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嵐のCD、猫ブーム、温泉から景気を読む(宅森昭吉) マーケットエコノミストの極意(5)

2018/3/29

写真はイメージ=123RF

 アイドルのヒット曲やプロスポーツの動向といった世相にまで目を配り、経済分析と予想に役立てる専門家がいる。三井住友アセットマネジメントでチーフエコノミストを務める宅森昭吉氏がその人だ。毎月1000近くのデータを集め、オリジナルの経済シナリオを構築することにこだわりを持ち続けている。身近なデータを使って投資のヒントを探る秘けつを聞いた(以下談)。

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■すべてが手探り、手当たり次第に調べる

 マーケットエコノミストを始めた80年代後半、マーケット予想の方法論といえるものは特になく、すべてが手探りだった。経済指標は2カ月遅れで公表されるのがざらなうえ、数も少なく、現在のエコノミストにとっては当たり前の基礎データの収集が十分にできなかった。重要指標の予測もほとんどなかったので、どうにか景気動向をいち早く把握しようと、自分で始めた。手当たり次第に世間の流行や話題となった事象を調べた。

宅森昭吉氏は「マーケットエコノミストを始めた1990年代、予想の方法論といえるものは特になく、すべてが手探りだった」と語る

 手前味噌になるが、このやり方で様々な法則を見つけてきた。例えば「猫ブーム」のときは景気がもたつくというのもその一つだ。不況や景気低迷で気持ちが沈み、猫などの愛玩動物に癒やしを求めることで起こる現象だろう。古くは80年代の第2次石油危機の最中、「なめ猫(なめねこ)」と呼ばれる暴走族の身なりをした猫のキャラクターが大ヒットした。

 「まぐれや偶然だ」と切り捨ててしまえばそれまでだが、有名な評論家の話をうのみにするくらいなら、どんな指標でも自分の物差しでマーケットに向き合ってほしい。自分の物差しを複数持てれば、今の経済状況や市場はどんな状況にあるのか、複眼的に考えるきっかけになると思う。

 流行や経済のトレンドを見つける方法は、単純な言い方になるが広くアンテナを張ること。週刊誌や駅売りの夕刊紙は欠かさず毎号読むようにしている。一般紙にはない生の情報が見つかることがある。興味を持ったテーマが見つかると、データが会社や団体のホームページになくとも、直接電話をかけてデータをもらう。

■「嵐」のCDで景気予測を的中

 景気の転換点では身近なデータほど雄弁に語ってくれる。そう実感したことがある。14年に消費税が増税された後、市場で「景気が大きく後退する」との予想が大勢を占めていたにもかかわらず「底堅い」との見通しを変えなかった。根拠は、同年4月に発売されたアイドルグループ嵐のCDシングル「GUTS!」の発売から一週間の初動売り上げだ。

 楽曲が格安価格でダウンロードできる時代、CDはファンが持っていたいから買う「ぜいたく品」になった。ましてや嵐には主婦層のファンが多い。景気動向には敏感に反応すると考えた。オリコン調べによると「GUTS!」は初動売り上げで50.1万枚。消費増税でも、需要の落ち込みは一時的なもので済むと確信できた。

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