福岡に多い西・墨・伊料理店 食も人も「ラテン系」

もつ鍋や水炊きなど数多くの名物料理を抱える福岡。このような広く知れ渡った食文化の陰に隠れているものの、実は福岡市には多くの海外料理店が軒を並べる。特に目立つのがスペインとメキシコ、イタリアの料理店だ。人口当たりの店の数は全国の大都市でトップクラス。その背景を探ると、福岡ならではの理由が浮かび上がってくる。
3カ国の料理が楽しめる「メルカドサンミゲル」。(左から時計回りに)パエリア(スペイン)、マルゲリータ(イタリア)、カキとエビのマリネーラ(メキシコ)(福岡市中央区)

今年3月、福岡市中央区の大名地区の一角に新たなバルが登場した。店名はスペイン語で「サンミゲル市場」を意味する「メルカドサンミゲル」だ。広さ約100平方メートルの店舗の中にはスペイン料理店とメキシコ料理店、イタリア料理店が入居している。お客は、注文ごとに代金を支払うキャッシュ・オン・デリバリー方式でそれぞれの店で料理を注文する。

若年層に人気のある大名地区にもかかわらず、「幅広い年齢層が訪れている」(スペイン料理店BARTOROを運営する戸畑泰臣社長)。店内では、福岡の屋台のように至る所で見知らぬ人同士が楽しく会話する光景が目に飛び込んでくる。

福岡市ではスペイン料理やメキシコ料理、イタリア料理店がひしめいている。福岡市の調べによると、東京都区部と全国の政令指定都市の21都市の人口当たりの店舗数を見ると、福岡はスペイン料理とメキシコ料理で1位、イタリア料理も東京、大阪に次ぎ3位だ。人口が同規模の川崎市がそれぞれ19位、13位、19位であるのと対照的だ。

メキシコ、スペイン、イタリアの3カ国の料理が楽しめる「メルカドサンミゲル」は夜が更けるにつれにぎわいを見せる(福岡市中央区)

「スペイン料理は日本人、特に九州人と味覚の面で相性がいい」と話すのは、1821年(文政4年)創業の醤油(しょうゆ)醸造元のブランドを復活させたモビリオ(福岡市)の大浜大地社長だ。「福萬醤油」ブランドで醤油を販売する同社はスプレー式の醤油を開発して人気を集めている。開発のきっかけは、大浜社長が商品の調達のために訪れたスペインで出合った料理だった。

スペインの小さなレストランで出された地元名物であるエビ料理は、醤油を吹き掛けて焼き上げていた。同じイベリア半島にあるポルトガルからは天ぷらやカステラなど多くの料理が九州に上陸して広まったこともあり、大浜社長は「食に関しても親和性があるのでは」という。