「あっせんなよ!」 苦悩経て頂点に、新日本・内藤

2016/5/1

プ女子によるプロレス観戦術

新日本プロレスリング、内藤哲也選手の必殺技「デスティーノ」をモチーフに。
新日本プロレスリング、内藤哲也選手の必殺技「デスティーノ」をモチーフに。

4月10日、新日本プロレスリング両国国技館大会でオカダ・カズチカ選手を下し、内藤哲也(ないとう・てつや)選手がついにIWGPヘビー級王者になりました。この日巻き起こった大・内藤コールはファンの記憶に刻まれる特別なものでした。

「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン(制御不能なやつら)」というユニットで反則・介入・なんでもありの自由気ままな闘いを繰り広げている内藤選手。昨年半ばのメキシコ遠征で身に付けたスタイルは、帰国当初こそブーイングを受けていたものの序々にファンの心をつかみグッズも売り切れ続出に。今はどこの会場でもユニットのロゴを配した黒いTシャツとキャップ姿の観客であふれています。

今まで何度も両国国技館でプロレスを観戦してきましたが、この日の客席はなにか普段と違う異様なテンションの高さが感じられました。サッカーやほかのスポーツのようにサポーターが試合前から仲間と気分を高めあっている雰囲気に近いといえばよいのでしょうか。

ふてぶてしい表情でリングに上がる内藤哲也選手(以下、写真はすべて苅谷直政)。
オカダ・カズチカ選手(左)と激しくエルボーを打ち合う。

試合後もそうでした。入場口の外で興奮冷めやらぬファンの集団が内藤選手のマイクアピール「ロス・インゴベルナブレ~ス・デ!ハ!ポン!」(ユニット名を叫ぶ)を大合唱する姿がありました。そんな光景はプロレスファンになって一度も見たことがありません。

この半年で一気に加速した「内藤推し」ムードはプロレスファンの間でもいろいろと解釈されています。90年代に一世を風靡したユニット「nWo」との類似説、人気が回復し安定期に入った新日本マットのマンネリ打破への欲求が現代日本の閉塞感と共通するなんとかかんとか……。私はそれらをひっくるめたもっと普遍的で、それでいてごくわかりやすい理由が思い浮かびます。ずばり、「男子のハートに刺さった」。これではないでしょうか。

「中学生に『かっこいい! 自分もああなりたい』と思わせる、ロックスターはそれが重要」。ジャンルは違うものの、あるWEB記事の一文を思い出して腑(ふ)に落ちました。