マネー研究所

もうかる家計のつくり方

思わぬ大金で狂った家計 老後破産へまっしぐら 家計再生コンサルタント 横山光昭

2016/5/4

「この先、どうやって暮らしていくつもりだったんですか」。Gさん(49)の家計簿を見て、思わず声を荒らげてしまいました。もともとGさんは「いい生命保険を教えてほしい」と相談に来たのですが、家計の状況を確認したところ、あまりにひどい内容だったからです。

聞けば、8年前にご主人を亡くし、死亡保険金などで3200万円ほどのお金が入ったそうです。子ども2人と暮らしてきましたが、1年ほど前までは働かず、遺族年金と保険金で生活していました。

しかし8年が経過し、保険金をほぼ全て使い切ったというのです。このままではいけないと積立貯蓄を始めたものの、働いていないのでキャッシングしないと積立金が出せず、やめたそうです。そのほか、ギリギリの家計にもかかわらず高級布団を割賦で購入。これらの返済が家計を圧迫しています。

長女(24)はフリーターで毎月6万円を家計に入れてくれますが、長男(23)は引きこもり気味で仕事を一切していません。

現在の収入は長女のお金とGさんのアルバイト代8万6000円、遺族年金の8万3000円ですが、親子3人分の生活費には不足するため、70歳を超えている年金暮らしの母親に毎月5万円もの援助をしてもらっているのだそうです。

現在は貯蓄もほとんどありません。年金がもらえる65歳になるまであと16年弱。何とか自立しないといけませんし、このままでは老後資金はゼロで確実に老後破綻します。今は生命保険よりも家計を再生することが先決です。

3200万円もの保険金を8年で使い切ったということは、単純に考えても1年で400万円、毎月にすると33万円使っていた計算です。遺族年金も8万円ほどもらえていたので、1カ月の生活費が41万円ほどかかっていた計算になります。現状は30万円弱なので、危機を感じてからは支出削減を頑張ったのでしょう。それでも、毎月1万円ほど赤字です。

「主人が亡くなったときは生活が不安でしたが、保険金と遺族年金で働かなくても暮らせると思いました」とGさん。住宅ローンも団体信用生命保険によってなくなったため、お金について楽観的だったそうです。

今になってGさんは過去のお金遣いについて悔やんでいますが、終わってしまったことは仕方がありません。これから先がうまくいくようにGさんと共に支出削減策を練りました。

まず、食費は大人3人で8万円はかかりすぎです。親子で外食や総菜の購入を減らすようにし、1週間の買い物の回数を多くても3回までと決めました。水道光熱費は3人とも使いっぱなしだったため、つけたら消す、出したら止めるを実践することで2割ほど削減できました。通信は格安スマホへの変更、娯楽費も書籍の購入を吟味することで支出が減りました。

支出が最もかさんでいたのはGさんの美容にかかるお金。若々しさを保つサプリメントや、成分にこだわった化粧水などで支出が膨らんでいます。女性として大事な部分なのでしょうが、ここは優先順位をつけ、納得しながら削減しなくてはいけません。

「続けたいけれど、効果を問われると……わからない」とGさん。それでサプリメントも化粧品も少しずつ支出を抑えることができました。また、本来希望していた生命保険については、子どもの医療保険に加入したことから、少し支出が増えましたが、ここまでで合計4万9000円も削減できました。

家計改善に取り組む中で、収入を今よりも増やし、母親からの援助はもらわないことに決めました。収入不足は、いわば労働不足ともいえます。

Gさんが毎日働ける仕事を探そうと動き出したところで、今のアルバイト先から1日8時間働くパートに職種転換しないかという声がかかりました。労働時間や賃金が増えたことで社会保険に加入でき、国民健康保険料の支払いが不要になりました。しかも給与が手取りで14万6000円ほどもらえるようになり、母親からの援助がなくても暮らせるようになりました。

高級布団のローンも終わり、相談当初より支出は6万5000円減、収入は1万円増えた家計になりました。毎月6万5000円ほどを残していける家計になり、安定することができたのです。

人はまとまったお金を手にすると、働くことが嫌になったり、浪費したりしてしまうことがよくあります。思いがけず保険金を得たからといって、将来にわたって安心などできるはずはなく、生活を見直すことを最優先すべきでした。大きな変化があった時こそ、後悔することがないように考えたいものです。

「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は5月18日付の予定です。
横山光昭(よこやま・みつあき) マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで8000人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「年収200万円からの貯金生活宣言」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめとする著書は累計99万部。近著は「『おひとり』を不安0で生き抜く女子貯金」(祥伝社)。

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