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体感!オリパラLIFE

立ち乗りEV、湾岸でそろり発進オリパラ契機に規制緩和期待

2016/5/11

体感!オリパラLIFE

立ち乗り電動二輪車「ウィングレット」で公道を走る実証実験を始めた。
立ち乗り電動二輪車「ウィングレット」で公道を走る実証実験を始めた。
東京都とトヨタ自動車が臨海副都心の公道を立ち乗り電動二輪車「ウィングレット」で走行できる無料の「乗車体験会」を4月下旬に始めた。2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会に向けて、体験会に参加した都民らの声に耳を傾けながら安全性を確認し、お台場周辺で本格導入したい考えだ。現行法制に合致しない部分もある近未来モビリティーは普及にはずみをつけられるのか。体験会の現場に足を運んだ。

■体重移動でスイスイ移動

「ここは段差がありますから注意してください」。ヘルメットを装着した先導役のインストラクターは安全第一を徹底していた。一般の参加者を募ったうえでウィングレットを都内の公道で走らせるのは初めてだからだ。4台が1列になって、りんかい線東京テレポート駅前を出発。商業施設「ヴィーナスフォート」を横切り、トヨタのショールーム「メガウェブ」まで一気に走り抜けた。

運転は思ったより簡単だった。片足を乗せて手元に伸びるバーを少し前方に倒すと、自動制御の機能が作動するため、両足を乗せた後も倒れることはない。あとはハンドルを握ったまま、進みたい方向に体重を移動させるだけで、自由に動き回れる。

リチウムイオン電池で動く電気自動車(EV)であるため、音は静かで、移動はスムーズだ。慣れれば体の一部になったような感覚も味わえた。ただ、スピードを上げすぎると、「調子に乗るな」と言わんばかりに警告音と振動で戒められた。最高速度は小走り程度の時速6キロだ。

「スピードが出すぎることはないので、歩道を走行していても安全だと感じた。何よりも外を走るのは、気持ちいいね」。都内に住む自営業の小野口健一さんは乗車体験会に参加して、満面の笑みを浮かべる。3月に公道での実証実験が始まり、一般の参加者を集めた乗車体験会も4月にスタートすると知り、この機会を心待ちにしていたという。「実用化されて、乗る人が増えるのが楽しみ」と期待も膨らむ。

■大会での自由な利用を期待

体重移動によって行き先などを操作する。

今回の臨海副都心での乗車体験会について、東京都は明確にオリパラ東京大会を意識している。東京湾を臨むこの地域一帯が五輪の競技施設や国際放送センターなどの集積地になるためだ。「大会が開催されるころには、自由に乗り回せるようにしたい」(東京都港湾局の小関浩志担当課長)との夢を持つ。2020年に向けて注目を集める機会を増やす狙いだ。

実は、公道を走行する実証実験を東京都に呼びかけたのはトヨタの方だった。昨年7月に道路運送車両法の施行規則などが改正され、米セグウェイ社の「セグウェイ」などを含む立ち乗り電動二輪車の公道での走行実験が全国で実施できるようになった。それまでは構造改革特区に指定された茨城県つくば市や愛知県豊田市などに限定されていた。誘導員を配置するなどの安全対策を講じれば、特区以外での実験もようやく可能になった。

両市で実験を重ねた実績を踏まえ、トヨタはオリパラ東京大会開催を控える東京臨海副都心に次の狙いを定めた。特に台場・青海地区は都内有数の観光スポットだけに「公道を走れば、認知度も高まる」(パートナーロボット部モビリティプロジェクトの遠藤勝久モビリティグループ主幹)との読みもある。

■市民の理解めざし実証実験

そして、買い物客らが行き交う東京の観光地のにぎわいの中で、近未来モビリティーがどんな位置付けになるのか。これが最大の焦点だ。実証実験には「歩行空間を走行した場合に、どのように歩行者と共存できるのかを検証する」(遠藤主幹)目的がある。現行法制では、海外のように自由に移動することはできない。決まったルートを先導役を付けて走行するレベルにとどまっている。観光目的だけでなく、身体障害者や高齢者のサポートなど近距離モビリティーの可能性は広がる。今回はその第一歩なのかもしれない。

乗車体験会に参加した会社員の小宮真奈美さんは「時間帯によっては、商業施設の前は非常に混雑する。そこをウィングレットで通行するときは何らかのルール作りが必要になるのでは」と話す。都とトヨタは今後も警察庁などと調整しながら、実証実験の一環として乗車体験会を毎月1回(日程は2日間の予定)のペースで開く方針だ。乗車の体験者を増やしながら、ウィングレットは2020年までに、この街の風景に溶け込んでいくのか。体験会の現場からは、都市とモビリティーをめぐる未来のライフスタイルを模索する動きを感じた。

(山根昭)