義足でも中腰簡単 香川大が人工膝関節開発 製品化へ

香川大学は膝を曲げた中腰姿勢を維持できる義足用の人工膝関節を開発した。膝を伸ばして「突っ張った」状態で着地しなくても転倒を防げる上、曲げ伸ばしの運動性が高まり多用途に応用できる。海外の義足メーカーも関心を示しており、協力企業を得て製品化を目指す。

大腿部切断者が歩行能力を回復するには、曲げ伸ばしができる義足の人工膝関節が重要になる。国内ではセンサーや動力を備えた電子制御品が流通しているが、価格が数百万円以上と高価だ。香川大工学部の井上恒助教らは途上国でも使えるよう、電子部品を使わずメンテナンス性も優れた機械式の人工膝関節を約1年前に開発し、上りの階段や平地の両方でスムーズに歩けるようにしている。

今回はこれを進化させた。膝関節を深く曲げる際に、必要以上に曲がり過ぎないよう制御する歯車を組み込んだ。曲げる途中で止めることができ、その姿勢を保てるようにした。屈曲する角度は自由に設定できる。新たな人工関節により、膝を曲げて物を拾う動作やスムーズな走りがしやすくなるという。

パラリンピックなどの競技用義足にも応用が可能とみる。従来は片足大腿部切断者用の義足を使う場合、膝を曲げた状態で着地するとさらに曲がって転んでしまう。転倒防止に選手らは足を振り上げ膝を伸ばして着地する。

ただ、前傾姿勢を取れないため短距離走ではスタート直後の加速が悪く、健常者の記録に劣ることが多かった。新型関節は前傾姿勢を取りやすく、前方への推進力を得やすい。実験では膝を曲げた状態で片足のみで体重を支えることに成功した。

井上助教らは2月に東京で開かれたスポーツ用義足に関する国際研究フォーラムで新技術を発表。オズール(アイスランド)、オットーボック(ドイツ)といった海外の有名義足メーカーが興味を示した。パラリンピックの短距離トップ選手からも「将来、新たな走法につながる可能性がある」と評価を得た。

今後は強度の検証と改良を進める。併せて製品化へパートナー企業を募る。井上助教は「今回の技術がスポーツ分野で注目を集めれば、日常生活用の製品化も進めやすくなる」と期待している。

[日本経済新聞2017年3月16日付朝刊]