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AIとビッグデータで探る 市場のゆがみは宝の山 マーケットエコノミストの極意(10)

2018/9/4

画像はイメージ=123RF

 人工知能(AI)やビッグデータを用いた経済分析や取引は増える一方だ。AIの強みは何と言ってもスピード。何が割安か割高かを誰よりも早くわかれば収益拡大につなげられる。市場での価格形成のゆがみに着目する「レラティブバリュー」投資の分野でキャリアを積み、AIとビッグデータを操るジェフリー・ヤング氏は「まずは技術の限界を知りつつ、AIが示す市場のサインからコツコツと投資を進めることが大事」と指摘する(以下談)。

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■バブル崩壊にAIは無力

ヤング氏は「AIが示す市場のサインからコツコツと投資を進めることが大事」と話す

 現時点でビッグデータが予測できることと、できないことの境界線については案外知られていない。「できないこと」の代表例はバブル崩壊の予測だろう。

 日々膨大な統計資料を分析するうち、社債などの「クレジット市場」で国債との利回り格差(スプレッド)が拡大しているとすぐに気づき、早い段階で警鐘を鳴らすのはビッグデータが得意とするところだ。だが仮にバブル崩壊のサインが点滅していると明らかにできたとしても、いつ崩壊するのか、そもそも崩壊するのかは実際に事が起こるまでわからない。

 足元では中国の過剰債務が話題だ。ビッグデータも「危険水域」をよく示し、過去に何度も人の口に上ってきた。にもかかわらず現時点では危機に至っていない。どのマーケットでいつ、どれだけの被害をもたらす危機が訪れるのかについては今後もおそらく、AIが正しく予測するのは難しいと思う。

 半面、AIやビッグデータの応用範囲は年々広がっている。例えば複数の異なる分析モデルを束ねて精度を高めた予測がある。「アンサンブル」と呼ばれるこの仕組みでは、例えば経済指標や政策金利の推移などから構成する5つのモデルを連動させ、日米欧など主要10カ国の2年物スワップ金利の予想をたてられるようにした。この一年間のパフォーマンスはなかなか良好だった。

 AIはこれらのデータを元に、どの項目で価格形成がゆがんでいるかなど、市場の隠れたサインを把握できる。類似する金融商品に異なる価格が付いていたとき、いずれ適正価格(フェアバリュー)に収束していくとの理論に基づいてある商品が割安なら買いを入れ、割高なら売り注文を出すレラティブバリュー型の運用ではAIが素早く次々と示してくれる「ゆがみ」は宝の山だろう。

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