マネー研究所

カリスマの直言

あなたの仕事がAIに奪われる日(加藤出) 東短リサーチ社長チーフエコノミスト

2014/8/17

「グローバル企業の間で人件費削減のためのダイナミックな動きが続いている」

現在の日本では、労働年齢人口の急速な減少と、高水準の公共事業、景気回復が相まって、人手不足があちこちで深刻な問題になってきている。それに伴って、職種によってばらつきが激しいものの賃上げが起きてきている。この状態が続くならば、賃金の上昇が物価押し上げ要因として働くため、前年比2%というインフレ目標はいずれ達成されると日銀はみている。

しかしながら、長期的なタイムスパンでみると、日本企業が、人手不足だからといって漫然と国内の人件費上昇を甘受し続けるとは考えにくい。というのも、先日の米国出張の際、グローバル企業の間で、人件費削減のためのダイナミックな動きが続いていることをあらためて実感したからである。

いま、日本では労働者サイドに楽観的なイメージが漠然と広がっているが、米国で見られる動きを観察すると、気を引き締めていかないと、この先のサバイバルは容易ではなくなると心配される。日本の労働市場にも影響が及び得るポイントを以下に紹介してみよう。

■コスト削減に貪欲なグローバル企業

第一に、グローバル企業は、コスト削減できる地を求めて相変わらず貪欲に移転し続けている。例えば、S・ラトナー氏(ウィレット・アドバイザーズ会長、元財務省参事官)は米ブルッキングス研究所で今年行われたシンポジウムで次のような見解を述べていた。

・製造業の仕事がアメリカで増えると、誰もがそれを称賛する。しかし、雇用が海外から戻ってくるという報道を見かけたとき、その背後にあるものを見なければならない。賃金に何が起きているか、雇用を取り戻すのにどれだけのコストがかかったのか、といった点である。

・フォルクスワーゲンは数年前に、チャタヌーガ(テネシー州)に2000人を採用する工場をつくった。当時それは称賛と歓迎のアナウンスをもって受け入れられた。だが、実際のところは、フォルクスワーゲンは高賃金の国から低賃金の国に工場を移したにすぎない。同工場の労働者の現金報酬は時給14.5ドルで、全米自動車労組に加盟している労働者の約半分だ。また、独では1人の労働者を1時間雇うトータルのコストは67ドルだが、チャタヌーガでは27ドルで雇える。しかも、同工場に対して、政府は労働者1人当たり28万8000ドルの補助金を払っている。

・一方で、GMは5年前に比べ、米国内の雇用を3万人減らし、メキシコでは大幅に増やした。もしあなたが自動車産業の人と話せば、メキシコでの生産性はあらゆる面でアメリカを上回っており、雇用のコストはメキシコでは1時間当たり7.5ドルにすぎない、といわれるだろう。これは米国人にとって、勝利することが難しい、非常に、非常に、困難な闘いといえる。

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