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「監獄ホテル」日本にも 外国人好み?明治の囚人体験 奈良の重文建築、清水建設など運営権取得し改装

2017/6/2 日本経済新聞 夕刊・朝刊

円形ドームの屋根が美しい旧奈良監獄の赤レンガの表門

明治時代の五大監獄の一つで重要文化財に指定されている旧奈良監獄(奈良市)が2020年にもホテルに生まれ変わる。清水建設など8社のコンソーシアム(共同事業体)が国から運営権を買い取って改装する方針。文化遺産の保存と観光振興の両立を目指す試みで、ホテルなど宿泊施設の乏しい奈良県にとっては外国人観光客を呼び込む有力な受け皿となりそうだ。

旧奈良監獄は1908年(明治41年)の竣工。明治政府が不平等条約解消のため、欧米列強並みの人権に配慮した施設を目指した。設計はジャズピアニスト、山下洋輔さんの祖父で司法省(現法務省)営繕課長だった啓次郎氏。46年に奈良少年刑務所に改称して運用してきたが、耐震性の問題などから今年3月末に閉鎖された。明治時代に奈良、千葉、金沢、長崎、鹿児島に造られた「五大監獄」のうち唯一建物全体が現存しており、赤レンガの名建築でも知られる。

法務省は所有権を国に残しつつ運営権を民間に売却するコンセッション方式で、活用を模索。このほど「チサン」ブランドなどのホテルを運営するソラーレホテルズアンドリゾーツ(東京・港)を代表企業とするコンソーシアムを優先交渉権者に選んだ。清水建設、近畿日本ツーリスト、デザイン会社のセイタロウデザイン(東京・品川)など8社で構成する。8月に実施契約を結ぶ。

コンソーシアムが提案しているのが体験型複合施設だ。耐震補強しつつ、必要最小限の改修を施す。独房の壁をとりはらい客室にする。別にホテル棟も新設し、客室は約290室確保する。宿泊料金は高級・中級タイプが1万2000~2万5000円、一般が3000~5000円程度としている。10万6000平方メートルの敷地内にはレストラン、カフェバー、イベント空間、コミュニティーセンターを配置。天然温泉の温浴設備も設けるという。総事業費は150億円強の見通しだ。

中央看守所から受刑者の収容棟が放射状に配置されている

もっとも、旧奈良監獄活用の自由度は高くない。重要文化財のため、改修には文化審議会での審議が必要で、最終的には文化庁長官の承認を得る必要がある。耐震改修を担う清水建設の担当者は「美しいレンガ建築が残ったのは奇跡」としたうえで「文化財の保存と活用のバランスを意識して工事に取り組む」と語る。

法務省の要請に応えて「建築行刑史料館」も設置する。旧奈良監獄が担ってきた役割や行刑・矯正の歴史を展示で分かりやすく伝える。史料館はホテルに先行して19年10月に開館する予定だ。

上空から見た旧奈良監獄

今回のような宿泊施設は、文化遺産の保存と観光振興を両立できる一石二鳥の手法といえる。北欧や英国、オランダでは既に監獄をホテルに転用した例があり、人気を呼んでいる。奈良においても「監獄ホテル」が宿泊需要の喚起に向けた起爆剤になる可能性は十分にある。

奈良を訪れる観光客は奈良公園内にある東大寺や興福寺に集中する一方で、奈良県庁の北約1.5キロにある旧監獄周辺を訪れる人は少ない。ホテルなどが少ない奈良県は宿泊需要も低迷し、16年の宿泊者数は244万人と全国で2番目に少ない。大阪府の7.8%、京都府の13.5%にすぎない。

[日本経済新聞夕刊2017年5月26日付、同朝刊27日付を再構成]

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