大阪城、夜も楽しんでや 訪日客、新劇場で伝統芸能天守閣眺めながら飲食できる店も

外国人観光客の関心はモノからコトに移りつつある(大阪市の大阪城公園)
外国人観光客の関心はモノからコトに移りつつある(大阪市の大阪城公園)

買い物や食事が中心だった大阪観光に新たな魅力を加えようという試みが動き出す。官民ファンドのクールジャパン機構が吉本興業など12社と組み、伝統芸能などを夜まで上演する劇場を大阪城の周辺に新設することが明らかになった。インバウンド(訪日外国人)客の関心がモノからコトに移るなか「夜輝く大阪」を官民でアピールする。

「年250万人が訪れる大阪城に(これまで足りなかった)エンターテインメント性が増し(観光資源として)鬼に金棒となる」。吉村洋文・大阪市長は4月13日の定例会見で期待を語った。

新劇場には電通やエイチ・アイ・エス(HIS)、在阪民放5局、KADOKAWAやファミマ・ドット・コムも参画。20億円超を投じ、複数の劇場や屋外ステージの2018年春までの開業を目指す。落語や歌舞伎のほか、音や光、映像を駆使した殺陣や忍者のパフォーマンスも披露する。

大阪城周辺は重要な史跡が多く、飲食・娯楽施設の開発が抑えられてきた

大阪城周辺は重要な史跡が多く、飲食施設や娯楽施設の開発が抑えられてきた。だが市は「(大阪城周辺に)100ヘクタールもあるのに何もしないのはもったいない」(吉村市長)と観光振興への活用を歓迎する姿勢を示す。

今秋には天守閣そばの歴史的建造物を改装した飲食・物販施設「ミライザ大阪城」が開業する。2、3階、屋上に入るレストランは夜10時半まで営業する予定。天守閣を眺めながら料理やアルコールを楽しめる。

これらに新劇場が加われば大阪城の魅力は増す。4月13日、台湾から家族3人で大阪城公園を訪れた45歳女性は「夜のミュージカルもあれば出かけたい」と語った。

観光の全体的な厚みが増すとの期待も高まる。大阪観光局の溝畑宏局長は「大阪は(訪日客向けの)ナイトエンターテインメントに欠け、夜9時以降の消費が減る」と夜の魅力向上が課題と指摘。観光局は昨年に英文冊子を作り、立ち飲みの居酒屋、夜に営業している観覧車などを紹介した。

府・市が昨年11月にまとめた都市戦略でも「24時間おもてなし都市」を掲げ、観光施設の営業時間やランドマークのライトアップ時間の延長に官民で取り組むとした。夜も楽しめる観光地づくりをテコに、20年の来阪外国人の旅行消費額を1兆1900億円と15年の5781億円から倍増させる目標を打ち出した。

夜間営業も想定する新劇場はこうしたニーズに合致する。新劇場ができれば昼はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)、夜は芸能鑑賞という楽しみ方が広がり、滞在日数と消費額の拡大につながる。府・市が進めるカジノを核とした統合型リゾート(IR)の誘致を控え、夜の娯楽充実に一歩前進しそうだ。

吉本興業の戸田義人取締役も「夜遅くまで楽しみたいという訪日客のニーズに応えられる環境をつくりたい」と述べた。もっとも場所を含め新劇場の詳細は未定。人形浄瑠璃文楽の語り手の最高格である切場語りの豊竹咲太夫さん(72)は「基本的には結構な話だが、実際問題としてスケジュールが割けるか、充実した内容にできるかなど課題も多い」と指摘する。

大阪城公園
1931年に大阪市営公園として開設された。105ヘクタールの大部分が国有地だが、同年に復元された天守閣は市の所有となっている。2015年度から大阪城パークマネジメント共同事業体(大阪市)が指定管理者となって公園の管理を始めた。16年度の天守閣の入場者数は過去最高の255万人。

[日本経済新聞朝刊2017年4月14日付]