相場混乱時こそプロは逆張り思考 EU崩壊説には疑問マーケットエコノミストの極意(7)

市場では「人の行く裏に道あり花の山」とよく言われる。みなが信じ込む予想をまず疑ってかかれとの意味だ。例えば16年11月の米大統領選挙では、トランプ氏が大統領に決まれば株価は急落し、円高が加速するとの声ばかりだった。当時は日本国内のほとんどの人が最悪のシナリオに備えており、実際に初期反応は株安・円高となった。それでもすぐに「トランプ相場」の株高・円安に転じた。多数意見を疑ってかかるのは投資家にもわれわれエコノミストにも大切なことだ。

EU崩壊説はまゆにつばして聞け

逆張りの思考能力を培ううえで、09年から始まった欧州債務危機で得た財産は多い。当時、EUは債務危機など起こらないとたかをくくっていて、リスク管理の体勢はまったく整っていなかった。ところが危機は起きた。

金融業界に入る直前の08年まで欧州委員会(EC)に在籍していた。EUが「絶頂期」だったころだ。統一通貨ユーロの信任は厚く、ドルに次ぐ第二の基軸通貨になると誰もが信じていたのだから、現地の人々のショックの大きさは推して知るべしだ。自分も、EUの理想と現実の差を痛感させられた。

一方、欧州圏で問題が起こるたびにささやかれる、EU瓦解説にはくみしかねる。EUは、ドイツを中心に欧州で繰り返された戦禍への反省から生まれた共同体だ。経済1強のドイツを取り込み、政治の安定を図ろうとした経緯がある。財務基盤が弱い南欧諸国などがお荷物だからといって、EU崩壊をいたずらにあおる議論は、歴史を知らなすぎると思う。

EUはいまだに存続している。過去のギリシャ危機のような混乱がいつ起きてもおかしくはないが、専門家がすぐにユーロ圏崩壊などをはやすようではいけない。

最近特に意識しているのは、情報を誰に、どのように届けるのかということだ。インターネットに新しいメディアが乱立している状況で、若い人は紙の新聞を読まなくなった。そんな層にも市場の正確な解説を届けなければならないと考え、オンラインメディアのコラムを書く機会を増やしている。

オンラインのサイトでは、得てして視聴率稼ぎに走りがちだ。そんな風潮とは一線を画し、情報の出し手として的確な情報を、素早く届けることに徹したい。

唐鎌大輔
2004年に慶大を卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)に入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会の経済金融総局(ベルギー)に出向した。08年にみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)に移籍。国際為替部で外為市場を主にカバーするマーケットエコノミストのキャリアをスタートさせた。

〔日経QUICKニュース(NQN) 荒木望〕

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