格安スマホ・格安SIMへの乗り換えを考えるユーザーが不安に感じることの一つが、サポート体制だ。
大手携帯電話会社は全国各地にショップを構え、契約やプラン変更の受け付け業務を行う。さらにこのショップは、購入した端末の初期設定から、故障時の対応まで行うサポートサービスの窓口も果たしている。
では、格安スマホ・格安SIMを提供する主要MVNO(仮想移動体通信事業者)はどうなっているのだろうか。各社のサポート体制を調べた。
自社店舗を用意するMVNOはまだ少ない
まず、自ら店舗を構えるMVNOは少ない。2016年4月下旬時点ではイオンモバイル、FREETEL SIM、mineo、U-mobile、楽天モバイルの5社しかない。さらに基本的には店舗数も多くなく、例えばmineoはJR大阪駅近くの商業施設「グランフロント大阪」内の1店のみだ。
リアル店舗や専用コーナーの設置に積極的なのは、イオンモバイルとFREETEL SIM。2月からMVNO事業に参入したイオンモバイルは、全国213のイオンに専用コーナーを設け、「サポート体制の充実」も売りに掲げる。FREETEL SIMは、ヨドバシカメラとタッグを組んで、3月上旬時点では全国11店舗のヨドバシカメラ内に専用コーナー「FREETELコーナー」を設けている。
では、各MVNOの自社店舗や専用コーナーでは、どのようなサポートに対応するのか。下の表にまとめた。

結果から言うと、MVNOの直営店舗でのサポートサービスは現状、SIM購入のときに必要なAPN設定(データ通信を行うための設定)のみというケースが多い。個人情報に関わる部分の設定や「アドレス帳の移行などデータ破損が生じる可能性があるサービスは基本行えない」(某直営店のスタッフ)。ただし、場合によっては、店舗スタッフがユーザーに簡単なガイドをしてくれる場合もあるという(上記の表では「応相談」として表記)。
サービスメニューが豊富な家電量販店
大手キャリアのようなサポートを受けたい。そんな人の受け皿となりそうなのは、家電量販店だ。格安SIMの専用カウンターを設けるビックカメラやヨドバシカメラを筆頭に、家電量販店の多くは、有料ではあるがサポートメニューを用意する。

例えば、「APN」の設定やGmail設定はすべての家電量販店が実施する。ビックカメラは、自社ブランドSIM「BIC SIM」の受け付けカウンターではアドレス帳の移行は行っていないが、池袋本店や新宿東口店、有楽町店などいくつかの店舗では、「らくらくスマホサポート」というサービスメニューを用意し、アドレス帳の移行にも対応している。
家電量販店ではないが、ビデオレンタルチェーン「ゲオ」のモバイル専門店「ゲオモバイル」はOCNモバイルONEとUQ mobileを扱っており、有料のサポートメニューを用意している。
格安SIM購入時の初期設定をすべて任せたいという人は、現状は、家電量販店やゲオモバイルなどを利用するのがベストといえそうだ。
なお、家電量販店、直営店ともに、不具合があった場合の修理受け付けなどは基本的に行っていない。不具合があった場合は、「相談には乗るが、最終的には端末メーカーやMVNOにつなぐことになる」(某家電量販店)。アフターサービスについては、大手キャリアと同様の対応は期待できないと理解しておきたい。
「訪問サービス」が増加中
自社店舗でのサポートに代わるものとして、「訪問サービス」を用意するMVNOが増えている。イオンモバイルも、出張サポートを提供の予定だ。
ユーザーの自宅に出向いて各種設定サービスを行うぶん、家電量販店と比べても料金は高めだが、わからない部分をしっかり確認しながら設定してもらえる点はメリット。スマホに不慣れな人や、離れて暮らす親などシニア世代のために購入する場合の使い勝手は良さそうだ。
◆料金/訪問基本料金5400円+設定料金3240円
◆主なメニュー
・SIMカード挿入またはデータカード1台の取り付けおよび接続設定
・OCN モバイル ONE接続設定
◆料金/訪問基本料金6500円+作業料金1400円~
◆主なメニュー
・スマートフォンやタブレット端末の各種登録や設定、操作方法の案内
◆料金/月額(24カ月)480円+初回無料、再訪問時60分6500円
◆主なメニュー
・端末の開梱、SIMの差し込み、通信の確認
・Googleアカウント取得・設定
◆料金/訪問基本料金5000円+トラブル診断料金3000円+作業料金
◆主なメニュー
・スマートフォン基本設定(5000円)
・メール設定(3000円)
◆料金/11000円
◆主なメニュー
・アドレス帳や写真移行
・端末の基本的な操作方法やアプリのダウンロード方法など簡易的なレクチャー
◆料金/6500円~
◆主なメニュー
・データ通信を利用可能にする設定や、メール設定などの初期設定
(日経トレンディ 羽田健治)
[日経トレンディネット 2016年3月31日付の記事を再構成]