N
マネー研究所
NQNセレクション

ディーリングに「なぜ」は禁物 臨機応変に売買をすご腕為替ディーラーの至言(森宗一郎)

2017/7/4

NQNセレクション

PIXTA
PIXTA

外国為替相場はときに大きく振れるもの。ドルの対円、対ユーロ相場よりも変動率が高い英ポンドや北欧通貨のディーリングの世界を生きてきたディーラーはリスクとの付き合い方がうまい。「すご腕為替ディーラーの至言」、今回は上田ハーロー外貨保証金事業部次長の森宗一郎氏。森氏は外銀での駆け出しのころ、ポンドよりも派手に動くスウェーデンクローナやノルウェークローネの取引で腕を磨いた(以下談)。

◇  ◇  ◇

リスクを警戒しながら楽しむ

為替に限らず、ディーリングは相場の流れに乗じる「順張り」で利益を得るのが基本です。価格変動のリスクを恐れていては取引などできません。リスクはリスクとして警戒しながら、収益を生み出す源として「楽しむ」余裕が必要になります。

欧州や資源国の通貨などを手掛けていると、相場は円・ドルやユーロ絡みだけではないとつくづく思います。日米欧以外の政治情勢や宗教問題など、独自の力学で動くことが多い他通貨取引の世界に視野を広げてみるのもよいでしょう。

日本で外為証拠金(FX)取引を手掛ける個人についていえば、順張りで円を買う勇気を持って欲しいと思います。日本のFX投資家は今も昔も、円安を見込んで円売りから取引を始めるケースが大半です。しかも相場の流れに逆らう「逆張り」がほとんど。でも円安ばかり起こるわけではなく、過去の経験則では、円高に振れた場合にはたいていスピードが速くなります。

最近は円買いの戦略も増えてはいますが、円売りと同様に逆張りで円を買っているので、一本調子の動きには耐え切れません。売りと買いを柔軟に切り替えられるようにして欲しいです。

ディーリングをするにあたって「なぜ」は禁物です。昨年6月の英欧州連合(EU)離脱決定を受けたポンド安や円高にせよ、11月の米大統領選後の円安にせよ為替の変動はスピードが速いため、「何でだろう」とあれこれと考えているうちに乗り遅れてしまいます。経済指標などに関する基礎知識を得ておくことはもちろん大切ですし、政治のイベントなどにも目配りは欠かせませんが予断をもたず、臨機応変に売り買いをするクセを付けましょう。

相場材料は常に変化

市場参加者の関心はころころ変わります。相場材料は常に変化すると心得るべきです。一例を示すと完全雇用に近づいた米国の雇用統計では最近、中心的な項目である非農業部門雇用者数(NFP)の前月比増加幅や失業率よりも時間当たり賃金への感応度が高まってきました。NFPや失業率にとらわれすぎると判断を誤ります。初動が遅れても態勢は立て直せるので、慌てずに何が焦点となっているのか見極めましょう。もし焦点が定まっていなかったり、他の材料に移り始めていたりしたら「休むも相場」です。

インターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の発達により、プロのディーラーと一般の個人との情報格差はほぼなくなりました。とりわけツイッターは、FX会社や金融機関のプロ、有力な個人投資家が情報発信に一役かっているだけに情報ツールとしての影響力は相当なものです。コンピューター経由の機械取引「アルゴリズム」にも深くかかわっています。

プロは経験で培われた大局観や歴史観に加え、企業などのリアルな行動分析に基づいて相場シナリオをたてる分、今のところ長期戦略では有利かもしれません。ただ、その優位性は遠からずなくなると考えています。あえてプロとアマの違いを挙げるとすればリスクコントロールの巧拙でしょう。

リスクコントロールのコツ

まずは収益の目標額を明確にし、いつごろまでに達成したいと具体的に決めましょう。目標が固まっていれば利益確定のタイミングをイメージしやすくなるし、損失拡大を防ごうとの意識も高まるはずです。大事なのは収益を積み上げることです。

負けたときはすぐに取り返そうと焦ってはいけません。ゴルフに例えれば、ダブルボギーを記録した次のホールですぐイーグルをとろうとしたってなかなかうまくいきません。プロゴルファーが安全策をとってミスを最小限に抑えるように、差損リスク回避(ヘッジ)の方法や損失確定のポイントを定め、損を少しずつリカバリーしていくスタンスが求められます。

森宗一郎
 1987年にバークレイズ銀行に入行し、コメルツ銀行などの外資系金融機関で為替ディーリング業務に携わった。ユーロの前身である欧州為替相場メカニズム(ERM)関係国通貨を中心に英ポンドやオセアニア通貨も扱った。99年にひまわり証券に移り、FX業界に足を踏み入れる。2013年に上田ハーローに転じて現在に至る。

記者の目

新興国など非主要通貨の売りと買いのレートは、主要国通貨と比べて離れているため注文が偏ったときの値動きは荒い。そんな世界に長くいると高いリスクを受け入れる覚悟がおのずと備わる。ドルと円、ユーロの主要3通貨を取引の軸にするディーラーはよく、北欧や新興国の通貨を手掛けるトレーダーを「リスクラバー(リスク好き)」と呼ぶ。だが、リスクと常に向き合っているだけにヘッジの意識は強い。学ぶべきところは多いはずだ。

〔日経QUICKニュース(NQN) 編集委員 今晶〕

近づくキャッシュレス社会
ビジネスパーソンの住まいと暮らし