おしゃれ餃子のバルがいまブームの理由

日経トレンディネット

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「タイガー餃子会舘」「肉汁餃子製作所 ダンダダン酒場」など、餃子を売りにしたチェーン居酒屋が店舗数を伸ばすなか、餃子(ギョーザ)をつまみにワインを飲ませる“餃子のバル”も、急増している。

餃子のバルでブームのはしりともいえるのが、2009年に渋谷にオープンした「立吉餃子」。13坪の狭小店舗ながら平均月商約500万円という繁盛ぶりで、2016年3月24日には2店舗目となる「立吉餃子 青山店」をオープンした。

2016年3月24日にオープンした「立吉餃子 青山店」(東京都渋谷区神宮前5-50-1 三恵青山ビル地下1階)は地下鉄表参道駅から徒歩3分
営業時間は11時半~15時、18時~24時(不定休)。席数は36(立ち席あり)

ほとんどの客が最初にオーダーするという人気メニュー「晩酌セット」(850円)は3種類。写真は餃子3個と(焼・水・揚から選択可能。写真は水餃子)ごま塩キャベツ、アルコールワンドリンクを組み合わせたBセット

その立吉餃子 青山店から徒歩数分のところにあるのが、「ギョウザバー コムアパリ(Gyoza Bar comme a Paris)」。ミシュランガイドで星を獲得したシェフ・鳴神正量氏がパリで人気の餃子バーにインスパイアされ、2015年8月末にオープンした。「平日もほぼ満席。週末はオープンと同時に満席になる日も多い」(平林彩菜店長)という。

競争が激化し、早々に閉店する店も出てきているなか、繁盛する餃子のバルのポイントは何なのか。好調な2店を取材した。

2015年8月にオープンした「ギョウザバー コムアパリ」(東京都渋谷区渋谷2-2-4 青山アルコープ205)。地下鉄表参道駅から徒歩10分(青山学院大学西門正面)
営業時間は17~25時ラストオーダー(日曜定休)。席数は25

一番人気という「肉ギョウザ」(5個で550円)。全ての餃子に3種類のオリジナルソースが付いている

ガッツリ系が女性に受けている

立吉餃子を運営しているのは、熟成肉の炭火焼専門店「旬熟成」などを展開するフードイズム(東京都港区)。2016年3月末にオープンしたばかりの青山店はブルーを基調とした女性好みの洗練されたインテリアだ。だが、出て来た餃子を見て驚いた。女子受けしそうなアレンジを予想していたのだが、通常の2倍くらいのビッグサイズ。

「立吉餃子」(5個で540円)。皮は特注で、直径10.5cmと大きく、厚め。あんは45g入っていて、これは一般的な餃子の1.5倍~2倍近いボリュームだという
変わり餃子で人気が高いのが「ぷりぷり芝海老餃子」(3個で500円)。1個にシバエビが3尾入っていて、「エビを食べている!」と実感できる

まずは、焼き餃子から味わってみた。厚めの皮を時間をかけてしっかり焼き込んであるせいか、表面がパリパリで香ばしい。かみしめるとモッチリした食感があり、あんから肉汁があふれてくる。コラーゲンの多い山形県産豚のウデ肉とカシラ肉、豚脂、国産野菜を使い、肉のうまみを引き出すネギ油、特製のタレを加えているそうだ。水餃子(3個で380円)にたっぷりかけられたオリジナルの黒酢ダレは酸味を抑えているが、花椒のパンチが効いている。やみつきになりそうな味だった。

女性に人気の「ワインセット」(850円)はバジルと大葉のサラダ餃子1個を含む前菜のプレート、ワイン(3種類から選択)のセット

ただこうした餃子が食べたいなら、なにも餃子のバルでなくてもよさそうな気がする。聞けば「餃子単品だけを食べてさっと帰る、女性の一人客も多い」(佐藤真是店長)とのこと。「餃子は食べたいが、ラーメン店で餃子だけは頼みにくい」「中華料理店に一人では入りにくい」という女性に歓迎されているのだろう。

