投資は自分のシナリオが大切 プロの予測は参考程度にマーケットエコノミストの極意(11)

写真はイメージ=123RF
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「エコノミストやアナリストに予想的中は求めていない。ぶれないことが大事」。複雑な需給環境を生き延びてきたディーラーは割り切っている。はた目には「いつも同じ方向の話ばかり」と映る人が、現場の支持を集めるのはそのためだ。マーケットエコノミストのはしりで外国為替のディーリング経験をもつ三菱UFJリサーチ&コンサルティングの五十嵐敬喜氏はそんな空気をよく知っていて、「予想を当てにいく必要はなく、理路整然と外す。それが取引の判断材料として最も役に立つ」と語る(以下談)。

最初の為替取引で2億円損失

相場予測にあたって「当たり外れよりも理論として正しいかどうか」を重視するにいたったきっかけは1989年、最初のトレーディングでの強烈な失敗体験だった。当時の為替部長がマーケットの世界に入るからにはと、1000万ドルものポジション(持ち高)を持たせてくれた。それまで10年近くエコノミストを務め、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)では絶対に円高・ドル安だと自信満々でドルを500万ドル売った。ところがドルは急伸し、大きな含み損を抱えてしまった。

五十嵐氏は相場予測にあたって「当たり外れよりも理論として正しいかどうか」を重視する

ドルを最初に売ったときの円相場は1ドル=138円前後だったが、その後一気に151円前後を付け、損失は8000万円を超えた。後にも先にもあの時ほど苦しんだことはない。含み損はさらに1億円程度にまで膨れ上がったものの、自分の相場観が誤っていたとはなかなか認められなかった。結局、当時の為替次長に「楽になれよ」と諭されてようやく損切り(ロスカット)をし、「流れに乗ろう」とばかりに円売り・ドル買いに切り替えた。ところがそのとたんにドルは急落し、損失は2億円に達した。

「逆指標」として相場を当てた上司

この話にはオチがある。私にポジションを持たせた為替部長は「素人に勝てるはずがない。五十嵐の逆を張れば勝てる」と最初から見通していたらしい。私が最初に円買いをした後に彼は円を売り、最初の損失を出す直前には「五十嵐が持ち高を反転させたら、すぐに逆を作れ」と次長に言い残して欧州に出かけた。当時の三和銀行(現三菱UFJ銀行)は五十嵐敬喜を「逆指標」として相場を大きく当て、当時の最高益をたたき出した。

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