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マイナス金利で注目 個人も得するヘッジファンド入門

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2016/6/16

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相場の波乱を招く主犯として、ネガティブな印象が付きまとうヘッジファンド。それがマイナス金利政策に伴う運用難から、投資対象として改めて脚光を浴びている。個人投資家が購入できるヘッジファンド型投資信託も登場。若手記者の迷コンビが実情を取材する(注:2人のキャラクターはフィクションです)。

2016年4月6日の朝。『日経マネー』の編集部に、若手記者のエースである入社5年目の金平が出社すると、後輩記者のマネ美がその姿を見つけて駆け寄ってきた。

マネ美  入社2年目。好奇心旺盛だが、空回りして失敗するのが玉に傷

マネ美 金平さん、日経電子版の記事を読みました? 5日の欧米市場で円相場が一時、1ドル=109円台に突入しましたよ!

金平 読んだよ。日本の輸出企業の業績悪化懸念が深まり、今日の株式相場は一段と下げそうだ。

マネ美 海外のヘッジファンドが大規模な円買い・ドル売り注文を入れたのが、円急騰の発端になったようです。年初からの波乱相場も、ヘッジファンドによるHFT(高頻度取引)が主犯という説もありますし、個人投資家は苦々しい思いを抱いているでしょうね。

金平 そうとばかりも言えないぞ。和製ヘッジファンド、GCIアセット・マネジメントのファウンダーCEO(最高経営責任者)の山内英貴さんから聞いたんだが、個人投資家向けのヘッジファンド型投資信託が注目されているんだ。

マネ美 個人投資家も投資できるんですか! 年金基金などの機関投資家だけだと思っていました。

金平 入社5年目の若手。教育係として、辛抱強くマネ美を指導する

金平 おいおい、投信のレビュー記事を担当しているんだから、しっかりしてくれよ。そうだな、一緒に取材してみるか。

マネ美 はい、頑張ります!

■米国の純資産総額は17兆円

2人がまず訪れたのは、株や投信の評価を手掛ける金融情報サービス会社のモーニングスター。プロダクト開発本部ファンド分析部の守谷清貴さんに話を聞いた。

金平 ヘッジファンド型の投信があると聞いたんですが。

守谷 そうですね。米国では「リキッド・オルタナティブファンド(流動性のある代替投資信託)」と呼ばれて、非常に人気があります。純資産の総額は2014年から1500億ドル(約16兆5000億円)を超えています。一方、日本ではまだ約5000億円にとどまっています。

マネ美 なぜリキッド・オルタナティブという名称なんですか。

守谷 ヘッジファンドには解約制限があって好きな時に換金できないのですが、投信の場合は日次ベースで換金できるようにする必要があります。そうした流動性を備えているので、リキッドを組み合わせた名称にしたのでしょう。ヘッジファンドのイメージが米国でもよくないので、ヘッジファンドを前面に出さない名称にしたという事情もあると思います。

■ラップ口座向けが急伸

マネ美 具体的にはどんな投資内容になっているのですか。

守谷 日米共に、流動性の高い株を対象にした「株式ロング・ショート」と、複数の運用戦略を組み合わせた「マルチ・ストラテジー」が中心です。米国での累積リターンは、株式ロング・ショートのリキッド・オルタナティブが最も多いですね(下グラフ)。

マネ美 ロング・ショートって?

金平 もう入社2年目なのに、ロング・ショートも知らないのか。値上がりしそうな株を買うと同時に、値下がりしそうな株を空売りして、相場が下がっても利益を出す手法だよ。ところで守谷さん、日本での販売動向を教えていただけますか。

守谷 日本ではリキッド・オルタナティブ単体での販売は少なく、純資産額が最も多い日興アセットマネジメントの「日興アッシュモア・グローイング・マルチストラテジー・ファンド」でも、47億円です(2016年4月8日時点)。一方、ここ数年で急伸しているのが、資産の運用管理を証券会社や信託銀行に包括的に依頼する「ラップ口座」専用のファンドです。純資産額が100億円を超えるものも多く、最も多い大和証券投資信託委託の「ダイワファンドラップ ヘッジファンドセレクト」は、1152億円になっています(同)。

マネ美 そうした形になっているのはなぜなんですか。

守谷 個人向けのリキッド・オルタナティブの成績が良くないからでしょう。過去3年間の累計リターンがマイナスのものも少なくありません。一方、ラップ口座を運用するプロたちは、マイナス金利の導入などで運用が難しくなっている中、分散投資の効果を高めるため、下げ相場でも利益を出せるリキッド・オルタナティブを積極的に組み入れていると思われます。個人向けも成績が好転すれば、人気が高まっていくとみています。

◇     ◇

取材を終えてビルを出たところで、金平に独立系投信コンサルタントの吉井崇裕さんから電話がかかってきた。

金平 個人向けのヘッジファンド型投信の取材をしているのですが、成績が良くないようですね。

吉井 ですから、個人向けでお薦めできるのは、2本くらいしかありません。「AR国内バリュー株式ファンド」と「野村グローバル・ロング・ショート」です。この2本は年初からの波乱相場でも基準価額が下げ相場に逆行して上昇する動きを見せました。

◇     ◇

2人は次に、楽天証券経済研究所のファンドアナリスト、篠田尚子さんを訪問し、お薦めの投信を挙げてもらった。

篠田 ヘッジファンドを組み入れているバランス型投信の「ピクテ・マルチアセット・アロケーション・ファンド」と「トレンド・アロケーション・オープン」の2つですね。年初からの下落局面でも基準価額が上昇しました。資金流入も拡大しています。単体のものは、相場の反発局面では追随して値上がりしないので、満足度が低くなります。分散投資の効果をよく理解した個人投資家でないと、持ち続けるのは難しいでしょう。

(日経マネー編集部 中野目純一)

[日経マネー2016年6月号の記事を再構成]

日経マネー 2016年7月号

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)


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