ジュニアNISAのキホン 運用は長期前提に

未成年が対象の少額投資非課税制度(ジュニアNISA)口座で、4月から株式や投資信託を運用できるようになった。売却益や配当・分配金が非課税となるため、一家の資産づくりの手段として活用が広がりそうだ。ただ、これを機に投資を始める未経験者にとっては、どのように使えばいいのか頭を悩ます場面も多いかもしれない。制度の注意点や相性が良さそうな運用商品を探ってみた。

「自分に合った投資スタイルを探しましょう。長期投資では配当や株主優待にも注目してはどうでしょうか」

SBI証券がジュニアNISA開始に合わせ、3月下旬に東京都内で開いた子供向け投資教育イベント。講師が運用期間に応じた投資手法や制度の概要を説明すると、親子連れら約20人が熱心に聞き入っていた。参加した保護者からは「子供に(投資が)身近に感じられて良かった」との感想が聞かれた。

「安定」などカギに

ジュニアNISAは2014年に創設されたNISAの未成年版だ。年間80万円の投資額を上限に、株式や投信の売却益や配当・分配金が5年間にわたって非課税となる。実際の運用・管理は両親などが担う。NISAの上限額は年間120万円なので、両親と未成年の子供2人の家族の場合で、非課税枠は合わせて同400万円になる。通常の証券口座の取引では約20%の税金が掛かるため、恩恵は小さくない。

口座を開いて投資を始める際に注意が必要なのは、売却益などの払い出しに制限が付けられている点。3月末時点で18歳である年の1月以降は払い出せるが、それより前に払い出す場合は過去分を含む全ての利益に課税される。例えば、生まれた直後の子供のためにジュニアNISAを使うと、18年間はお金を原則払い出せないわけだ。

仕組み上は運用商品を短期で売買することも可能だが、基本的には運用期間の「長さ」を前提にした商品選びが重要になる。実際、証券・運用会社や専門家に聞いたところ、中長期保有を見据えて「安定」や「低コスト」をキーワードにした投信を推奨する意見が目立った。具体的にはバランス型やインデックス型などだ。

バランス型は国内外の株式や債券、不動産投信(REIT)など様々な資産を組み入れる投信だ。大半は資産の構成比率の目安を固定し、それに合わせた調整で安定的な運用を狙う。運用成績の大きな上昇を相対的に見込みにくいものの、その分だけリスクを抑えやすい利点がある。最近では市場環境に応じて構成比率を変動させる投信の人気も高まっている。

バランス型の大型投信の一つとして知られるのが日興アセットマネジメントの「財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)」だ。資産構成比率は債券が50%、株式とREITなどが25%ずつをメドに運用している。人気が高いのは分配が毎月あるタイプだが、分配が年1回のタイプの方がジュニアNISAでの運用効率は上げやすい。

日本ではなじみが薄いが、同じように分散投資しつつ、目標とする時期を事前に決めて資産配分を変えるターゲットデート型と呼ばれる投信もある。運用開始から数年は株式の比率を高めて積極運用し、その後は債券中心の保守的運用に切り替えて目標の成績を目指す仕組みだ。通常のバランス型より運用成績がぶれにくいとされる。

野村アセットマネジメントはジュニアNISAでの取引が可能になった1日、「野村ターゲットデートファンド2016」の運用を始めた。目標時期は26~28年から35~37年まで3年間ごとに4種類を用意した。投資家はライフプランに応じてタイプを選択できる。

指数連動型も魅力

ターゲットデート型は世界最大の投信市場である米国で普及している。米国はジュニアNISAと似た529プランと呼ばれる優遇税制を持つが、「ほとんどの利用者は投信に投資し、中でもターゲットデート型の人気は非常に高い」(三菱UFJ国際投信の松尾健治氏)という。現在日本で取り扱うのは一部の運用会社にとどまるが、ジュニアNISAを機に広がる可能性もある。

低コストの代表格に挙げられるのが、日経平均株価など指数に連動した値動きを目指すインデックス型投信だ。積極運用するアクティブ型と違い、ファンドマネジャーによる銘柄調査などの費用が不要な分、手数料が割安に設定された商品が多い。投信評価会社の三菱アセット・ブレインズの斎藤恒彦氏は「マイナス金利で全体的な期待収益が下がるなか、手数料の安さの重要性は高まる」とみる。

個別商品に加え、長期投資に適した運用手法を推す声も多い。同じ商品を定期的に一定額ずつ買う「積立投資」だ。投信の価格が高い局面で少なく、安い局面では多く買うことになり、平均購入価格を低く抑えられる。子供を持つ30~40代は運用に充てられる資金が豊富でないかもしれないが、積み立てでは少額をコツコツ投資できる。

もっとも、投信などの運用が相場環境に左右されると、必ずしも満足できる資金づくりができるとは限らない。一方で子供の進学などライフイベントは待ったなしだ。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「ジュニアNISAだけで資産形成するのではなく、預貯金や学資保険と組み合わせるなど、手段の一つとして活用することが大切だ」と話している。(増野光俊)

[日本経済新聞朝刊2016年4月27日付]

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