キーボード型パソコンを検証 意外に実用的
PCパーツや周辺機器を取り扱っているテックウインドから、「キーボードPC WP004」が発売された。その名の通りキーボードの中にパソコンの機能をつめこんだ製品で、テレビやディスプレーと接続するだけで使える。白と黒のカラバリがあり、実売価格は1万9800円と激安。果たして、実用に耐えうるのだろうか。実機で検証した。
軽くてコンパクト、拡張性もそこそこ
キーボードPCは見た目はキーボードだが、パソコンとしての機能、つまりCPUやメモリー、拡張端子などを内蔵している。それでも大きさは幅287mm×奥行き125mm×高さ26.5mmで一般的なキーボードと変わらないし、重さも約288gと軽い。HDMIケーブルや付属のACアダプターと一緒に出張に持ち出して、ホテルのテレビに接続して使う、といったこともできそうだ。
テレビに接続する小型パソコンといえば、HDMI端子に直接取り付けるスティック型PCが一時期話題になった。キーボードPCはそこまで小さいわけではないが、拡張性の高さが強みだろう。背面には2つのUSB2.0端子やHDMI出力、有線LAN端子などが並んでいる。スティックPCだと拡張端子はUSB端子が1つだけといった製品が多い。
拡張端子の中でも面白いのはアナログRGB出力があること。これを使えば、HDMI入力のない、ちょっと古いパソコン用ディスプレーにも接続して使える。
microSDカードスロットもあるので、32GBしかない内蔵ストレージの容量が不足してきたら、microSDカードを取り付けてデータの保存に使える。
ただし、バッテリーは内蔵してないので、付属のACアダプターがなければ使えない。
最初はHDMIケーブルで接続するのは面倒だし、ケーブルが邪魔になるのではと思っていたが、実際にやってみるとそうでもなかった。キーボードPCとテレビやディスプレーが離れているとケーブルが邪魔になるかもしれないが、机の上にテレビやディスプレーがあるという場合はまったく気にならなかった。
タッチパッドも付いている
キーボードとしての使い勝手を見ていこう。
キーボードは76キーでテンキーはない。WindowsパソコンなのにWindowsキーがないのが気になったが、多くの人はあまり使っていないと思うので問題はないだろう。ちなみにWindowsキーを押すと表示されるスタートメニューは、Fnキーとの組み合わせで表示できる。
キータッチはやや軽めだが、押し込んだときのクリック感はやや重い。タブレット用に販売されているコンパクトなモバイルキーボードのような感触だ。キーがぐらついたり、底に強く当たって指先が痛くなるようなことはなく、打ちやすかった。
面白いのは、タッチパッドがスペースキーの横にあることだ。面積こそ小さいが、2本指で触れてスクロール操作をしたり、タップして選択したりといった、普通のタッチパッドとほぼ同じことができる。マウスがなくても使えるのは評価できるポイントだ。
注意したいのはクリックボタンがないこと。実はスペースキーの左側のキーに左クリックと右クリックの機能が割り当てられていて、Fnキーとの同時押しで操作する仕組みになっている。
また、解像度の高いディスプレーを使う場合は操作が煩雑になる。というのも、タッチパッドの面積が小さいのでマウスポインターを移動させるのに頻繁に指を戻して何度もなぞることになるからだ。高解像度のディスプレーと組み合わせる場合は、外付けマウスを用意したほうがいい。Bluetooth(ブルートゥース)を内蔵しているのでBluetooth対応の無線マウスも使える。
実用性は予想以上に高い
パソコンとしてのスペックだが、CPUはAtom Z3735Fで、メモリーは2GB、ストレージは32GBのeMMC(フラッシュメモリー)となっている。OSはWindows 10 Home(32ビット版)だ。これは少し前に流行った8型クラスのWindowsタブレットやスティックPCとほぼ同じで、それがキーボードに内蔵されていると考えると分かりやすい。
スペックは低いので、ブラウザーゲームで遊ぶ、YouTubeなどネット動画を視聴する、Webサイトやメールを利用するといったライトな使い方に向いている。動画編集や画像編集には向いていない。
今回、キーボードPCを使ってみて分かったのは、余ったディスプレーの再利用に重宝するということ。サブマシンや子ども用のパソコンが欲しい場合には打ってつけだ。ビジネス用途でも、デジタルサイネージや受け付け用のパソコンなどで使えるだろう。最初見たときはかなり特殊なパソコンに思えたが、使ってみると案外使いやすく使い道の広い、実用的な製品と感じた。
(IT・家電ジャーナリスト 湯浅英夫)
[日経トレンディネット 2016年4月7日付の記事を再構成]
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