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肥満じゃないのに… まさか私が脂肪肝!?

2016/10/9 日本経済新聞 朝刊

超音波で肝臓の硬さや脂肪の量を調べて脂肪肝を診断する(大阪市の大阪市立大学付属病院)

肝臓に中性脂肪がたまる脂肪肝を患う人が増えている。アルコールの飲み過ぎや食べ過ぎによる肥満が原因とされる病気で、症状が進むと肝硬変から肝臓がんになる恐れもある。効果的な治療薬はまだなく、節酒や食べ過ぎを防ぐといった生活習慣の改善が大切だ。

大阪市内に住む40代の会社員男性は、6月に人間ドックで超音波検査を受けたところ、脂肪肝の恐れがあると診断された。これまで勤務先で定期的に受けるメタボリック検査でも肥満と診断されたことはない。アルコールをほぼ毎日、口にするため飲酒量は気になっていたものの、太りすぎという自覚は無かった。

医師からはこのまま症状が進むと、肝臓細胞の一部が固くなる線維化が起き、肝硬変や肝臓がんになる恐れがあると注意された。食生活ではアルコールを飲まない日とする「休肝日」を設けるほか、午後10時以降の遅い時間に食事を取らないよう指導を受けた。

男性はこれまでの生活習慣を改め、会食する日以外はお酒をなるべく控え、自宅では毎晩ストレッチをこなすなど運動不足の解消を心がけるようにした。脂肪肝がこれ以上悪化するのを防ぐとともに、改善を狙っている。

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脂肪肝に詳しい大阪市立大学大学院医学研究科の森川浩安准教授は「肥満でもないのに脂肪肝になる人が少なくない」と指摘する。特に日本人を含めたアジア人は、遺伝的な背景から脂肪を体内にためやすく肥満でもないのに脂肪肝の割合が高いとする調査もある。

脂肪肝は中性脂肪が肝臓にたまった症状だ。おなかなどの皮膚の下にたまる皮下脂肪、臓器の周囲にたまる内臓脂肪に次ぐ「第3の脂肪」と呼ばれる。世界三大珍味として知られ、アヒルなどに大量のエサを与え太らせて作るフォアグラと同じ状態だ。

肝臓になぜ中性脂肪がたまるのか。森川准教授によると、食事から直接たまるのは15%程度で、約6割は皮下脂肪などにある中性脂肪から運ばれた脂肪酸がたまってできるという。食べ過ぎや運動不足で皮下脂肪などにためきれなくなった中性脂肪が肝臓にも蓄積したといえる。

脂肪肝と診断されるのは、肝臓の細胞のうち中性脂肪が30%以上たまった状態。国内の正確な患者数は明らかになっていないが、病院による大規模な調査などから成人の3割に相当する3600万人という推定もある。脂肪肝は肥満との相関が強い。日本では肥満者数は増加傾向にあるため、脂肪肝を患う人も増えていると専門家はみる。

脂肪肝が見つかるのは、冒頭の男性のように人間ドックなどで超音波の検査を受けたり、健康診断で肝機能の異常が見つかった後に肝炎ウイルスが無かったりして分かる場合が多い。

脂肪肝が怖いのは、そのまま症状が進むと肝炎から肝硬変、肝臓がんと悪化するケースがあるからだ。

脂肪肝の症状は大きく分けて2つに分かれる。お酒の飲み過ぎが原因となる「アルコール性脂肪肝」と、食べ過ぎによる「非アルコール性脂肪肝(NAFL)」だ。いずれも症状が進むと肝細胞に炎症が起きる「アルコール性脂肪性肝炎」や「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」になり、本格的な治療が必要になっていく。

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ただ、肝硬変や肝臓がんまで症状が進むのは、脂肪肝と診断された患者のうち1~2割程度とされる。それでも進行しているかどうかを見分けるには、肝臓の細胞を直接取って調べる生検などに限られ、入院が必要になるなど患者の負担は大きい。このため患者の負担が軽くても診断できる方法の開発が進んでいる。

大阪市立大付属病院では超音波を使って脂肪肝の様子を詳しく調べる方法を導入している。超音波から肝臓の硬さや脂肪の量を測定する方法で、症状の進行を把握できる。同病院では人間ドックの際に追加の負担で受けられる。

血液検査による技術の開発も進む。大阪大学の鎌田佳宏准教授は非アルコール性脂肪性肝炎かどうかを簡単に見分ける診断法の開発に取り組む。血液中に含まれる、あるたんぱく質を手がかりに調べる方法で、患者で試したところ診断ができたという。鎌田准教授は「早期の診断に利用できる」と実用化を目指す。

非アルコール性脂肪性肝炎では国内の製薬企業が治療薬の開発を進めるが、まだ効果的な薬はない。早期の診断方法が広まっていけば、病気が進行して症状が重くなる前に適切な対策がとれるようになる。

最近の研究では、脂肪肝が心臓病や脳血管疾患など様々な病気の原因にも関係しているという報告もある。脂肪肝と診断されたら放置せず、医師のアドバイスを受けながら、食事や運動などの生活習慣を見直すことが大切だ。

(竹下敦宣)

[日本経済新聞朝刊2016年10月9日付]

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