アート&レビュー

クローズアップ

元黒澤組が作った日本の美 映画「蜩ノ記」完成 10月に全国公開

2014/8/13

葉室麟の直木賞受賞作を小泉堯史監督が映画化した時代劇「蜩ノ記(ひぐらしのき)」(10月4日全国公開)の完成報告会見が12日開かれ、主演の役所広司をはじめ、岡田准一、堀北真希、原田美枝子らが出席した。過酷な運命を受け止め、残された人生を大切に生きる侍を演じた役所広司は「(物語に登場する)凜(りん)とした人々に感動した。いい作品ができて幸せな気持ちでいっぱい」と自信を語った。

映画「蜩ノ記」に主演した役所広司(左)と妻役を演じた原田美枝子(中央)、小泉堯史監督(右)

ある事件の罪で10年後の切腹を命じられた戸田秋谷(役所)が主人公。秋谷の監視役として派遣された庄三郎(岡田)は彼の気高い生き方に触れるうちに、師弟関係を結んでいく。さらに秋谷の妻・織江(原田)や娘・薫(堀北)との家族愛、夫婦愛を描いた人間ドラマだ。

脚本も手掛けた小泉監督は、自ら福岡県久留米市に原作者を訪ねて映画化を願い出た。「どうしても他人に取られたくなかった。(映画化して)秋谷という人物に会ってみたいと思った。葉室さんが生んだ実を自分の中でキチンと育てたいと思いながら映画を作った」と話す。すでに完成した映画を鑑賞したという葉室は「原作を大切にし、十全に表現していただいた。日本の美しさ、日本人の美しさが伝わってきた」と感想を語った。

小泉監督は黒澤明監督の助監督を務め、黒澤監督のまな弟子としても知られる。今回の作品でも旧知の黒澤組ゆかりのスタッフが集結した。秋谷を慕う庄三郎を演じた岡田は、黒澤監督と小泉監督の師弟関係と重ね合わせ、「(庄三郎という役を)小泉さんだと思って演じていた。弟子として師匠をどう見つめていけるかをテーマに撮影現場に臨んだ」と話す。

小泉監督は黒澤監督の映画作りを継承し、カット割りをせず、1シーンを複数のカメラで一気に撮影していった。役所は「撮影がものすごく早く終わる。俳優としてはこれで大丈夫だったのかなという不安もあったが、監督を信じた。監督の(撮影手法の)潔さが心地よかった」。岡田は「(太陽の)光が庄三郎の肩のラインまできたら撮影を始めますと言われ、2、3時間待ったことも。話に聞いていた黒澤映画の世界があった」という。

黒澤作品への出演経験がある原田は「リハーサルが始まる前にスタッフが120パーセントの準備をしていて、見えないところすみずみまで気が行き届いている。妥協せず時間をかけてフィルムで撮影する良さを味わえた現場だった」と振り返った。堀北は「その時代に生きた人のように演じてほしいと監督に言われ、資料もたくさんいただいた。撮影前に所作のおけいこにいかせていただき、きちんとした礼儀作法を学べてよかった」と笑顔をみせた。

アート&レビュー 新着記事

ALL CHANNEL