知っておきたい災害支援制度 住宅ローンの一部減免も

数多くの家屋が倒壊した益城町寺迫地区(熊本県)
数多くの家屋が倒壊した益城町寺迫地区(熊本県)
熊本、大分県で相次ぐ地震が甚大な被害をもたらし、多くの人が避難生活を強いられている。災害の際に被災者の生活を支え、再建の第一歩となるのが様々な支援制度だ。被災地域以外の人もいざというときに活用できるよう頭に入れておこう。

被災でまず必要になるのが当面のお金。大きな災害の際には被災地域が災害救助法の対象に指定され、金融庁が金融機関などに対し、預金払い戻しに柔軟に応じるよう要請する。預金者は通帳やキャッシュカードがなくても、本人確認ができれば原則お金を引き出せるようになる。

熊本地震でも金融庁はすでに各金融機関に対応を要請。熊本銀行が通帳なしでの払い戻しに応じるなど対応が広がっている。ファイナンシャルプランナー(FP)の清水香氏は「こうした事態に備え、本人確認ができる免許証やパスポートなど顔写真入り証明書を被災時に携帯できるようにしておこう」と助言する。

被災した場合は多くの公的支援策があるが、ほとんどは申請が必要。知らないと使えないままになってしまう。公的支援策をまとめて見るには、内閣府が作成している「被災者支援に関する各種制度の概要」が便利だ。50ページ弱で、ネットの検索サイトで題名を入力すれば内閣府のホームページで閲覧できる。

当面必要な生活資金を得られるのが「災害援護資金」という制度。世帯主の負傷や住宅の全半壊などの場合、一定の所得制限はあるが最大350万円の融資を受けられる。

最大500万円給付

「災害弔慰金」は生計維持者が亡くなった場合、自治体に申請すれば最大500万円を給付される。重い障害を負った場合などは、かなり認定条件は厳しいものの「災害障害見舞金」の対象。生計維持者なら上限250万円だ。

生命保険や損害保険に関して証書の紛失や契約者の死亡などで、どんな保険をかけていたのかわからなくなることもある。生命保険協会と日本損害保険協会は、災害救助法適用地域の個人契約者を対象に「保険契約照会センター」を設置している。契約の有無や契約先の保険会社がどこかなどを調べてくれる。

暮らしを立て直すのに重要なのが住宅の再建だ。「被災者生活再建支援制度」は阪神大震災を契機に作られた。住宅の被害状況や再建方法に応じて、最大で300万円が給付される。ただしこの金額では住宅を建て直すのは無理。「住宅に関する公的給付は大きくない。自分で地震保険などで備えるのが重要」と清水氏は助言する。

住宅金融支援機構の「災害復興住宅融資」では、返済期間最長35年の低利の固定金利で融資が受けられる。4月25日時点での金利は基本融資額に関し年0.47%だ。

ローン返済中に被災して新たに住宅を買いたい場合、二重ローンが壁になりやすい。既存のローンの支払いについて個別に金融機関と交渉する手はあるが、うまくいかないことも多い。ローンが資産を大幅に上回れば、自己破産を余儀なくされかねない。

知っておきたいのが、全国銀行協会が事務局になってまとめた「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」だ。4月から運用が始まったばかりで、条件をみたせば債務が減免される。

対象は昨年9月2日以降に災害救助法の適用を受けた自然災害の被災者で住宅ローンなどが支払い不能になる人。生活再建に必要な現預金を手元に確保し、残りでローンの一部を返す。返済しきれない残りのローンは減免される。

過去の返済歴考慮

一般の金融機関だけでなく、住宅金融支援機構の「フラット35」も対象。手元に残せる現預金は家族構成や被災状況などで個別に判断するが最大500万円が目安とみられる。例えばローン残高が3000万円、現預金が1200万円の人がいたとする。現預金500万円を残せる場合、700万円を返済し、残りの2300万円は減免となる。

小野総合法律事務所の庄司克也弁護士は「通常、支払い不能になり自己破産する場合、現預金は最大99万円しか残せない。現預金を多く残せるのは大きな利点」と話す。このほか(1)無料で弁護士や税理士などの支援を受けられる(2)債務の減免を受けても個人信用情報に登録されない(3)債務の免除益に課税されない――などのメリットがある。

「金融機関も透明性の高い手続きで迅速に債務整理ができる」と庄司氏は指摘する。このため「条件を満たせば、多くの金融機関は前向きに検討するとみられる」(全銀協)。ただし過去に返済の滞りがないかなどが考慮される。年収がかなり高ければ対象外になることもある。

東日本大震災後も同震災の被災に絞った類似の仕組みが作られた。ただ制度があまり知られなかったこともあり適用は1400件弱にとどまった。全銀協は「今回は早期の周知を目指す」としている。(編集委員 田村正之)

■損害額に応じて課税所得は控除
被災時の税の軽減措置には、損害額に応じて課税所得が控除される雑損控除と、災害減免法に定めた条件で税額そのものを減免する制度の2つがある。雑損控除は原則的に所得の条件がなく、災害に限らず盗難・横領による被害も認められる。災害減免法は所得が1000万円以下の被災者を対象に、自宅や家財など資産の半分以上が損害を受けたときに適用できる。
所得が1000万円以下なら有利な方を選べる。損害・所得額によるので税理士などに相談しよう。災害減免法は1年限りの減免だが、雑損控除は引き切れなかった分は3年間繰り越せるので、損害額が大きければ雑損控除が有利な場合も多い。

[日本経済新聞朝刊2016年4月27日付]

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