常連が必ず頼むという人気メニュー「豪快!肉豆腐」(590円)はタレを真っ黒になるまで染み込ませた豆腐。トロトロになるまで煮込んだタマネギ、豚肉、ネギを添えている
ドリンクメニューには、2万円のドンペリやモエ・シャンドンなどの高級シャンパンもある。夜遅くなり盛り上がると注文する人もいるそうだ

パリで人気の餃子バーを、フレンチのシェフが逆輸入

ギョウザバー コムアパリはフレンチレストラン「鳴神」のオーナーシェフの鳴神正量氏がプロデュース。鳴神シェフが同店を思いついたきっかけは、パリに視察に訪れた際、パリの2つ星レストラン「Passage53」の佐藤伸一シェフが手掛けている餃子バーが現地の人々の人気を集めているのを目の当たりにしたこと。

「日本のフードカルチャーだと思っていた餃子をフランス人が楽しんでいる姿にショックを受けた。フレンチには素材を包む調理法が多い。餃子にフレンチの要素を加えて自分流にアレンジし、ワインで餃子を楽しむスタイルを日本に逆輸入したいと考えた」(鳴神シェフ)

「オニオンスープグラタンギョウザ」(920円)。まずオニオンスープを食べ、次に餃子を食べ、最後に両者をミックスさせてと3段階で楽しめた。ボリュームもあり、これひとつでかなり長時間楽しめそう
女性に人気の「パクチーのせギョウザ」(680円)

フレンチの調理法を取り入れて考案したというオリジナル餃子を食べてみた。ワインやカクテルと一緒にオードブル感覚で食べられるようにと、サイズはやや小ぶり。卓上にはしょうゆや酢も用意されているが、味わいの異なる3種類のソース(「トマトソース」「ハーブソース」「黒ラー油ソース」)がついてくる。

餃子以外のメニューも充実。「肉シュウマイ トリュフソース」(3個で680円)などフレンチ風にアレンジしたアラカルト料理も人気

餃子そのものはオーソドックスだが、ソースで印象が変わり、食べ飽きない。トマトソースはかなりスパイスが効いていて、パンチのある味わい。ハーブソースはクリーミーで爽やかな酸味、隠し味に白味噌を使っているそうだが、これが一番ワインによく合うと感じた。黒ラー油ソースはオーソドックスなピリ辛風味。

繁盛のキーワードは“女性がまったり長居できる隠れ家”

立吉が「男餃子」だとすると、ギョウザバー コムアパリのほうは「女餃子」という印象。個性は異なるが、共通している点も多い。

ひとつは女性客の割合が非常に高く、女性一色という日も珍しくないということ。そしてグループで長時間滞在し、語り合う女性客が多いことだ。「女性客はワインを飲みながらまったり話し込み、長時間滞在する人が多い。そのためグラスが空になってもすぐに下げないようにしている」(立吉餃子の佐藤店長)という。

また、「4時間くらい滞在される方も多いので、混んでいるときは申し訳ないが、3時間の時間制限をお願いする場合もある」(ギョウザバー コムアパリの平林店長)。時間制限といえば2時間が相場だが「回転率を上げるために2時間制にした時期もあったが、当店は回転率が悪くても長めに(お客様を)確保できるほうが向いていた」(平林店長)とのこと。一般的な餃子専門店だと、食べ終わるとすぐに出なければいけない雰囲気があるのに対し、長居しても許される雰囲気も女性に人気なのだろう。

目立たない路地裏にひっそりとある小さな店という隠れ家感も共通している。「ほとんどのお客様が料理などを撮影してSNSに投稿している」(平林店長)そうで、“青山の隠れ家風餃子のバル”という特徴がSNS向きである点も人気の要因といえそう。「女性1人でも入りやすい雰囲気のなか、餃子というカジュアルなフードとワインを気軽に楽しめる点も喜んでいただけているのでは」(鳴神シェフ)

(ライター 桑原恵美子)

[日経トレンディネット 2016年4月22日付の記事を再構成]

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