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JR九州のスイーツ列車に乗ってみた 8日に運行開始

2015/8/2

九州旅客鉄道(JR九州)は8日、新しい観光列車「或る列車」の運行を大分県の大分―日田間で始める。著名シェフの成沢由浩氏が監修し、九州の旬の食材をふんだんに使ったスイーツのコースを堪能できる。内外装とも華やかでみやびな装いを凝らし、のんびり車窓の景色を楽しみながら上質な雰囲気にひたれるのが売り物だ。運行開始を控えた1日、同社が客室乗務員の実地訓練も兼ねて開いた報道関係者向けの試乗会に参加してみた。

大分駅に入線したJR九州の「或る列車」(1日、大分市)

午前9時20分ごろ、JR大分駅(大分市)。周囲の目を引く2両編成が、ディーゼルエンジンのうなりとともにホームに滑り込んできた。効果的に配された黒色がベースの金色を引き立て、唐草模様の装飾が豪華さを演出する。「SWEET TRAIN」などと記した大小のエンブレムに遊び心を感じる。扉を彩るのはドイツ製の特注ステンドグラスだ。豪華寝台列車「ななつ星in九州」を手掛けた工業デザイナーの水戸岡鋭治氏がデザインを担当し、1両あたり約3億円かけて旧型車両を改装。JR九州の源流の九州鉄道が発注したが一度も使われず廃車となったとされる幻の豪華列車を再現した。

きびきびとスイーツを配膳する客室乗務員

車内に足を踏み入れれば、高級ホテルや社交クラブと見まがうばかりの空間が広がる。天井は「ななつ星」で採用したしっくい塗り。窓などにあしらった組子細工をはじめ、テーブルや椅子、食器棚にも木をふんだんに使い、ぬくもりのある雰囲気に仕上げた。明るい色合いのメープル材が華やかな1号車は4人がけのテーブル席。2人がけの個室席が並ぶ2号車に移ると、濃色のウォールナット材に囲まれて落ち着きのある趣となる。

9時45分ごろ、「極上の空間とスイーツをどうぞごゆっくりお楽しみください」とのアナウンスとともにホームを滑り出した列車は、ほどなく市街地を離れて丘陵地帯に分け入っていく。由布院や天ケ瀬などの温泉地を経由して、日田まで約2時間20分の旅が始まった。6人の客室乗務員がきびきびとウエルカムドリンクを配り、コースを始める準備が整う。「8月のテーマは『バケーション』。メニューは食材の旬に応じて入れ替えます」と、6人のリーダー役であるパーサーの江副希美さんが説明してくれた。

九州の食材を使ったスイーツのコースを楽しめる

メンチカツサンドなどの軽食の後、いよいよ登場するスイーツはフルーツやヨーグルト、抹茶などの素材に九州各地の産品を使用。ケーキなど3品とお茶菓子が、これも九州の名品である白磁やガラスの器で供された。どれもふわりとした自然な甘さが感じられ、しつこくなく、それでいて満足感が舌の上に残る。1号車のキッチンをのぞくと、2人のシェフが手際よく盛りつけてスイーツを仕上げ、乗務員に次々と渡していた。乗務員は乗客の食事の進み具合にあわせて配膳するので、一気に運べば良しとはいかず、常に立ち働いている。こんなところにもきめ細やかな気配りを感じる。

JR九州の新幹線や観光列車では、ワゴン販売はあっても、配膳を伴う食事提供は初めて。3チーム18人の乗務員は約3カ月、「皿の持ち方、グラスの置き方から研修しました」と、同乗したJR九州の香川美津子サービス課長が教えてくれた。そんな研修のたまものか、にこやかな笑みを絶やさない江副さんらの振る舞いに乱れはない。

キッチンではシェフが手際よくスイーツを仕上げる

車窓に目を転じると、大分の山のこぼれるような緑に、真っ青な夏空。「バケーション」とのコースのテーマそのままの高揚感が、スイーツの味でさらに盛り上がるかのような感覚にとらわれた。玖珠川の流れに沿って走るうち、「こだわり抜いたスイーツと木のぬくもりあふれる車内はご堪能いただけましたでしょうか。皆様の特別な思い出になることを願っております」とのアナウンスが流れれば、日田も間近。「あっという間でしたね」と、同席した記者たちと言葉を交わすうち、正午すぎに日田駅のホームに到着した。

料金は大人1人当たり2万円から。この大分県内を走る10月までの日程は予約でほぼ満席という。「或る列車」は11月には舞台を長崎県に移し、長崎―佐世保間を走る。ちょうどこの1日に始まった予約も、ほどなく満席になりそうな気配だ。体験する前までは価格設定が高すぎるのではないかとも思っていたが、「自分へのご褒美」など非日常を体験する特別支出としては「あり」だと感じた。JR九州の繰り出す観光列車のラインアップの中で新しい境地をひらくだろうとの予感を胸に、猛暑の日田を後にした。(岩崎航)

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