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長期投資の極意は「不況を買う」 マネーの常識・非常識 夏の集中講座(4)

2014/8/29

株式相場が上がると株を買いたくなって、下がれば売りたくなる――。個人投資家が陥りがちな心理だが、長期保有を前提にした投資では、そんな気持ちをぐっとこらえるのが肝心だ。多くの長期投資の成功者は、市場が悲観ムードに覆われているときに粛々と株式を買い、世の中が先高期待の熱に浮かれているときにはひっそりと売っている。半年、1年ごとに成果を問われるプロの投資家と違い、時間の制約がない個人投資家は、本来ならば買い場や売り場をじっくり待てるはず。個人の最大の強みである「時間」を上手に活用しつつ、株価が下がったときこそチャンスと考えられるかどうかが、長期投資の成否の分かれ目になる。

■株高で増える退職金投資家

「多くの個人は株式相場に振り回されている」。フィデリティ退職・投資教育研究所の野尻哲史所長は指摘する。同研究所が実施した退職金に関する調査によると、退職金で株式投資をする人は、株式相場が大きく上昇した年の翌年に増え、株価が下がった次の年には減少していたという。りそな銀行への公的資金投入をきっかけに株価が急反転した2003年や、小泉政権の構造改革相場に沸いた05年が典型で、「退職金投資家」はその翌年に急増していた。このパターンに当てはめれば、日経平均株価が6割近く上昇した昨年の相場をみて、今年、退職金で株式投資を始めた人も多そうだ。

現実の株式相場は期待通りには動いてくれない。例えば06年に株式投資を始めた人は、その後、07年(日経平均の年間騰落率はマイナス11%)、08年(同マイナス42%)と2年連続の下げ相場に見舞われた。足元の株高に気持ちをそそられて投資を始め、高値づかみになってしまうケースは少なくない。

「株式に長期投資するなら不況のときだけ買うべきだ」。龍谷大学教授の竹中正治氏はそう主張する。グラフに見るように、株価は景気の波と連動しながら上げ下げを繰り返す。ならば、相場が下がって十分安いときに買い、高値圏が近づいてきたと思ったときに売ればいい、という。言うはやすく、行うのは難しそうなこの「不況時の株式買い」を、竹中氏は実践してきた。

竹中氏が日本株投資を始めたのは、日本が消費税率引き上げや金融危機で不況のさなかにあった1998年。株式市場がITバブル崩壊に見舞われた00年以降も、評価損を抱えながら少しずつ買い増していった。損益がプラスに転じたのは03年で、相場が戻り歩調の04~06年には何度かに分けて保有株を売却。その後はいったん日本株投資を休止したが、リーマン危機後の09年に再開し、10~12年の3年間はじっと株価の回復を待ち続けた。そして株価が急反発した昨年は戻り売りに徹し、今は「保有株数を半分程度に減らしたところ」という。

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