「カジノ」に自治体が熱視線 五輪後も訪日客呼びたい政府が全国で説明会、ギャンブル依存症の懸念も根強く

観光の目玉づくりに悩む自治体には垂ぜんの的だ(和歌山県が誘致を目指す和歌山市の「和歌山マリーナシティ」)
観光の目玉づくりに悩む自治体には垂ぜんの的だ(和歌山県が誘致を目指す和歌山市の「和歌山マリーナシティ」)

カジノを中心とする統合型リゾート(IR)の実現に向けた準備が本格化してきた。政府は秋の臨時国会へのIR実施法案提出をにらみ、全国での説明会を始めた。自治体や内外の企業の動きも熱を帯びる。2020年の東京五輪・パラリンピック後の観光の起爆剤として期待が高まるが、ギャンブル依存症への対応など詰めるべき問題は多い。

政府が8月17日、東京・永田町で開いた初の説明会には約100人が参加。企業の担当者からは「面積規制は厳しくしないで」「地方に優遇措置を」といった声が相次ぐ一方、複数の慎重派は「依存症対策が不十分」「施設周辺の商店街が衰退する」などと表明した。8月末にかけてさらに全国8ブロックで説明会を開き、与党の調整を経て具体的なルールを定める実施法案に議論を反映する。

政府の有識者会議が実施法案の土台として7月末にまとめた報告書は、カジノの事業免許を更新制にし、暴力団などの反社会的勢力の影響を排除することなどを盛り込んだ。日本人にはマイナンバーカードでの本人確認を徹底して入場回数を制限するほか、カジノ施設内でのATM設置やクレジットカード使用を禁止することも求めた。

焦点は入場規制の内容だが、例えば1週間ごとの入場回数の上限や入場料の目安は全くの白紙。与党内では公明党が依存症への懸念からカジノ解禁にもともと慎重だ。遊興で低所得者の生活が一段と困窮する懸念もあり、市場育成と依存症防止の両立が大きな課題だ。

当初の認定は全国2~3カ所の見込み

大和総研によるとIR施設を全国3カ所で運営しただけで波及効果は年2兆円に上る。北海道は3つの道内候補地で誘致に成功した場合、それぞれ約1260億~2560億円の効果を見込む。

観光の目玉づくりに悩む自治体には垂ぜんの的で、すでに主な都道府県だけでも大阪府や北海道などが誘致を表明。8月には愛知県も参戦し、ほかにも検討中の自治体は多いもようだ。大阪府は大阪市と共同で30人体制の「IR推進局」を立ち上げる力の入れようだ。

ただ政府は申請主体を都道府県と政令市に限る方向で、全市町村が単独で名乗り出られるわけではない。誘致表明した泉佐野市の千代松大耕市長は「市町村が主体となって申請できるようにしてほしい」と訴える。

事業認定も当初は全国2~3カ所にとどまる見込みだ。和歌山県は区域数を増やすよう政府に要望中だが反応はかんばしくない。仁坂吉伸知事は「残念だなと思う」と認定拡大に期待している。

企業も動く。エイチ・アイ・エス(HIS)子会社のテーマパーク、ハウステンボス(長崎県佐世保市)は園内への誘致を目指し勉強会などを重ねる。セガサミーホールディングス(HD)は4月、日本展開も視野に韓国で同国カジノ大手とIR運営に乗り出した。

米企業の期待も大きく、カジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナルは8月に入って日本法人社長に在日米国大使館で要職を務めたジェイソン・ハイランド氏を任命した。ラスベガス・サンズも日本でのカジノ参入を目指している。

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リゾート大手「日本市場は最適な庭」

ラスベガスやマカオに複数のリゾートホテルを運営するウィン・リゾーツのスティーブ・ウィン会長兼最高経営責任者(CEO)に日本市場について聞いた。(聞き手はニューヨーク=平野麻理子)

「日本は世界で最も洗練された文化を持った国で、世界でも指折りの旅行先だ。事業展開には数千人の従業員を雇い、多大な投資が必要だ。日本市場の規模と豊かさは我々の花を植えるのに最適な庭。従業員を雇って教育し、リゾートの質を高める品々を世界中から集められる立地でなければならない。東京や大阪、横浜はそれができる」

「規制産業は、ルールや規制の内容が成否を分ける。日本にとって良いのは世界中でIRの成功例と失敗例がたくさんあること。米国やアジアなどの先例から学ぶことができる」

「カジノの税収を増やしていくには、日本の外から人を呼んでこなくてはいけない。税率は妥当な水準で、高すぎないことが重要だ。良い施設をつくり、人々が外からやってくるようになれば、税収は結局増える」

「カジノのせいで犯罪や暴力が街に増えることはない。むしろカジノができて雇用が生まれれば、破産は減り、他の産業の売り上げも増える。人々がお金を稼げていれば彼らは家を建て、買い物をするが、犯罪に走ることはない」

▼統合型リゾート
カジノと会議場、ホテル、レクリエーション施設などが一体となった施設。基本法となるカジノ法が昨年成立し、政府は具体的なルールを決める実施法案の成立を目指している。2020年代前半にもまず全国2~3カ所で開業する見通し。

[日本経済新聞朝刊2017年8月18日付]