仮想通貨、国内3社が「採掘」にしのぎ 中国勢を追撃仮想通貨の実相(9)

国内ではビットコインをはじめとする仮想通貨市場への投資熱が相変わらず高い。相場上昇を狙う個人投資家の買いが続いているうえ、資金力と技術力を有する大手ネット企業がマイニング(採掘)事業に相次いで参入した。マイニングとはコンピューターで計算(暗号解読)処理をすることにより、仮想通貨を稼ぐことだ。このマイニング市場は今のところ中国勢の独壇場。日本企業の発言力はないに等しいが、「技術では負けない」と中国の牙城を揺さぶろうとしている。

中国勢のマイニングは全体の5割超

中国勢によるマイニングの割合は、拠点がわかっている分だけでも全体の5割を超える。最大手のビットメイングループは極めて存在感が高く、8月にビットコインがビットコインとビットコインキャッシュ(BCH)に分裂した際には主導的な役割を果たした。そこに戦いを挑むのはDMM.com(東京・港)やGMOインターネット(9449)、SBIホールディングス(8473)といった日本ではおなじみのネット関連企業だ。

日本企業に勝算はあるのだろうか。仮想通貨のマイニングではハッシュ関数と呼ばれる演算を短時間で大量にこなさなければならない。演算処理をいち早く終えたマイナー(採掘者)が報酬として仮想通貨をもらえる。計算処理のスピード(ハッシュレート)を上げるには高性能の画像処理半導体(GPU)を組み込んだコンピューターが欠かせず、機器冷却用の電気料金もかなりかかる。

コイン価格があまり高くなかった2016年まではコストがかさみ、マイニング事業に魅力は乏しかった。だが17年に入ってビットコインや「オルトコイン」と呼ばれるビットコイン以外の仮想通貨の一部がうなぎ登りに上昇し、マイニングで収益を得る見通しを立てやすくなった。DMM.comの川本栄介仮想通貨事業部・事業部長は「マイニング関連機材の仕入れコストや電気代を抑えられれば、短期間で投資額を回収できる」と自信を示す。

GMOの熊谷正寿社長は9月の記者発表の席で、自社のマイニング事業に関して「技術では絶対に負けない」と胸を張った。GMOはまず最大100億円を投じ、来年6月までにマイニング用の設備を整える。海外企業と共同で開発中の半導体チップは消費電力が同じチップと比べて2倍の性能を有するという。

国内3社、仮想通貨で住み分け

SBIは8月に「SBIクリプト」を設立し、同月にビットコインから分裂して誕生したBCHのマイニングを既に始めている。DMMはスピードを重視し、自前のシステムを一から作るのではなく、他社製の機器を調達して17年内には「DMM POOL」を公開する予定だ。18年度中には世界のマイニングプールにおける「トップ10入り」を狙う。

マイニング設備は北欧を中心に展開する。アイスランドやノルウェーなど寒冷な国で電気代を抑え、中国内陸部のマイニング施設に対抗していく。人件費の低さでは中国に及ばないかもしれないが、技術力で十分戦えると判断しているようだ。

DMMではイーサリアムなどのオルトコインも積極的にマイニングする方針だ。半面、GMOはまずビットコインのマイニングを強化する。BCHのマイニングを開始しているSBIとの間でうまく「住み分け」が成立しそうだ。

もちろんいいことばかりではない。ビットコインは東京オリンピックが開かれる20年、マイニング報酬が半額になる4年に一度の半減期を迎える。供給量にも限度がある。24日にはビットコインが2回目の分裂をし、3つめのビットコイン系仮想通貨「ビットコインゴールド(BTG)」が誕生した。ビットコインとオルトコインあわせて1000以上の通貨が乱立するなか、収益源に育つのは何かをいち早く的確に見定めなければいずれ事業は成り立たなくなる。

技術者の確保も課題だ。国内にはマイニングのソフトウエアのプロフェッショナルはほぼいない。仮想通貨を国家プロジェクトと位置付けるエストニアや、旧ソ連の流れをくむ科学立国ウクライナで育った優秀な技術者を巡る争奪戦は激しさを増すだろう。

個人は「クラウドマイニング」

各社はマイニング企業のハードウエアに小口で投資する「クラウドマイニング」で個人マネーも取り込む構えだ。DMM.comの川本氏は自社マイニングとクラウドマイニングの両輪で「1000億円以上の投資資金を回せる」と読む。DMM.comは自社が得意とする動画コンテンツなどへの出資や販売を仮想通貨ベースでするビジネスモデルの構築も視野に入れる。これまで仮想通貨の取引で億単位の資産を積み上げてきた投資家「億り人(おくりびと)」を筆頭に、個人の資金余力はかなり大きいと考えられている。

中国では当局が仮想通貨市場に対する規制を強めているが、マイニングはまだ手つかずの状態だ。日本勢がどこまで競り合えるかは未知数といえる。それでもベンチャー精神旺盛な日本のネット企業は18年のマイニング市場について、中国寡占の状態から抜け出せるとの青写真を描く。

〔日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥〕

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仮想通貨の実相」はビットコインやイーサリアムの取引現場での最新トピックや関係者の発言を紹介します。掲載は不定期です。

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