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三井不動産、帝国ホテル再開発へ布石? 隣接ビル取得 不動産の現場から

2018/1/2

帝国ホテル東京。隣接するガラス張りのビルは三井不動産が取得した「NBF日比谷ビル」

 帝国ホテル東京(千代田)を建て替えて周辺一帯を再開発する計画が浮上したと、不動産関係者が色めき立っている。同ホテルは以前から建て替えのうわさが絶えなかったが、所有・運営する帝国ホテルを傘下に抱える三井不動産がホテルに隣接するビルを取得。三井不による大規模再開発の布石ではないかという見立てが広がっている。

 ビルなどに投資して賃料を投資家に分配する不動産投資信託(REIT)大手、三井不動産系の日本ビルファンド投資法人は2017年12月18日、資産の取得と譲渡を発表した。譲渡資産のひとつが「NBF日比谷ビル」で、三井不への売却額は640億円だった。同ビルの期待利回りの低さと歴史的意味合いもさることながら、不動産市場関係者が注目するのは周辺再開発の要となるビルの立地の良さだ。

 同ビルは1984年に「大和生命ビル」として建てられた。ここには明治時代に鹿鳴館があり、外交・政治の中心地の一つだった。ビルの北側には帝国ホテル本館が立ち、南側にはNTT日比谷ビル、その隣にはかつての第一勧業銀行本店があった、みずほ銀行内幸町本部ビル。さらにその隣には東京電力ホールディングスが本社を構える。帝国ホテルを含めて再開発を進めるにはNBF日比谷ビルは要となる場所に位置する。「三井不はビル取得によって、地権者として再開発を優位に進めるための種地(たねち)を確保した」(大手不動産会社の社長)

■「東京ミッドタウン日比谷」18年オープン

 三井不が帝国ホテルを傘下に収めたのは07年だった。帝国ホテルへの三井不の出資比率は株主総会で特別決議を否決できる33.33%を上回らない水準にとどまっている。「三井不との関係は出資比率、取締役の派遣等を含めて安定的に推移してきた」(帝国ホテル)

 この両社の関係に転機が訪れるのが18年になりそうだ。三井不は日比谷で進めてきた再開発の節目を迎える。アールデコ建築で有名だった「三信ビルディング」や三井銀行本店があった「日比谷三井ビル」などを再開発して「東京ミッドタウン日比谷」として18年2月に完成、3月29日にグランドオープンする予定だ。

 「プロジェクトの完成は終わりではなく始まり」。同社の街づくりの考え方に従えば、日比谷の価値を高めるには帝国ホテルの再開発は欠かせない。投資ファンドの米サーベラス傘下の国際興業から取得した帝国ホテル株は1株8750円、三井不は買収に総額およそ861億円もの資金を使った。帝国ホテルの株価は当時8000円まで跳ね上がり上場来高値を付けた後、下落し続けた。昨年の株価は2000円台前半で推移し、株式分割を考慮すると最高値の半値近辺で低迷している。株主に対して三井不が18年以降の中期経営計画で日比谷の再開発計画が進化する姿を提示したいと考えてもおかしくない。

■本館は五輪時には完成50年

 かたや帝国ホテル側にも再開発を進めたいという事情がある。帝国ホテルは「現時点で建て替えの計画はまったくない」と説明する。というのも、本館はホテルの10年の開業120周年の前に大規模な改修を終え、まだ10年経過していない。

 それでも不動産や観光関係者が建て替え計画が水面下で進んでいるとみるのは、東京五輪後の競争力の低下だ。ホテル御三家の一角を占めるホテルオークラ東京は既に本館の建て替えを進め、19年春の営業再開を目指している。外資系ホテルの攻勢も続く見込みだ。

 帝国ホテル本館の完成は大阪万博が開かれた昭和45年、1970年だ。東京五輪が開かれる2020年には完成から50年を迎える。改修を重ねてきたとはいえ、建物自体は老朽化している。外国証券の不動産アナリストは「五輪の事前イベントや五輪需要を取り込めたとしても、現状の施設では五輪後の訪日客の取り込みでライバルに水をあけられてしまう危機感がある」と指摘する。

 三井不は該当エリアを再開発する方針はあると前置きしたうえで、「帝国ホテルや地権者と勉強会を立ち上げて定期的に意見交換しているが、再開発の規模や範囲、時期など具体的なことは決まっていない」と説明する。今後、東京ミッドタウン日比谷と連動した、三井不の悲願ともいえるホテル、商業施設、ビルの複合再開発の議論が加速する場面がありそうだ。

〔日経QUICKニュース(NQN) シニア・エディター 齋藤敏之〕

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