金』よりも大切にしていること」(星海社)など多数。

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