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行動経済学を投資に生かせ 『競争社会の歩き方』著者 金融・旬の一冊

2017/12/6

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 行動経済学に対する関心が急速に高まっている。世界的権威である米シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が2017年のノーベル経済学賞受賞者に決まったのがきっかけだ。伝統的な経済学では解明できなかった現象を心理学を取り入れて解き明かす行動経済学は、金融市場での注目度も高く関連書籍が多い。

 中でも大竹文雄・大阪大学社会経済研究所教授が著した『競争社会の歩き方』(中央公論新社)は、行動経済学に関する身近な事例をふんだんに盛り込んだ入門書として人気がある。大竹氏に投資や生活に行動経済学的な考え方を生かす方法を聞いた。

 ――セイラー氏の受賞で、行動経済学が関心を集めています。

 「行動経済学は、より現実的な人間行動に基づいた経済の仕組みや動きを説明しようとする学問だ。登場直後は、伝統的な経済学の研究者から批判されたが、徐々に既存の経済学の中に理論が取り入れられていった。今は学部レベルの標準的な経済学の教科書にも載っている」

 「私自身も労働経済学の研究で、実際に所得格差が広がっていないときに人々が格差を感じたり、賃金の下方硬直性が生じたりしたときなど行動経済学の考え方を使うと説明しやすい事例があると実感した。経済学というとコストの話しかないとの先入観にとらわれがちだが、実際の人間生活に深くかかわっているのだと書籍を通じて示したかった」

■困難な「損失回避」

 ――投資には非常に役立ちそうです。

 「例えば何らかの資源配分をする時、伝統的経済学では『パレート改善』を目指す。ある集団に対して、ある資源の配分を変更する際、誰の『効用』(満足度)も低下させることがないように考えて資源配分を改善するという考え方だ」

「経済学がカバーする範囲は幅広い」と話す、『競争社会の歩き方』の著者、大阪大の大竹文雄教授

 「ところが現実には、手に入れた後の所有物の価値を、手に入れる前よりも高く評価する『保有効果』や(決定を先延ばしして、現状を維持したくなる)『現状維持バイアス』などが個人の意思決定を左右する」

 「資産運用でも同様だ。損失確定をどうにかして避けようと、価格が下落した資産を持ち続けてしまう。運用会社などが組織として損失確定のルールを決めているのは、プロであっても適切に判断できないと認識しているからだろう。個人はなおさらだ。こうした行動経済的なバイアスには常に直面すると意識して、自分でルールを設定しなければならない」

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