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東京駅延伸、つくばエクスプレスの悲願なるか 首都圏鉄路、交通審答申から(2)

2016/5/24 日本経済新聞 朝刊

つくばエクスプレス(TX)は計画を上回るペースで乗客が増えてきた

 「長年の思いが少しずつ現実味を帯び始めているように感じる」。茨城県つくば市の市原健一市長はこう感慨を漏らす。同市と東京・秋葉原を結んで2005年に開業した常磐新線(つくばエクスプレス、TX)。答申は沿線住民らの悲願だった東京駅への延伸に加え、都心と臨海地域の間に新設する地下鉄との一体整備まで盛り込んだ。茨城県の橋本昌知事は「私たちが要望してきた以上の形だ」と手放しで喜ぶ。

 つくばは日本を代表する研究学園都市だが、かつては都内からバスで片道2~3時間かかり「陸の孤島」ともいわれた。それがTXの開業で秋葉原まで最短45分に短縮。新幹線のターミナルでもある東京駅までの延伸が実現すれば利便性は飛躍的に高まる。

 民間企業からの期待も大きい。市内に本社を構える筑波大学発ベンチャー、サイバーダインの山海嘉之社長は「東京駅とつくばが直結することは国際的なイノベーション推進を加速する上で極めて重要な一手になる」とみる。

 東京臨海部は20年の五輪・パラリンピック大会に向けて選手村や競技場が集積し、宅地開発も盛ん。都内でもとりわけ成長著しいエリアだ。交通アクセスが不便だったが、地下鉄が通れば一気に改善する。

 ルート次第では、りんかい線に接続し、東日本旅客鉄道(JR東日本)が計画する羽田アクセス線経由で羽田空港にも直結する。そうなると、研究学園都市から都心、臨海部を貫いて空港にまで至る「南北の新たな大動脈」(都庁幹部)となる鉄路が完成する。

 壮大な構想の実現に向けて、超えるべきハードルは多い。TX延伸は秋葉原から東京までと距離はわずかだが、答申は「高度に土地利用が進んだ都心での事業」となる難しさに言及する。

 まず1千億円を超えるとみられる事業費をどう捻出するか。茨城県などが出資するTXの運行会社、首都圏新都市鉄道は順調な沿線開発も背景に単年度収支の黒字化を果たしているが、正味6千億円規模の債務を抱え、投資余力は限られる。財源の確保について同社は「国・関係自治体とともに検討していく」と慎重な姿勢を崩さない。

 臨海地域の地下鉄に至ってはさらに「検討熟度が低い」と答申は指摘している。かねて地元の中央区が要望し、都も急速な人口増への対応をにらんで国に事業化を提案した経緯がある。しかし現状では事業主体すら不透明だ。TXの延伸との一体整備も答申は「検討が行われることを期待」との表現にとどまる。

 地下開発の進んだ都心付近では相当深いトンネルが必要となる。臨海部では海底を掘る難工事になるなど、技術的な課題も乗り越えなければならない。

[日本経済新聞朝刊2016年4月26日付]

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