関東大雪か デリケートな予報、どう備える?編集委員・気象予報士 安藤淳

冬は晴天が多いはずの関東地方で天気が落ち着かない。先週、先々週に続き5日から6日にかけても首都圏は雪が降り、積もる恐れがある。昨冬の記録的な大雪を思い出す人もいるだろう。雪の予報はデリケートで、気温がわずか1度違うだけで雨になってしまう。どう備えたらよいか、ポイントをまとめてみた。

首都圏など関東地方の平野部に大雪が降るのは、本州の南岸沿いを低気圧が発達しながら進む時だ。しかし、4日午後の天気図を見て「おや」と思った人も多いかもしれない。低気圧の卵のようなものが九州の南などにあるが、まったく迫力がない。「これが本当に発達して南岸に近づくのだろうか」という印象だ。

実は5~6日に関東に雪をもたらすとされる低気圧は、4日の時点ではまだ発生していなかった。気象庁がスーパーコンピューターで計算した予測によると、5日に紀伊半島沖に低気圧が発生し、徐々に発達しながら北東方向に進むという結果が出ていた。これをもとに「大雪に関する東京都気象情報」などが出された。

気象庁の予測モデルは優秀なので、24時間先くらいまでの間に「低気圧が発生する」という計算結果が出れば、まずその通りになる。天気が崩れるのは間違いない。ただ、位置や発達のタイミングがずれるケースはある。低気圧のコースが南にずれて陸地から離れすぎてしまったり、発達しなかったりすれば雪の量は少なくなる。

低気圧が予想通りに近づいても、寒気が弱いと雪ではなく雨になる。地上気温が1度程度よりも低ければほとんど雪だが、3~4度でも雪が降ることがあるし、0度を少し上回るだけなのに雨の場合もある。上空の気温、湿度などが複雑に関係するためだ。

上空の気温の目安としてよく使われるのが高度約1500メートルの気温だ。ニュース番組などでは「氷点下6度以下なら雪」「氷点下3度以下なら雪」といった情報が混在している。上空に行くほど気温が下がっていく法則を利用したものだが、どちらが正しいのだろうか。

こう覚えておけばよい。「氷点下6度以下」は、主に冬型の気圧配置で日本海側に雪が降る場合の目安だ。南岸低気圧による首都圏の雪は「氷点下3度以下」を参考にする。もちろん、氷点下6度以下でも雪になるが、そこまで低くなくても雪が降ることが結構ある。

なぜか。南岸低気圧が通る時には、上空がそれほど冷たくなくても内陸部の山間部にたまった冷気が地表近くをはうように広がり出ることがよくあるからだ。つまり、上空も地表付近も「そこそこ冷たい」。雪が落ちてくる途中で気温が上がれば解けてみぞれや雨になるが、冷気が下層にあれば解けずに済み雪のままとなる。ただ、上空の気温が0度に近いと雪は水っぽく、積もりにくい。

もう一つ理由がある。低気圧がやってくる前は天気がよく、空っ風が吹いて空気が乾燥している。やがて上空から雪が落ち始めると、昇華して気体の水蒸気になる。降り始めが雨の場合も、盛んに蒸発する。昇華や蒸発が起きる時には、周囲の空気から熱を奪うので気温が押し下げられる。こうして、地表近くまで低い気温が保たれて雪になりやすい。

今回の場合は、内陸部は最近の寒気の名残でとても冷えている。空気は全般に乾燥し、4日の日中の湿度は東京や前橋で30%程度まで下がった。降水の初期には昇華・蒸発によって空気が冷やされる可能性は高く、内陸部の冷気が広がる現象も起きやすいと考えられる。

低気圧が近づくにつれてこれらの効果は薄れ、同時に低気圧自体が持ち込む暖気の影響もあって雪は雨に変わるかもしれない。もっとも、上空約1500メートルの気温はかなり低いので、雪のまま降り続ける可能性もあることは頭に入れておきたい。

気象庁は、南岸低気圧が去りかける頃に上空に入り込むさらに強力な寒気の影響も心配している。寒気の中心では、上空約5500メートルで氷点下36度以下にもなる。大気の状態が不安定になり、積乱雲が発達して雷を伴う局地的な激しい降水をもたらす恐れがある。「ゲリラ豪雨」ならぬ「ゲリラ豪雪」だ。

寒気は上空の気圧の谷とともに動いており「渦」を伴っている。気象庁によると、この気圧の谷が早い段階で南岸低気圧を刺激すれば、予想外の急発達を促す可能性もある。いわゆる「爆弾低気圧」のようになると、かなりの大雪になるかもしれない。あくまで仮定の話ではあるが、いろいろ考えるとため息が漏れるという。

ゲリラ豪雪とまではいかなくても、雪がもっとも積もりやすいのは5日夜、寒気による発達した雲が通過する時だろうと気象庁はみている。降雪量の合計は平野部で最大5~10センチに達する可能性がある。これは「降る」雪の量なので、必ずしも「積雪」とは一致しない。途中で雨が混ざって解けるなどした場合には、積雪は降雪よりも少なくなる。交通機関への影響を考える際には降雪よりも積雪が大切なので、「積雪予報」もぜひ出してほしいものだ。

気温がかなり低く、都心でも0度に近いとみられるので、雪や雨がやんでも路面が凍結する恐れがある。たとえ積雪がたいしたことなくても、5日夜や6日朝は、足元に注意する必要がある。凍結のため、通勤時に鉄道や航空のダイヤが乱れる事態も想定しておいた方がよさそうだ。事態は刻々変わるが、4日現在の気象庁の予報をもとにすれば、5日夜は早めに帰宅し6日は余裕をもって家を出るのがもっとも安全な行動パターンと言えそうだ。