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まずGDPを見直せ 『経済指標のウソ』著者に聞く 金融・旬の一冊(ザカリー・カラベル著)

2017/10/7

 2016年12月、日本の経済規模が突然30兆円あまりかさ上げされた。国内総生産(GDP)統計について、従来は「経費」だった研究開発費を「投資」と認めるなど算出方法を時代に即した基準に改めたためだ。産業構造の変化や技術革新をうまく反映できていない、そんな各種経済指標との向き合い方に一石を投じ、処方箋を示したのが『経済指標のウソ 世界を動かす数字のデタラメな真実』だ。著者のザカリー・カラベル氏に景気指標の限界や執筆の意図を聞いた。

■政策決定者用に作られたもの

 ――本を出版しようと考えた背景を聞かせてください。

著者のザカリー・カラベル氏は「時代遅れの物差しを使っている経済指標に頼り切っている現状に衝撃を受けた」と話す

 「ファンドマネジャーや資産管理会社の幹部として仕事をするなかで、金融機関の人々や各種メディアが世界を理解する手段として、時代遅れの物差しを使っている経済指標にいかに頼り切っているかを知り、衝撃を受けた」

 「経済指標は世界のいたるところで非常に重要なものとして扱われるが、普遍的な自然科学の法則ではない。世界恐慌や世界大戦といった歴史的な出来事(とそれらに伴う経済の動き)に対応する一握りの政策決定者用に、何かしらの意図をもって作られたものだ。数十年も前の物差しを今の経済にそのまま当てはめるのは無理がある。数字の成り立ちを明るみに出すことで指標が語ってくれること、語れないことを人々が理解する一助になると考えた」

■示された数字、懐疑心を持って見る

 ――本書では、経済指標をやみくもに信じがちな現状に警鐘を鳴らし、どの指標も不完全で限界があると指摘しています。数字を読むコツを教えて下さい。

「各種指標は『健全な懐疑心』をもって見るべきだ」と著者は説く

 「指標が何を測っていて何を省いているのかを正確に知ったほうが良いだろう。重要だが変化が大きく把握しにくいもの、例えば無料で提供されるインターネットの経済的価値や、非正規雇用が多い労働市場における労働者の分類方法といったものは、現在出ている経済統計には基本的には含まれていない」

 「指標が示す数字と現実の間には溝がある場合も少なくない。示された数字を懐疑心を持って見たり、複数の指標を組み合わせて考えたりする感覚が大事だ」

 ――いま最優先で見直すべき指標を挙げるとすれば何でしょう。

 「GDPだ。世界の国々や国際機関はGDPの内容に相当依存し、影響力が最も大きいのに問題だらけだ。サービスの貿易や情報など測定が非常に難しかったり、測定できてもモノとは異なる測り方をしなければならなかったりする項目が多い。GDPを正確にとらえるのは実に難しくなっている」

■景気指標に縛られすぎ

 ――世界恐慌や世界大戦といった歴史的な出来事が、世界を変えるとともに指標の誕生や進化を後押ししてきました。2000年代の金融危機は何か変化をもたらしたのでしょうか。

 「企業や投資ファンドが新たな数値指標を検討し始めた、などといった動きはある。だが全体でみれば、残念ながら景気指標に縛られ過ぎている人々の意識の変化はあまり感じられない。本書やこれに類する書籍が、そのような意識変化を起こすきっかけになればと期待している」

ザカリー・カラベル
 作家で投資家、コメンテーター。米資産管理会社エンベストネットでグローバル戦略チームを統括するほか米経済・投資情報会社リバー・トワイスリサーチの代表も務める。米経済チャンネルCNBCへの出演と米紙ワシントン・ポストやウォール・ストリート・ジャーナルなどへの寄稿でも知られる。

〔日経QUICKニュース(NQN) 聞き手は蔭山道子〕

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