豪雨と猛暑が隣り合わせ 極端な気象、高い災害リスク編集委員・気象予報士 安藤淳

降れば記録的な豪雨、晴れれば猛暑――。今夏は日本各地で「極端な気象」が続出している。日本付近を通る前線に向かって高温多湿な空気が大量に流れ込む一方、上空には時折、寒気が入って積乱雲を発達させ豪雨リスクを高める。ここ数日間は多数の死者を出した広島市のような豪雨が、いつどこで起きてもおかしくない状態だ。

日本列島には夏の主役の太平洋高気圧が中途半端に張り出している。日本をすっぽりと覆っていれば全国的に夏空が広がる。大きく後退していれば曇りや雨の日が多く、比較的涼しい夏になる。今のようにどっちつかずだと、やっかいなことが起きやすい。

西日本などには、高気圧の周囲を時計回りに吹く風に乗って暖かく湿った空気が流れ込む。高気圧の勢力が及びやすい関東など東日本は、晴れて暑い日が多くなる。気象庁気候情報課によると、冷夏の年と違って太平洋高気圧の勢力自体は弱くない。高温多湿な空気は勢いがあるので、ちょっとしたきっかけがあれば上昇気流が発生し、豪雨をもたらす。

時には広島市のような激しい雨になることもある。「水蒸気の流れがはっきり見える」。気象研究所の加藤輝之室長は8月20日未明の水蒸気の流れが示された図を見てうなった。大量の水蒸気を含む空気が太平洋から豊後水道を抜け、南から北へ広島市方面をめがけて流れ込んでいた。水の流れと同じように、空気も山などの障害物はできるだけ避ける。豊後水道はちょうどよい通り道だった。陸地に達すると前へ進みにくくなり、上昇気流となって雲を作り出した。

これだけでは、雲はそれほど発達しない。日本付近の上空1500メートル付近では、まるで梅雨時のように横たわる前線に沿って、西南西の風が吹いていた。地上付近では南風だったので、微妙に風向きが異なる。この違いは「シアー」と呼ばれ、空気の回転を作り出して積乱雲の発達を促す。水蒸気が供給され続けるとともにシアーも存在し、積乱雲が次々に発生・発達した。雲が風に流されて去る頃には次の雲ができ、豪雨が続いた。「バックビルディング」と呼ばれる現象だ。

8月16~17日に京都府福知山市で降った豪雨も、仕組みは似ていた。水蒸気が紀伊水道から同市に向けて流れ、山岳部で上昇気流が起きて雲が発生した。シアーもあって積乱雲が発達した。紀伊水道が水蒸気の通り道になることはよくあるが、風向きによってどこで豪雨になるかが変わってくる。たとえば2009年8月9日、熱帯低気圧などの影響で兵庫県佐用町が豪雨に見舞われたケースでは、水蒸気が紀伊水道を通って同県に向かった。